「十五夜」といえば「お月見」を連想する方は多いですよね。では、今年2024年の「十五夜」がいつなのか、ご存知ですか? この記事では「十五夜」の意味や由来、「十五夜」という風習について解説します。最後まで読んでいただければ、今年の「お月見」がいっそう味わい深いものに成ること間違いなし!です。
【目次】
【「十五夜」とは?「意味」「由来」】
■「意味」
「十五夜」とは、「太陰太陽暦」とも呼ばれる「陰暦」で「毎月十五日の満月の夜」を指します。ですから、たとえ1月であっても7月であっても、本来は15日であれば「十五夜」。なのですが、現在では「陰暦8月15日の満月の夜」を「十五夜」と呼ぶのが一般的です。
■「由来」
「十五夜」の由来となる旧暦は、月の満ち欠けを基準につくられた暦です。月の満ち欠けの周期は多少変化するものの、平均して約29.5日。周期の半分、新月から数えて14日目~17日目が満月にあたるため、旧暦で15日の月は、毎月、満月か、もしくは満月に近い月ということになるのです。とりわけ、秋は空気が澄んで月がとてもきれいに見えることから、古くから旧暦8月15日の「十五夜」は、一年の中なかでも特別な「十五夜」ととらえられてきました。
■「十五夜」が「満月」とは限りません
「十五夜の月は満月」だと思っている人は多いと思いますが、実は、「十五夜」の月は満月ではない年のほうが多いのです。理由は、旧暦で考えられた月の周期と、実際の月の周期との間には、微妙なズレがあるからです。旧暦では、新月の日を月の1日(ついたち)として、新月が満月となり、次の新月がやってくる日を翌月の1日(ついたち)としていました。しかし、実際の月の満ち欠けのサイクルは平均29.5日。30日間で次の新月を迎える月もあれば、29日間の場合もあります。新月の日を1日とすると、だいたい15日ごろには満月を迎えることになりますが、厳密には満月になるまでの日数は平均して14.76日です。つまり、陰暦15日は月齢14.0を含む日であるため、満月には満たない月であることが多いのです。
【2024年の「十五夜」はいつ?】
■2024年の「十五夜」はいつ? 「満月」なの?
2024年の「中秋の名月」は9月17日、そして翌18日が満月です。ここ数年、「十五夜」と満月は同じ日でしたが、今年は1日ズレています。ちなみに、次に「十五夜」と満月が同じ日付になるのは、2030年です。
■今後の「十五夜」はどうなる?
現在の「中秋の名月」は太陽暦にもとづいて決まるため、毎年日付が変わります。だいたい9月から10月の間ですが、2024年は9月17日、来年2025年は10月6日ですから、想像以上にその日付には幅がありますね。
2025年 十五夜:10月6日(月) 満月:10月7日(火)
2026年 十五夜:9月25日(金) 満月:9月27日(日)
2027年 十五夜:9月15日(水) 満月:9月16日(木)
2028年 十五夜:10月3日(火) 満月:10月4日(水)
2029年 十五夜:9月22日(土) 満月:9月23日(日)
2030年 十五夜:9月12日(木) 満月:9月12日(木)
【「十五夜」にまつわる「雑学」5選】
■秋に「お月見」をするのはなぜ?
「満月」は月に1度は見られるものですが、なぜ「お月見」は秋の行事として定着したのでしょうか。その理由は、「空が澄んでいて、月の高さがちょうどいいから」といわれています。満月は東の空から昇りますが、夏に低く、冬に高く、昇っていきます。春と秋は満月が低すぎず高すぎずで、眺めるのにちょうどいい高さにありますが、春は空気がかすんで、月はくっきりとは見えないことが多いのです。これに対して、秋の満月は、空に昇る高さがちょうどよく、空気も澄んでいるため、月がきれいに見えます。
また、日本古来の農業において、栽培管理をしていくうえで月の満ち欠けは重要なサインとなっていました。農業と月には深い関係があり、満月の夜に作物の実りに感謝するお祭りが行われていたことから、それがお月見という習慣につながっていったようです。
■「お月見」はいつからあったの?
「お月見」の習慣は中国から伝わり、平安時代には貴族たちが月を眺めてお酒を楽しんだり楽器を奏でたりして、宴を楽しんでいました。江戸時代になると、それが庶民にも広まっていったと言われています。また、月を見ながら豊作に感謝して喜び、翌年も収穫に恵まれるよう祈る意味合いもあり、それがお月見のルーツとされています。
■「十五夜」と「中秋の名月」、どう違う?
「中秋の名月」とは、「旧暦の8月15日に見える月」を指します。「中秋」は旧暦における「秋の真ん中」を意味する言葉。旧暦における「秋」は7月から9月の3か月間で、7月を「孟秋(もうしゅう)」、8月を「中秋」、9月を「季秋(きしゅう)」と呼んでいました。従って、「中秋の名月」は、旧暦8月の「名月=満月」、つまり8月15日に見える月を指しているのです。つまり、「十五夜」と「中秋の名月」は、同じ「旧暦の8月15日に見える月」という意味を表す言葉と言えます。
■「仏滅名月」って知ってる?
「十五夜」が「仏滅名月」とも呼ばていることをご存知ですか? これは、旧暦の8月15日が必ず仏滅になることに由来します。旧暦では月の最初の日は、月ごとにどの六曜(先勝・友引・先負・仏滅・大安・赤口)から始まるのかが決められており、旧暦の8月1日は友引からスタートします。そこから数えると旧暦8月15日は必ず仏滅となるのです。
■旧暦8月以外の「十五夜」には何をする?
月の満ち欠けを基準とする旧暦では、満月はもっともわかりやすい目印であり、生活の節目節目の目安となっていました。1月15日は小正月 (こしょうがつ)、2月15日は祈念祭、3月15日は梅若ごと、4月15日ごろには神社の春の例大祭、6月15日ごろには祇園会(ぎおんえ)が、さらに7月15日にはお盆、8月15日のお月見、11月15日の霜月(しもつき)祭など、1年を通じて月々の満月を目印として祭りを行う例は数多く見られます。ほかにも、東北地方には1月の「十五夜」に、月の光でできる自分の影を見て1年の吉凶を占う習俗がありますが、同じようなことを南西諸島では8月の「十五夜」に行っています。
■「十三夜」って知ってる?
「十三夜」は新月から数えて13日目の、満月には少し欠ける月。現在では特に旧暦9月13日の夜を「十三夜」と言います。「十五夜」に次いで月見によい夜とされ、「十五夜」に続く月ということで、「後(のち)の月」、あるいは、栗や豆の収穫の時期であることから「栗(くり)名月」「豆名月」などとも呼ばれました。「十五夜」は中国伝来の風習ですが、「十三夜」は日本オリジナル。「十五夜」と対をなして捉えられ、神様に豊作を願い、それを感謝する行事である「十五夜」と「十三夜」、ふたつを合わせて「二夜(ふたよ)の月」、どちらか一方だけ月見をすることを「片月見」と呼び、「片月見はするものではない」と伝えられていました。
【「行事食」は?十五夜の「過ごし方」】
■やっぱり「十五夜」には月見団子!
「十五夜」や「十三夜」のお供え物としては、「月見団子」が定番です。米粉を満月のように丸い形に作ったお団子は、豊作の祈願や、収穫への感謝の意味が込められています。お団子は、「十五夜」にあわせて15個の団子をピラミッド状に重ねます。また、満月は1年に12回あることから、12個の団子を積む場合や、閏年なら13個を重ねることもあるようです。
■ススキを飾って
ススキは、「依り代(よりしろ)」として「十五夜」にお供えされていました。依り代とは、神霊が宿るものと言われており、憑代(よりしろ)と書くこともあります。神霊は、樹木・岩石・動物・御幣(紙または布を切り、細長い木にはさんで垂らした神祭用具)などを依り代として憑依し、霊験を表すと言われています。月の神様は、稲穂を依り代にすると考えられていましたが、十五夜の時期には稲は収穫前だったため、稲穂に似たススキを代わりにお供えしたそうです。また、すすきには魔除けの意味もあり、お月見にすすきをお供えして1年の無病息災を祈願する意味もあったといわれています。
■秋の七草も華を添えます
「中秋の名月」には、ススキをはじめ、「秋の七草」を飾ります。萩に尾花(ススキ)、撫子(なでしこ)、葛(くず)、女郎花(おみなえし)、桔梗(ききょう)、藤袴(ふじばかま)。これが「秋の七草」です。
■秋の実りをお供えに
「お月見」でお団子を供えるようになったのは、中国で月餅を供える習慣が日本に伝わり、それがやがて月見団子となったのではといわれています。また、農家では稲の豊作を祈願するだけでなく、芋類の収穫祭としても「お月見」が行われていたため、お団子とともに収穫したばかりのさと芋など、秋の実りを供えました。そのため、「十五夜」は別名「芋名月」と言われています。
■「お月見どろぼう」という風習も
「十五夜」に飾ったお供え物を、子どもたちが盗んでも「よし!」とするのが、「お月見どろぼう」の風習です。本来であれば、盗みは悪いことですが、「十五夜」に限っては「お月さまが持っていった」と喜ばれ、さらに豊作になる縁起がよい行いと考えられていたそう。このように、「十五夜」には子どもたちがお供え物を盗むことが許される習慣が、日本の各地に今もあるようです。
■沖縄の「十五夜(ジューグヤ)」には独特の習慣が
沖縄は、日本の中でも旧暦の行事が今も盛んな地方です。旧暦8月15日は「十五夜(ジューグヤ)」と呼ばれ、お月さまに日ごろの感謝を捧げる「月拝み(チチウガミ)」という行事が行われます。旧暦8月15日頃はお米の収穫時期でもあるため、お月さまに豊作を感謝する農耕儀礼でもあるのです。家庭では家族の健康や子孫繁栄を祈願する「ウチチウグァン(お月御願)」が、集落では農作物の豊作祭として「ジューグヤーウイミ(十五夜折目)」やお祭り行事である大綱引きや相撲大会などが行われています。家庭でお月さまにお供えする「フチャギムチ」は、沖縄のもち粉でつくったおもちに小豆をまぶしたもの。小豆は子どもを表し、小豆が多くまぶされていると、子孫繁栄に繋がるとされているそうです。
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「お月見団子」のつくり方は案外簡単。上新粉と砂糖を2:1の割合で混ぜ、上新粉100gに対し50ccのぬるま湯を加えて練ります。この生地を30分蒸したら、水で手を濡らしながら丸めます。お皿にビラミッド状に盛ってから少しあおぐと、ツヤが出ますよ。今年の「十五夜」はお家でゆっくりお月見を楽しんでみてはいかがですか。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館) /『日本大百科全書 ニッポニカ』(小学館) /『12か月のきまりごと歳時記(現代用語の基礎知識2008年版付録)』(自由国民社)/国立天文台『暦wiki』(https://post-v.precious.jp/sys/articles/21974)/『おうちで楽しむにほんの行事』(技術評論社) :