ライカのカメラのトップカバーにはこう記されている。「LEICA WETZLAR MADE IN GERMANY」。2014年、ライカはこの生地ウェッツラーに待望の帰還を果たした。100年を超えるライカのクラフツマンシップはどこにあるのか。ファクトリーを訪れるとその真価が理解できる。

ドイツ最高峰の技術と情熱が感動的な写真表現を生んだ

ライカ本社内のファクトリー。設計、製造、組み立てなど光学機器に特化した熟練の技術者の手からライカ製品が生まれる。
ライカ本社内のファクトリー。設計、製造、組み立てなど光学機器に特化した熟練の技術者の手からライカ製品が生まれる。

同社を代表するカメラ、『ライカM10』のボディには高強度なマグネシウム合金製フルメタルを使用。トップカバーとベースプレートは無垢の真鍮から削り出し、40分かけて手作業で研削、研磨される。同じく非球面レンズの研磨も手作業だ。レンジファインダーとローラーレバーの接続、センサーやイメージボードの調整、ボディ背面のカバーとトップカバーの組み付けといった、パーツ総数1105個のコンポーネンツの組み立てには50を超える調整ステップがある。厳格な製造指針のもと、各専門分野に特化した熟練の職人が行っている。

「ウル・ライカ」(レプリカ)。
「ウル・ライカ」(レプリカ)。

加えて、フルサイズミラーレス一眼『ライカSL2』、フルサイズセンサーの単焦点コンパクト『ライカQ2』など広範囲な製品があるが、ライカの哲学をどう各製品に反映しているのか。

16歳でライカに入社し、半生を同社に捧げてきたプロダクトマネージングディレクターのステファン・ダニエル氏に話を伺った。

ライカプロダクトマネージングディレクターのステファン・ダニエル氏。
ライカプロダクトマネージングディレクターのステファン・ダニエル氏。

「ライカにとってカメラがアナログかデジタルかは重要ではありません。最終的なイメージ(画像)がどのようになるかが最も重要です。そのための要素は3つあります。第一はいかによいレンズをつくるか。第二にレンズとセンサーをどうマッチさせるか。第三は優れた写真表現、これがライカの画像だという明確な指標が社内にあり、設計、製造においてコントロールする人間がいることです。イメージセッティングのためにアルゴリズムをプログラムするには正しい目と技術が必要で、これは大学で学んだりすることはできない技能なのです。多くのハンドワークと共に人間の優れた感覚が必要とされます。このように最新のテクノロジーとアートの融合、これがライカを他社にはないユニークな製品としています」

ウェッツラーにあるライカ本社の複合施設ライツパーク。ファクトリー、ミュージアム、ホテル等も併設。
ウェッツラーにあるライカ本社の複合施設ライツパーク。ファクトリー、ミュージアム、ホテル等も併設。

同時に、ライカは最も高価なカメラメーカーとしても知られている。

オスカー・バルナックが100年前に「ウル・ライカ」で初めて撮影したアイゼンマルクト広場の写真。
オスカー・バルナックが100年前に「ウル・ライカ」で初めて撮影したアイゼンマルクト広場の写真。
今も同じたたずまいをみせるウェッツラーの撮影場所とそれを記したプラーク。
今も同じたたずまいをみせるウェッツラーの撮影場所とそれを記したプラーク。

「ライカが高額だというのは真実ではありません。たとえばMシステムは1954年製造のレンズから最新のものまで互換性があります。これは私たちにとって限界でもありますが、同時に製品が長く使用に耐え得る、信頼性の証でもある。すべてのMシステムが修理可能です。ライカのリセールバリューは高く、投資するだけの価値がある。すべての製品を通して、ライカを触ったときの質感、撮影する喜びはプライスレスです。私たちは自分たちのやっていることに情熱があります。多くの情熱と敬意をお客様と共有しているのです」

人の心に感動を喚起する、すべては優れた写真表現のために。不変の哲学と共に、ウェッツラーでは新たなライカ100年の歴史が刻まれている。

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PHOTO :
武田正彦
EDIT :
長谷川喜美