日本有数のバラの産地・岐阜で誕生した「ローズジャム」とは?
NHK大河ドラマ『麒麟がくる』の主人公・明智光秀の出身地として盛り上がりを見せる岐阜県。実は、日本有数のバラの産地としても名高い地域なのです。
岐阜のバラ文化を広めることを目的として、2020年6月に発足された「Gifu Rose Project」。バラのグッズや情報発信などを通じて岐阜のバラ文化を盛り上げるこのプロジェクトから誕生したのが、無農薬のイングリッシュローズを使用したジャムです。
「Gifu Rose Project」代表の矢野純子さんと、ローズジャムの製作者で三ツ星フランス料理店でスーシェフの経験もある小澤亮平さんに、岐阜のバラ文化の成り立ちやローズジャムについて聞きました。
世界一のバラ園を目指してつくられたバラの殿堂
岐阜のバラ文化が花開いたきっかけは、1995年4月に可児市で開催された花の博覧会「花フェスタ’95ぎふ」。イベント終了後に会場を再整備してバラと花のテーマパーク「花フェスタ記念公園」が誕生しました。
岐阜に世界一のバラ園をつくろうという大きな構想のもとに、ナゴヤドーム約17個分という広大な敷地の中に豊富な種類のバラが植えられています。
世界各国で生まれたバラを集めた「世界のバラ園」や、香りや色などのテーマごとに植えられたバラを楽しめる「バラのテーマガーデン」などの趣向を凝らした展示がされており、遠方から訪れるバラマニアも大勢いるとか。
「Gifu Rose Project」では、岐阜県で活躍する育種家(植物の品種改良を職業とする人)やイラストレーターなど、さまざまな人とコラボレーションしてグッズを制作・販売しています。
育種家といってもバラの育成・販売に限らず世界観をつくり上げるところまで手がける人が多く、活躍の場を広げる河本麻記子さんもそのひとりです。
「Gifu Rose Project」のオンラインショップでは、河本さんが生み出した「Rose De Mercerie(ローズ・ドゥ・メルスリー)」シリーズのバラを撮影したポストカードも扱っています。実はこのスタイリングや撮影も河本さんご自身が手がけているのです。
ローズジャム誕生に至るふたつのストーリー
「Gifu Rose Project」のバラを使ったジャムは、全部で5種類。誕生に至る背景には、ふたつの出会いがあったと矢野さんはいいます。
まずは、飛騨市河合町にある「香愛(かわい)ローズガーデン」。観賞用として育成されることの多いイングリッシュローズを無農薬の食用バラとして育成することに成功したバラ農園です。
「バラは虫がつきやすいため、無農薬で育てられるのはとても難しいことから、土づくりにもとても苦労されたと聞きました。河合町は高地で日本一の豪雪地帯といわれており、こうした環境が無農薬の食用バラの育成に適していたようです」(矢野さん)
矢野さんはこの花びらを使って何かつくれないかと考えました。
そして、昨年10月に名古屋市で開催された商談会を訪れた矢野さんは、フレッシュローゼル(ハイビスカス)を生産する「ベジタリ菜」が販売するジャムを食べて感銘を受けたのだそう。
そのジャムをつくったのが、後にバラジャム製作を担うことになる小澤さんだったのです。
「ベジタリ菜さんで売られていたローゼルのジャムは5種類ほどあったと思いますが、同じ素材でここまで味の変化を付けられることに驚きましたし、何よりとてもおいしかった。
そこで、代表を務める杉山さんに『美容にいいといわれるバラとローゼルを組み合わせてジャムをつくりたい』とご相談をしたところ、小澤さんをご紹介いただきました」(矢野さん)
小澤さんは、北海道にあった三ツ星のフランス料理店で8年間働いていましたが、実家のあんこ屋を継ぐことになり、店を辞めて地元の愛知県豊橋市へ帰ってきました。家業を継ぎながらも、北海道にいた頃からの趣味だったジャムの製造を続けていたそうです。
「地元ではさまざまな果物や野菜を生産しているので、それを使って何かつくりたいと思ったことがきっかけです。
ドラゴンフルーツと桃を組み合わせたり、スパイスを配合したり、当時は変わったジャムをよくつくっていましたね。バラも使ってみたい食材だったので、こうしてつくることができてうれしいです」(小澤さん)
香愛ローズガーデンのバラ、そして小澤さんとの出会い。ふたつの点がつながって最初に誕生したのが、この「女王様のジャム」です。
香りの高い真紅のバラ「ウィリアム・シェイクスピア2000」と、クレオパトラも美容食として愛用していたというローゼル(ハイビスカス)を組み合わせた色味の美しいジャム。バラの花びらとハイビスカスをたっぷりと使用し”具材を食べる”感覚でいただけます。
「ウィリアム・シェイクスピア」と季節の果物を合わせたものがこちら。春先はいちごが使われ、秋以降はりんごを組み合わせます。果物の風味がバラの香りと絶妙に調和した食べやすい一品です。
”殿堂入りのバラ”と呼ばれる黄色い「グラハム・トーマス 」とネーブル、リキュールを使用したもの。柑橘類のさわやかさをベースに、程よく鼻に抜けるバラの香りとリキュールによる深みをしっかり感じられる、「王様」の名にふさわしいジャムです。
「グラハム・トーマス」と夏みかんを組み合わせたシンプルなジャムです。甘酸っぱくフレッシュな夏みかんとグラハムトーマスの香りがさわやか。「王様のジャム」と食べ比べるのも楽しいですよ。
「お姫様のジャム」の秋バージョンで、フレッシュなりんごをふんだんに使ったジャム。りんごの素材感を生かしながらバラの香りをほのかに漂わせることで上品な味わいとなり、赤いバラの色が程よく全体に広がり見た目にもとても美しく仕上がっています。
すべてのジャムに共通しているのが、バラの主張が激しすぎないこと。果物やバラの風味が幾層にも重なり合って口の中に広がります。
「バラだけを使ったジャムだと、香りは強いけど中身がない印象になってしまいます。ベースとなる食材があり、その上にバラを重ねることで、全体の味がよくなるんですよ」(小澤さん)
自宅で簡単にできるローズジャムの食べ方アレンジ
パンやヨーグルトと合わせることの多いジャムですが、ローズジャムにはまた違った方法でおいしく味わえる食べ方があるのだそう。小澤さんがオススメするアレンジレシピがこちら。
「レモン汁を加熱し、バターを加えて乳化させます。そこへ『王様のジャム』を混ぜるだけ。魚にも野菜にも合うソースの完成です。今の時期ですと、焼いた鮭にかけるとおいしいですよ」(小澤さん)
いつもの焼き魚にこのソースをかけるだけで、スペシャルな料理に早変わり。ほかにも、ケチャップの代わりにパンに塗ってサンドイッチにしてもいいそうです。
「柑橘系のジャムならハムや卵、チーズなどなんでも合いますし、『女王様のジャム』やりんごの『お姫様のジャム』なら、お肉とも相性がいいですよ。卵はスクランブルエッグがおすすめです」(小澤さん)
紅茶やお湯に溶かしたり、炭酸水で割るなど、ドリンクとしても楽しめます。
品のある色味と豊かな風味で、トーストに塗るだけで特別感に浸れること間違いなしのローズジャム。大切な人へのギフト用はもちろん、自宅用にも欲しくなりそうです。
Gifu Rose Projectでは、ジャムのほかにも本記事内でご紹介したポストカードや、バラのイラストが描かれたオリジナルのエコバッグ、バラのハーブティーなど、さまざまな商品を展開しています。ぜひ一度、オンラインストアをのぞいてみてくださいね。
※価格はすべて税込です。
問い合わせ先
- TEXT :
- 畑菜穂子さん ライター
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- EDIT :
- 小林麻美