森の中に佇む一軒の家。自然と調和しながらも、木漏れ日がキラキラと反射する大きな窓が目を惹くモダンな外観の建物は、料理家・川上ミホさんの新しいお住まい。

今春完成した軽井沢の住まいを拠点として、東京と軽井沢のデュアルライフをスタートさせた川上さんですが、当初軽井沢の家は、夏の間だけ過ごすアトリエの予定でした。一体、どのような心境の変化があったのでしょうか? 現在、生活の拠点のひとつとなっている軽井沢のお住まいを拝見します。

川上ミホさん
料理家、フードディレクター
(かわかみ・みほ)東京とイタリアのレストランでの経験を積み、独立。現在は食のスペシャリストとしてテレビや雑誌等のメディアを中心に活動するかたわら、商品開発やレストランプロデュースを行うなど、多方面で活躍中。
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川上さんのHouse DATA

間取り…1LDK(リビング・ダイニング・キッチンに加え、バスルーム・トイレ・寝室すべてひとつながり)
家族構成…ご主人と4歳娘さんと3人暮らし
住んで何年?…1年目

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川上ミホさんと娘さん。ハンモックチェアで絵本を読んであげる時間は、幸せなひととき

軽井沢に家を建てたいと思った理由

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庭にはお花だけでなく、トウモロコシ・唐辛子・モロヘイヤなどの野菜も植えられている

テレビCM、書籍、雑誌などのメディアを中心にフードディレクションやスタイリング、そのほか商品開発やレストランプロデュースなども手掛け、とにかく多忙な日々を送る川上さん。

これまでは「都内」かつ「アクセスのよさ」が、お住まいの重要な条件でしたが、娘さんが生まれてから少し変化があったといいます。

「娘は外遊びが大好き。公園をはじめ外で過ごす時間が多くなり、遊ばせるには夏の暑さが厳しいなと感じていました。実は、私は日本一暑いと有名な埼玉県熊谷市育ちで、小さい頃夏はよく軽井沢へ行っていたため、同じように軽井沢で過ごしたいという思いが強くなりました」(川上さん)

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ゴールデンウイークは気持ちのいい気候を、お庭でめいっぱい満喫!

都内から離れるとはいえ、軽井沢は東京から新幹線で1時間ちょっと、車でもアクセスしやすい立地です。 野菜や果物が新鮮でおいしく、質のよいお肉などを扱うお店があることも魅力的だったといいます。

そうして昨年「夏を過ごすためのアトリエ」として自ら設計し、建築をスタート。ところが、建築中に娘さんが軽井沢の幼稚園へ通うことととなり、生活の拠点を軽井沢に移すことを決めました。

「森の中で存分に遊ばせてくれる方針の園で、豊かな自然環境の中で仕事とともに子育てをするのは魅力的でした。当初の計画とは異なりましたが、しばらくはこちらをメインに東京とのデュアルライフを楽しむことになりそうです」(川上さん)

コンセプトは「森の中の小屋」

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建築は、軽井沢の別荘・住宅建築を多く手掛ける会社「新建築」に依頼

コンセプトは「森の中の小屋」。とはいえ、川上さんご夫婦の好みはモダンテイストなので、ほっこりさせすぎず、できるだけシンプルにミニマムであることを意識したといいます。

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日中は戸外の方が明るく、通りからは15mほど離れているうえ木々もあるため、カーテンがなくても外から中は見えにくい

景色を存分に楽しめるように天井を高く、窓も大きくとり、カーテンもかけません。平屋で、キッチンもダイニングもリビングもすべてがひとつの空間に。

「外と内、リビングとキッチンなど、あらゆるものの境界線が曖昧なシームレス空間。目が覚めると窓の外には当たり前に木々の葉が揺れ、部屋のどこにいても家族の気配を感じることができるワンルームは最高です」(川上さん)

こだわりのインテリアと美しい家具

ご主人はアートディレクター・デザイナーとして活躍する川上シュンさん。クリエイティブなご夫婦のこだわりが詰まったインテリアとハイセンスな家具をご紹介します。

■1:「キッチン」は大きなシンクがポイント

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以前住んでいた家では「見せる収納」だったキッチンも、ワンルームが魅力の軽井沢宅ではすべてしまう「スッキリ収納」に 

料理家である川上さんが一番こだわる場所と言えば、やはりキッチン。壁付のI型で、ポイントはなんといっても「シンクが大きい」ことです。

「あらゆるキッチンを見て使用するなかで、シンクは一番大事だと感じています。とにかく丈夫で大きな野菜も魚も鍋も、ストレスなく洗える大きさが決め手となりました」(川上さん)

薪料理をしたいと思い、キッチンに暖炉を設置することも考えたそうですが、安全面から断念。天気のよい日はテラスの前の庭で焚火をして調理をしているそうです。

■2:まるで鳥の巣のような「ベッドルーム」

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ベッドルームは、「珍しいつくり!」と言われることが多いそう 

家の中でこの場所だけ壁材を変え、朝日ウッドテックという会社の「the wall」という無垢のブラックウォルナット材で壁と天井をぐるりと囲みました。

ベッドだけで部屋いっぱいになってしまうようなコンパクトな空間が、鳥の巣のようで気に入っているそう。床の高さを一段上げることで、ドアを設けずゾーニングされています。

■3:ホテル仕様の「ソファ」を自宅用にオーダー

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娘さんがzoomでバレエレッスン中。ソファの座面は手を置くのにちょうどいい高さ? 

ソファは、ご主人がブランディングで関わったホテルに入れたオリジナルのものを、ご自宅用にオーダー。

インテリア窓の外に鮮やかなグリーンが広がっているので、家の中のカラーは「色数」と「明度」を抑えているそうです。

■4:「いす」は北欧系のデザインを中心にセレクト

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(左)ダイニングチェアは「vitra」 (右)ガーデンチェアは「HAY」

建材は川上さんご自身で好みのものを選んでいるため、家具も比較的スムーズに決定できたそう。

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モノトーンのチェアーと木のテーブルが見事に融合されたダイニング

「ヘイ(HAY)やヴィトラ(vitra)、ボーコンセプト(BoConcept)などの北欧系のデザイン家具をメインに、ところどころでイケア(IKEA)も活躍しています」(川上さん)

エレガントで軽やかなシルエットが特徴のガーデンチェアと、アームの曲線が美しいダイニングチェアが特にお気に入りだそうです。

■5:「アート作品」も好みのテイストに統一

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ウォーホルといえばポップなアート作品のイメージが強いですが、川上邸には繊細な作品が並びます

有名なアンディ・ウォーホル自ら手彩色したという初期の作品が数点。そのほかには、娘さんが生まれたときのデータに基づいて北欧のデザイナーにつくってもらったポスターが飾られています。

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世界にたったひとつしかないポスター

線が細くシンプルなアート。作者や製作者は違っても、テイストに統一感があれば、すべてが調和した空間になります。


急遽、生活の拠点となった軽井沢の川上邸ですが、寒さ対策も建築の段階で万全にしているので冬も問題ないとのこと。緑に囲まれたシンプルモダンなお住まいには、ご家族の幸せな時間がゆったり流れています。

この記事の執筆者
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WRITING :
篠原亜由美
EDIT :
小林麻美