マスクをすると、せっかくのおしゃれが台無しに? もはやそんなことはありません! マスクが私たちの生活に欠かせなくなった今、さまざまなファッションブランドが、コーディネートを邪魔しないどころか洗練させるようなマスクを販売しています。
そのなかでも、エレガントさでは群を抜くのがJUN ASHIDA(ジュン アシダ)が発表したマスク。プレタポルテの製作過程で生まれる高品質な生地を使用したマスクは、「うっとおしいどころかつけてみたい!」と思わせるデザイン性の高さ。接触冷感素材を使用しているので夏にも快適で、しかも洗えるという機能性を備えています。売り上げの10%は新型コロナウイルス感染症の医療関係機関に寄付されるという点もポイントです。
今回は、ファッションデザイナーの芦田多恵さんに、マスクに込めた情熱からニューノーマル時代のファッションのあり方、社会貢献活動への思いまで、zoomでインタビューしました。
すべて1点もの。ジュン アシダの技術を駆使して制作した「おしゃれで快適なマスク」が誕生!
スカーフを巻くようにマスクを! ファッションアイテムとしてマスクを提案
――マスクコレクション「MASK by jun ashida」を始めようと考えた経緯と、製作にあたり特にどこに力を入れられたのかを教えてください。
新型コロナの感染拡大による想像もしなかった事態に遭遇し、ファッションを通じて私たちは何ができるのかと自分に問いかける日々が続きました。そんななか、スタッフと話し合いを重ね、マスクの制作ということにたどり着きました。
自粛期間中に社内技術者有志がボランティアで制作したものを、一部の方に差し上げたところ大好評で、また私のインスタグラムにも大きな反響とお問い合わせをいただき、ならば販売してみようということになりました。
マスクにはプレタポルテで使用している高品質な生地を使用しています。メゾンの技術を駆使して、スタッフが一点ずつ心をこめて制作しています。また、技術者たちと研究を重ね、顔に当たる部分には接触冷感素材を使用し、洗って繰り返し使えるようにもしました。
――ボーダー柄やラッセルレースにスワロフスキークリスタルをあしらうなど、スタイリッシュでエレガントなデザインですね。もはやファッションアイテムの域です!
ありがとうございます。マスクは、しばらくは私たちにとって必需品。であれば、マスクを“うっとおしいもの”から、“スカーフのようなファッションアイテム”に変えてしまえばいいのではないか。マスクありきのファッションを楽しむのもいいのではないか、と思ったのです。ですから、機能性に加えて見かけの美しさにかなり力を入れました。
安全性を保ちつつ、つけたときに顔を覆いすぎずエレガントに見えるにはどうすればいいのか。ミリ単位で、何度もサイズやカッティングの調整を行いました。
――マスクをお洒落に着けこなすアドバイスをお願いします。
多くのファッションアイテムと同じく、TPOに合わせて楽しむと良いのではないでしょうか。カジュアルなシーンでは、ボーダーや迷彩柄など、少し派手なデザインをデニムなどと合わせると楽しいです! フォーマルな場では、無地などおとなしめでシックなデザインがおススメです。黒のレースのマスクを、フェミニンなワンピースに合わせるのも素敵だと思います。
こちらのマスクは、ジュン アシダとタエ アシダの直営店やオンラインショップで取り扱い中です。
レースのマスクをつけたセルフィーをInstagramでも披露!
インスタグラムを最大限に活用し、時代に寄り添ったアプローチでコレクションの魅力を発信
――新型コロナの感染拡大を受けて、お仕事ではどのような大きな変化がありましたか。
TAE ASHIDA 2020-2021秋冬コレクションは、残念なことに中止を余儀なくされ、予定していたムービー撮影も中止となりました。そこで、私個人としてできることのひとつとして、インスタグラムですべての作品に関して、それぞれの作品に込めた想いやインスピレーションなどを、自分の言葉で丁寧に説明するということを思いつきました。技術的なディテールや大切にセレクトした生地、作り手やスタッフに関して、発信を続けました。
1ルックずつじっくりと説明でき、いろいろな作り手が関わっていることなど、ランウェイではなかなか伝わらないことも表現できたという点では、非常に良かったと思っています。
コロナは転換期だった!?今までできなかったことをスタートさせるきっかけに
――自粛期間中、プライベートではどのように過ごされていましたか?
今まで時間がなくてできていなかったことや、スキルアップのためにしたいと思っていたことにチャレンジしました。瞑想をしたり、iPadでデザイン画をスピーディーにかけるように練習するなどです。また、長い間休むと、クリエイティブな感覚が錆びついてしまう気がしましたので、早朝の散歩中に写真を撮るようにしました。
できるだけ毎日5、6キロは歩くようにしていたのですが、目に入るものを2、3秒で撮るなど自分にノルマを課しました(笑)。自分の心の深いところまでじっくり向き合って、自分がどういう視点や感性を持っているのか、再発見することができたと思います。
東日本大震災で再認識したファッションの力。人に寄り添い元気にするもの作りを続けたい
――ニューノーマルな生活が始まると言われるなかで、ファッションの立ち位置や役割はどのように変わるとお考えですか?
あまり人と集うことができない状況では、「周りにどう思われたい」よりも「自分がいかに快適に過ごせるか」を重視して、洋服を選ぶようになるのではないでしょうか。見た目重視だけのファッションは残らず、素材や着心地まで大切にしたものが生き残るように思います。
また、ファッションの気持ちを高揚させる力は、非常時だからこそ必要なものだと考えます。東日本大震災が発生したときに、デザイナーの仕事は災害時には何の役にも立たないように思い、落ち込みました。それでも、何か貢献できることをしたいと避難所の方に「何がほしいですか」と聞いたら、きれいなファッションが見たいですとお返事をいただき、物資とともに広報誌を送りました。そのときに、「美しい洋服を見るとポジティブになれる。きれいなものを着てお出かけする希望になる」とおっしゃっていただいたんです。泣きたいほど嬉しくなったと同時に、ファッションの力に気づかされました。
ファッションはどういうときでも私たちに夢を与え、希望になると思っています。非常時にもニューノーマルな生活となっても、どんな時にも皆様に寄り添いポジティブになれるような洋服を作りたいと願っています。
――2013年に宮城県南三陸町の長期的な復興支援を目的として、Support Tohoku Eternal Projectを始動されました。メゾンの技術を現地の方々に伝え、MINA-TAN CHARMなど高品質な小物を制作販売し、自立促進を行っています。どのような思いで活動を継続されていますか?
2019年1月に現地を視察した際に、今後の活動に関してヒアリングしました。というのは、震災から5年以上が経過し、現地のニーズが変わったのではないかと考えたからです。すると、プロジェクトを続けてほしいという声がほとんどでした。「このプロジェクトは、自分たちが本当に苦しい時に支えとなった」、「ものを作ることで生きがいをもつことができた。もの作りに没頭して、その時間は辛いことを忘れることができた」等々、プロジェクトに対して強い思い入れをお持ちだったのです。
さらに、もの作りを通して地域の人々がお互いにつながる時間を持てること、またチャームの制作を通して南三陸から全国とのつながりができることも大きな支えになるともおっしゃっていました。地域の人々の絆をより深めるためにも、今後も新作を発表し活動を続けていきたいと思います。
また、ワンチームとしてもの作りを楽しんでいる南三陸町の方たちの姿を見ていると、自分の励みにもなります。何か被災地のために役立ちたいと始めた復興支援ではありますが、続ければ続けるほど、私自身が与えていただくものの方が多いですね。
今回は、ファッションデザイナーの芦田多恵さんに、マスク制作に至った経緯や、ニューノーマル時代でのファッションのあり方、社会貢献活動に対する思いまで、お話しいただきました。世界のトップで走り続けるファッションデザイナーのリアルボイスは、私たちに勇気を与えてくれます。芦田多恵さんがデザインされたマスクを毎日のコーディネートに取り入れて、デイリーライフに彩りを添えてください!
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- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 高橋京子
- EDIT :
- 石原あや乃