先日、「男たちの物欲なき生活」について書いたところ〈女性だって本を出してるだろう! “フランス人は10着だ”とかいうやつ!〉という野太い声が聞こえてきた。
でも読めばわかるが、あの『フランス人は10着しか服を持たない』は「お金は、かけるところを選んでそこにかけよう」という本なのだ。だって女性が本当に10着で着回そうとしたら、小物が欠かせない。「お金をかけるべきはサングラス、靴、バッグ、ジュエリー」であり「質のよいものを」とある。さらに「香水で演出」「高級食器を普段使い」と、シックだが決して「質素」ではない提案が続く。
そもそも著者のアメリカ人女性が手本にしているのは、パリで出会った貴族のマダム。「館」に住んでいたら、服は10着でというモチベーションも保てるよネ、と思う。そして「この10着には上着、ドレスは入れません」。ヤッパリね! もちろんいいこともいっぱい書いてある。印象深かったのは、著者が久々に空腹を感じるシーン。米国では間食まみれだったが、夜中に忍び込んだ貴族の台所につまめるものはなかった…。その後、空腹で食べる朝食の素晴らしさ。本書が教えてくれるのは、クローゼット以上にライフスタイルのスリム化、選ぶ賢さなのだ。
あまりの正反対がおもしろかったので『パークアヴェニューの妻たち』も紹介しよう。N.Y.高級住宅地に住む専業主婦たちのノンフィクション。「外見のために年平均10万ドル(約1300万円)つかう」「陣痛が起きたら病院の前に美容院へ(出産直後の写真撮影に備えて)」など、すごすぎてだれも憧れない常軌を逸したゴージャスライフ。これは真の生きがい? それとも虚飾? それとも病気の一種? そんな妻たちの、愛と友情とは。考えさせられる一冊だ。
- TEXT :
- 間室道子さん 代官山 蔦屋書店コンシェルジュ
- クレジット :
- 撮影/田村昌裕(FREAKS) 文/間室道子