身近なところにあった、世界中ここでしか味わえない感動

海外にも出かけられず、国内旅行でさえ少々ためらってしまうような、なんだか窮屈な思いでお過ごしの方も多いのではないでしょうか? 毎日家で過ごしていると、どこかに出かけたくなるもの。意外と近くに非日常的な時間を過ごせるところがあるとしたら嬉しいですよね?

実は、都内在住の方にとってはとても身近な丸の内に、歴史ある重要文化財に泊まれる、世界でも珍しい駅舎一体の「東京ステーションホテル」があります。

ホテルブランドグループ「スモール・ラグジュアリー・ホテルズ・オブ・ザ・ワールド」に東京初の加盟も遂げている同ホテル。ホテルを格付けする「フォーブス・トラベルガイド」で、2021年度も6年連続となる4つ星を受賞したばかりです。

リモートワークで通う機会も減った東京駅で味わえる旅のときめき。大切なのは距離の移動ではないのかも!? ただ泊まるだけではもったいない、東京ステーションホテルの楽しみ方やインテリアの見どころをレポートします。

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ドームを見上げた図。灯りのともった窓の中にある客室に泊まることを想像してみてください。
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左/客室の窓から見る夜のドーム内の美しさ、右/丸窓で切り取られた絵本のような丸の内の風景

「東京ステーションホテル」を楽しみ尽くす!おすすめポイント7選

有名建築家による歴史的建造物のクリーン&ミニマムな改修で、最近のリノベーション建築に多い「外側と内側でのギャップを際立たせる手法」とは真逆に、東京ステーションホテルは、王道のヨーロピアン・クラッシックなインテリアを丁寧につくりこんでいます。

内装デザインのコンセプトを決める際のリサーチで、100%近くの回答が「駅舎と調和する空間」だったことから、この先も愛され続けることを目指したそう。

本物であることにこだわり、ヨーロッパの数社のインテリアデザイン会社にアプローチしコンペティションを実施したうえで、イギリスのデザイン会社「リッチモンド・インターナショナル」に決定。同社の女性代表、フィオナ トンプソンがデザインを担当し、家具やカーテン含め、ほぼオリジナルで製作されています。

それでは早速、私が訪れて感じた「東京ステーションホテル」の見どころや、チェックしていただきたいポイントをご紹介します。

■1:チェックイン前に注目!控えめなメインエントランスと壁に刻まれた歴史

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正面の御車寄せがぐるりと囲む「東京駅」と刻まれた石碑。八重洲の外堀にかけられていた八重洲橋を支えていたものだとか。

東京ステーションホテルの正面入り口は、駅舎向かって真ん中より少し右側にあり、外から見ると控えめな造りになっています。それには理由が。

駅舎中央には天皇、皇后両陛下や国賓、公賓、皇族などが東京駅をご利用になる際に乗用車をつける「御車寄せ(みくるまよせ)」があるため、正面を避けて設けられているのです。宮殿行事の信任状捧呈式の際は、パレスサイドのお部屋やアトリウムの小部屋の窓から、馬車でお出かけになるお姿を拝見できます。

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駅舎に向かって丸の内南口よりにあるメインエントランス。

赤煉瓦の壁をよく見ると、増築された3階部分のレンガと旧いレンガには少し境目が見えています。大正時代の焼きムラを表現するため、3色のレンガタイルを常滑市のタイル会社が手がけました。

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創建当時の姿に復原するために増築された3階部分は、ほぼすべて客室利用されています。

レンガ同士の溝部分は「覆輪目地(ふくりんめじ)」という、中央が盛り上がった手間のかかる仕上げでそろえているという、細かなこだわりの集大成が創建当時の風格を今に伝えています。戦争で焼け落ちた駅舎のドームと3階部分の復原工事を経て、ホテルの部屋数は、58室から現在の150室へと増えました。

■2:ロビー階で味わう、王道のヨーロピアン・クラッシックなインテリア

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ロビーの一角。シャープなストライプが効いているクラッシックスタイルのソファコーナー。

メインエントランスを入ると、赤レンガの外観と調和したヨーロピアン・クラッシックな空間が広がります。高さのある壁にはモールディングが施され、光と影が生まれ格式高い雰囲気に。

天井との境目は立体的なカーブになっておりゴールドに塗られ、その隙間から間接照明が優しく照らす明るいインテリアとなっています。そこにモダンにアレンジされたウィングバックチェアや、シックなカラーリングの家具が映えます。

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ヘリンボーンのファブリックに、ストライプを合わせる柄on柄のコーディネートもシック。

床は2色の大理石による幾何学パターン。駅舎のドームと同じクレマチスの真鍮がはめ込まれています。クレマチスの花言葉は「旅人の喜び」だそう。ホテルエントランスには、ほかにもこのクレマチスのモチーフが使われている箇所があります。

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ガラスを孔雀のように覆っているファブリックの中心にも、クレマチスが。
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左/チェックインはアーチをくぐった空間で。右/天井ぎわのゴールドが効いています。

■3:瀟洒なインテリアを満喫できる「ロビーラウンジ」

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左/細部まで隙のないロビーラウンジのインテリアは、照明も素敵。シャンデリアは、ヴェネツィア最古のガラス・シャンデリアメーカー「BAROVIE&TOSO(バルビエ&トーゾ)」のもの。右/イギリスの・照明メーカー「chelsom(チェルソム)」による壁面のライト。

駅舎の縦長窓とマッチするヨーロピアン・クラシックの窓辺が印象的な1階の「ロビーラウンジ」では、東京ステーションホテルらしいインテリアを存分に楽しむことができます。

ホテルのキーカラー「濃藍色」に、シルバー、濃茶、深紅をアクセントカラーに施したカラースキームがとっても華やか。モールディングを施した壁に飾られた数多くの額や、江戸切子のようなガラス壁に、印象的なパターンのラグ。置かれているソファの鋲打ちやボタン留め、玉縁などの凝ったディテールにときめきます。

またファブリックの選び方にも遊び心があり、注意深く異なる質感やパターンを重ねて、奥行き深いコーナーをつくり出しています。

こちらのインテリアを手がけたのは、客室と同じイギリスのデザイン会社「リッチモンド・インターナショナル」。お城のコンバージョンで実績のある同社によるセレクトアイテムや建材、オーダー家具、オリジナルファブリックがつくり出す雰囲気は心地よく、普遍的な品のよさがあります。

ロンドン大学で建築を学んだ、辰野金吾氏の異国情緒溢れる駅舎の空間づくりと相まって、時代を超えて、どの世代の方でもゆったりとした時間を過ごすことができる場所になっています。

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左/ロビーラウンジ奥のソファ席にある、ブルーと赤が玉虫のように光る張地のオリジナル1人がけアームソファ。右/ビロードのツヤを引き出す、クラシカルなボタン留めのディテールが効いたソファ。
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ミントグリーンのストライプは、藤崎総支配人のアイデア。濃藍色にシルバータッセルの可愛いティーコゼーはスタッフのアイデア。創建当時のカラーパレットに合った色のチョイスや、アクセントに使われているストライプを取り入れるなど、細部にまで気が利いていて胸が高鳴ります。

■4:インテリア好きが泊まるなら、「ドームサイド」と塔の中の「メゾネットスイート キング」がおすすめ

東京ステーションホテルの醍醐味は、なんといっても駅舎の中のホテルでしか味わえない空間体験。とりわけ建築とインテリアのダイナミックなつながりが感じられるのは、「ドームサイド」のお部屋と、丸窓がある塔の中の部屋「メゾネットスイート キング」です。

駅舎のドームが借景に!非日常感はピカイチの「ドームサイド」

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ドームサイドの客室。ベッド、ラグ、ハイバックチェア、テーブル、シャンデリア、カーテンはすべてオリジナル。

ホテルでも一番人気の「ドームサイド」は、南北のドームに沿って配置した他にはない唯一無二の空間です。30平米ほどの小さなお部屋の天高は3.9m! 背の高い直方体に入ったような、非日常的な空間体験ができます。

縦長のカーテンを開けると、見慣れた東京駅の美しいドームが目の前に。お部屋のテーマカラー、ブルー&シルバーが卵色のドームに映え、とてもロマンチックな風景が圧倒的なスケールで現れます。

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縦長のカーテンを開けると風景の一部になったような気分に。「コンフォートキング」または「スーペリアキング/ツイン」には、2つ窓があります。
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左/壁面に飾られた印象的な鏡のような魚眼レンズのフレームはアートワーク。右/お部屋のテーマカラーのブルーを使った模様が印象的なラグ。
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カットの美しい大理石の洗面台には、ドイツの老舗ブランド「DURABIT(デュラビット)」のボウルが。
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フランスの「Histoires de Parfums(イストワール ドゥ パルファン)」に、ホテル開業の1915年をイメージした香りを調合してもらっているオリジナルアメニティ。側面のシールは、ハサミの入った切符のデザイン! これも藤崎総支配人のこだわり。

4つの丸窓が切り取る景色。塔の中の「メゾネットスイート キング」

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「メゾネットスイート キング」のベッドルーム。刺繍の飾り枕が印象的なベッドの風景。

KITTEから見える南ドーム横の塔部分は、実は建築の装飾的な要素が強く、駅舎の創建当時は長い間使われていない空間でした。復原後その縦長の空間を有効利用して生まれたのが、珍しいメゾネットのスイートルームです。

ベッドルームの丸窓は全部で4つ。部屋が8角形なので、見える景色が窓によって違うのもこの部屋ならではの楽しみのひとつです。1階部分には、リビングとバスルームが。テーマカラーのパープルがほんのりフェミニン。丸窓のカーテンは、スイッチひとつで開閉ができるのでちょっとしたサプライズも演出できそう。

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左/曲がりながら登る優しいカラーリングの階段の先にはベッドルームが。右/丸窓に対してシンメトリーに置かれたベッド横のハイバックチェア。
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リビングルーム。変形の室内には「秘密基地」のような楽しさが。
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左/リビングの鏡台コーナー。引き出しにはシルバーのタッセル型の取手が。右/リビングのハイバックチェアはオットマン付き。角度のついた壁の鏡づかいがユニーク。

■5:探索が楽しい「未体験の長さの廊下」「壁ギャラリー」「アーカイブバルコニー」「美しい非常階段」

東京駅舎の形状を思い浮かべるとイメージがつくと思うのですが、廊下の長さは最長330mを超える未体験の空間です。廊下の壁には100点以上の鉄道に関する写真や絵やポスターがあり、見て回るだけでも結構な運動量になります。

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実在していた「東京ーパリ」を1枚の鉄道切符で14日間かけて行くツアーのポスター

廊下の絵や写真に設置されたQRコードを、専用アプリがインストールされたタブレットを使って読むことで、解説を楽しめるというセルフ館内ギャラリーツアー「ヒストリカルツアー2020」も人気です。

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初めて見る長さのソファが、アトリウム横の廊下に置かれていました。

東京駅舎の南北にあるドームを眺めることができる「アーカイブバルコニー」と呼ばれる小部屋は、全部で3つ。宿泊者ならどなたでも利用可能です。駅舎に残る創建当時のレリーフを使った様子や、細かな装飾をチェックイン時に配布される「館内ツアーガイド」を併せて見比べるのもオススメです。

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北側ドーム沿にあるアーカイブバルコニーにはソファが。復原工事の様子がパネル展示されています。
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南側のドームサイドにあるアーカーブバルコニーには、川端康成時代の客室の椅子が復刻展示。

南ドームの奥にある螺旋階段は、手すりの繊細な装飾や斜めに貼られた大理石のパターンがとても美しいので必見です。窓から差し込む日の光と、間接照明がつくる陰影もぜひ楽しんでみてください。

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南ドームの奥に位置する、世にも美しい螺旋階段。

■6:インテリアも建築も夜の美しさは格別!

夜の東京ステーションホテルの美しさは格別。KITTEの6階にある屋上庭園からは、塔の丸窓から漏れる明かりや、2つのドームが立体的に楽しめます。丸ビル側から見ると、アトリウムの小部屋は御車寄せの真上に位置することや、横幅の長さが見て取れます。

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左/丸窓から漏れる灯りの先には宿泊者がいると思うと違った印象に。右/シャッターの閉まった深夜の駅舎内を見下ろす不思議な体験も。

■7:駅舎中央の屋根裏「アトリウム」でとる優雅な朝食

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中央線ホーム側の天窓のガラスと赤煉瓦の壁が向かい合う「アトリウム」。新旧が共存する大屋根にはシャンデリアが。

宿泊客が朝食をとる、東京駅舎の中央の屋根裏にあたる「アトリウム」。高さ9mの天窓からふりそそぐ太陽の光が気持ちのよい大空間です。重要文化財指定の建造物は原則的に元に戻すことが決まりなので、屋根をガラスに仕様変更する申請が通るまでに4年半かかったとか。

ビュッフェの並ぶテーブル奥には、むきだしの創建当時の鉄骨赤煉瓦構造が目を惹きます。建造物の単なる保存に徹するのではなく、中で過ごす人たちに提供したい体験から創造した、まさにここでしか味わえない歴史の重みと、今を生きる歓びが交差する不思議な場所です。

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駅舎創建当時の鉄骨&赤煉瓦の壁前にビュッフェが並びます。

ビュッフェのなかには、その場でステーキやエッグベネディクトなど焼いてくれるコーナーや注文後に炊いて土鍋で提供されるご飯などお食事も。サービスも、インテリア同様にとても行き届いているのが印象的でした。

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スペースに応じて異なる椅子が置かれている「アトリウム」。左/背面と座面が張り分けられたダイニングチェア。中/ラグの敷かれた、天高控えめの落ち着いたソファ席も。右/「アトリウム」隅のブックコーナーのハイバックチェア。
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アトリウムの両端の小さな階段の先にあるおこもり感のある小部屋(事前予約不可)。

いかがでしたか? インテリアだけでも語り尽くせないほど、オーセンティックな魅力にあふれた東京ステーションホテル。広報の方をはじめお話ししたスタッフの方全員が、ホテルの設えについて誇らしげにお話してくださいました。「この空間で働く喜び」が伝わってくる接客が印象に残っています。

筆者は宿泊したのちに、取材に訪れましたが、また何度でも足を運びたくなる場所になりました。

次に東京駅にお仕事や出張で訪れる機会がある際には、ロビーラウンジでお茶だけでもしてみませんか? 「東京ステーションホテル」で過ごす、ラグジュアリーな時間が心にもたらす効果は絶大です。

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この記事の執筆者
イデーに5年間(1997年~2002年)所属し、定番家具の開発や「東京デザイナーズブロック2001」の実行委員長、ロンドン・ミラノ・NYで発表されたブランド「SPUTNIK」の立ち上げに関わる。 2012年より「Design life with kids interior workshop」主宰。モンテッソーリ教育の視点を取り入れた、自身デザインの、“時計の読めない子が読みたくなる”アナログ時計『fun pun clock(ふんぷんクロック)』が、グッドデザイン賞2017を受賞。現在は、フリーランスのデザイナー・インテリアエディターとして「豊かな暮らし」について、プロダクトやコーディネート、ライティングを通して情報発信をしている。
公式サイト:YOKODOBASHI.COM