籐は軽くて丈夫で昔から家具の材料として世界中で愛されている天然素材です。どこか懐かしさを感じさせる素材でもありますよね。

実はここ数年前から籐は、インテリアにリラックス感をつくり出す「旬」な素材としてさまざまなブランドの新作にも取り入れられ、再び人気が高まっています。

それに伴い、今まではヴィンテージでしか手に入れられなかった籐を用いた過去の名作も続々と復刻。

高温多湿な夏には水分を吸収、乾燥した冬には内部の水分を放出する籐の素材特性は、日本の気候にもぴったり。天然素材を室内に取り入れることで、リモートワークや環境の変化のストレスを和らげる効果も期待できます。

そこで身長156cmのインテリアエディターが実際に見て・触って・座ってレポートする本連載では、今再び評価されている1940〜60年代にデザインされた籐を用いた椅子3点をご紹介します。

あの名作も復刻!「籐(ラタン)」を使ったレトロモダンな椅子3選

■1:イタリアのお城にも日本の住宅にも合う、丈夫でエレガントな「C-chair(Cチェア)」 

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【商品名】「Cチェア」【ブランド】GUBI(グビ)【写真の仕様価格】¥181,500【サイズ】幅410×奥行530×高さ790 座面高435mm【材質】オーク材、籐

無垢材とラタンの取り合わせ部分のシンプルな収まりが美しく、ボリューム感のあるフレームが生き生きとした印象をインテリアに与えてくれるエレガントな「Cチェア」。背もたれと座面の絶妙な角度とカーブのおかげで座り心地もよく、小柄な私でも背にもたれて足がきちんとつくサイズ感です。

「Cチェア」は、第二次世界大戦後に建てられた新しいサイズの住宅に合わせる必要性から生まれたもので、1947年にフランス人デザイナー、マルセル・ガスコアンによってデザインされました。

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デンマークブランドの「GUBI(グビ)」から、クラシックアイコンとして復刻

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経年したパステルカラーのお城の壁に映える復刻版の「Cチェア」

マルセル・ガスコアンは、後述のル・コルビュジエやピエール・ジャンヌレなどの重要なモダニズム建築家・デザイナーとともに、過剰な装飾を排除し合理的に機能と製作方法を融合させたデザイン哲学を提唱するUAM(現代芸術家連盟)のメンバー。

ガスコアンの仕事の価値が近年コレクターにより再発見され、デンマークの家具メーカー「GUBI(グビ)」から「Cチェア」が復刻、同ブランドの初の木製家具として2018年のミラノデザインウィークで発表され大きな反響を呼びました。

2脚ずつ並べて飾ることで太いフレームに縁取られた軽やかな籐の質感が強調され、天井の高い大空間の中でも独特の存在感を放っていました。イタリアのお城にも日本の住宅にも合う無国籍なたたずまいが魅力です。

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■2:逆V字のフレームと籐のダイナミックな構造が、インテリアに重みを添えるチャンディガールの 「オフィスチェア」

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【商品名】「PH28 V-leg Office Chair」【ブランド】Phantom Hands(ファントム・ハンズ)【写真の仕様価格】¥352,000【サイズ】幅520×奥行585×高さ780 座面高435 肘高665mm【材質】チーク材、籐 

ひと目でチャンディガールの家具とわかる、逆V字型の力強いフレームが印象的な「オフィスチェア」。

チャンディガールとは、1950年代にモダニズム建築の巨匠、ル・コルビュジェが唯一都市計画を実現させたインド北部の都市名で、その一部は2016年に世界遺産にも登録されました。

その建築群のために制作された家具は、椅子だけではなくデスクやキャビネットに至るまでこの印象的な逆V字型フレームが使われており、「オフィスチェア」は最も知られているモデルのひとつで、行政庁舎の管理事務所に置かれていました。

チャンディガールで実際に指揮をとったのはコルビュジェの従兄弟、ピエール・ジャンヌレです。

工業化の進んでいなかった当時のインドで同時期に大量の家具を必要としたため、ジャンヌレは現地で入手可能な材料を用い、図面と大まかなアドバイスで制作可能なデザインを考え、多くの工房の職人と共創しました。

その結果、同じ椅子でもさまざまなバリエーションや刻印が生まれ、時を経て多くのコレクターに愛される理由にもなっています。

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色々な工房でつくられたため背のつき方が異なる「オフィスチェア」の図録(Jacques Dworczak(2018)著/「JEANNERET CHANDIGARH」/assouline 出版/P.100より)

オリジナルに忠実な復刻品を製作するインドの工房、ファントム・ハンズの「オフィスチェア」

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当時製作していた工房の技術を継承した職人がアドバイザーとして監修を務めています。 PHOTO:Martin Mulder

インドの工房「ファントム・ハンズ」は、当時の図面が現存しているアイテムのみを忠実に復刻。

フレームには築100年以上の建物などで使われていた、美しく経年変化したチーク材を用い、座面はクロス編みよりも強度の高い籠目編みで仕上げられています。

まろやかな手触りとしっとりとした艶が上品な印象で、156cmのエディターでも背にもたれて足がきちんとつく寸法体系に仕上がっていました。チーク材の経年具合で個性も出るため、ひとつとして同じ表情のものがないことも魅力のひとつです。

また売り上げの一部は、歴史のなかに埋もれたピエール・ジャンヌレの功績を正しく保存・研究するために役立てられており、お買い物することで後世にデザインの価値を伝える活動に参加できるのも嬉しいですよね。

2019年から日本でも本格的に販売がスタート。富山県と東京に拠点をもつ建築とデザインの会社「五割一分(ごわりいちぶ)」が、年に何回かプライベート・ビューイングを開催しています。

ご興味のある方は(インスタグラムアカウント:@5wari1bu)をフォローして最新情報をチェックしてください。

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アームの控えめな面取りが直線の印象を保ちながらもやわらかく仕上がっているなど、細かなこだわりが素晴らしい「オフィスチェア」。

【過去の関連記事はこちら】幻の名品チェアがその場で注文できる!「アートのある暮らし」のコツが学べるインテリア展示会

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自分なりの「軸」で判断、納得して手に入れることで満足度が増すヴィンテージのチャンディガール「オフィスチェア」

フランスのギャラリーを中心に見直された歴史的価値、世界遺産への登録、国外に大量に流出していくことに危機感を覚えたインド政府がかけた輸出規制、有名デザイナーやミュージシャンによるコレクション等々、複数の理由でヴィンテージのチャンディガール家具は高額で取引されています。

良質で値ごろ感のあるヴィンテージはなかなか手に入りにくい状況です。

座る目的でご購入されるのであれば、籐の状態を確認することがポイント。パリパリに乾いていたりささくれがあったりするものは座っているうちに破れてしまうことも。

日本で修理する場合は、強度を保つためにオリジナルとは表情の異なる編み方になる場合もあり、注意が必要です。さらに、購入する際には張り替え対応してくれるかどうか、おおよその代金も確認しておくと安心です。

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ステンシルが印象的なヴィンテージの「オフィスチェア」(非売品)。銀座SIXのTSUTAYAで開催されていた展示販売会は、初日にも関わらず、ほぼ完売でした。

編まれた部分は消耗品として捉え、手入れ・修理しながら自分だけの表情に育てていくことも楽しむスタンスでいれば、一番の特徴でもあるチーク材のフレームの表情で選ぶことも正解のひとつです。

知識があるほど手に入れる喜びが増すというのもヴィンテージのよさですよね。

ヴィンテージの「Cチェア」、チャンディガールの「オフィスチェア」を座ってから購入できる「YAECA HOME STORE(ヤエカ ホーム ストア)」

アパレルブランドの「ヤエカ」では良質なフレンチヴィンテージ家具も扱っており、希少なヴィンテージの「Cチェア」や、チャンディガール の「オフィスチェア」「ベンチ」を展示販売中です。

フランス人の住宅だった一軒家を改装した店内で、日本の空間にもしっくりとくる様子が体感できます。

歴史的に価値の高いアイテムの状態のよいものを厳選されており、実際に座ることも可能。スタッフさんにお声がけすると、プライスリストを見せていただけます。

※1点もののため販売次第終了
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ロベール・マシューの壁付照明と「Cチェア」が落とす美しい影
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籐の状態もよく、チーク材も上品で小ぶりな印象のヴィンテージが並んでいました。
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雨の日の無垢のチーク材は艶が増して、一層素材の魅力が引き立ちます。

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■3:畳にもOK!端正で優美なデンマークデザイン巨匠の名作「BM61」も復刻

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【商品名】「BM61」【ブランド】フレデリシア【写真の仕様価格】¥440,000 【サイズ】幅480×奥行480×高さ765 座面高460mm【材質】オーク材、籐

座面の曲線や身を預けたときに受け止めてくれる背のカーブが、全体の直線的な印象のフォルムに引き立ち、置いた空間になんとも優美な印象を与えてくれる端正なたたずまいが魅力の「BM61」。

床に線で接するので畳の部屋でも使えるのが嬉しいですよね。

こちらは、1957年にデンマークの巨匠、ボーエ・モーエンセンによってデザインされた名作。1990年までフレデリシア社が生産していましたが一時廃盤になり、年月を経て2020年に復刻生産となったばかりです。

上質な材と芸術的な構造美は、ニューノーマル時代の私たちの暮らしにリラックスと本物のよさを与えてくれるアイテムとして愛されるのではないでしょうか?

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幅広な座面でゆったりとしています。背部分のカーブの角度のおかげで、在宅ワークの椅子としても寛ぐこともできます。
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こちらは非売品のヴィンテージ「BM61」。しっかりと丁寧に編み込まれた籐の飴色の経年変化が美しい一脚です。

問い合わせ先

  • グリニッチ
  • 営業時間/11:00〜19:00
  • 定休日/水曜
  • TEL:03-6416-5650
  • 住所/東京都渋谷区猿楽町29-10 HILLSIDETERRACE代官山 C棟

 


いかがでしたか? 今回は現代の暮らしに合う籐を使った名作椅子のヴィンテージと復刻についてご紹介しました。

良質なデザインには時代を超える力があります。資産価値の高いヴィンテージ家具を取り入れ、おおらかな時代の流れを楽しむのも素敵ですし、復刻品を使いながらヴィンテージに育てていくのも楽しいですよね。

お気に入りの一脚に出合えるお手伝いができれば幸いです。

※掲載した商品はすべて税込です。

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この記事の執筆者
イデーに5年間(1997年~2002年)所属し、定番家具の開発や「東京デザイナーズブロック2001」の実行委員長、ロンドン・ミラノ・NYで発表されたブランド「SPUTNIK」の立ち上げに関わる。 2012年より「Design life with kids interior workshop」主宰。モンテッソーリ教育の視点を取り入れた、自身デザインの、“時計の読めない子が読みたくなる”アナログ時計『fun pun clock(ふんぷんクロック)』が、グッドデザイン賞2017を受賞。現在は、フリーランスのデザイナー・インテリアエディターとして「豊かな暮らし」について、プロダクトやコーディネート、ライティングを通して情報発信をしている。
公式サイト:YOKODOBASHI.COM