京都の老舗和菓子屋「鶴屋吉信(つるやよしのぶ)」から、ドライフルーツと羊羹を組み合わせた新商品「果の彩(かのあや)」が発売になりました。
羊羹といえば、特に若い世代には、おいしいけれど見た目も味わいも少し地味……というイメージを持っている方もいらっしゃるかもしれませんが、そんな既成概念を覆すようなお洒落な羊羹が「果の彩」です。まるでタブレットチョコレートのような形、そして羊羹とは思えないカラフルな色合いが特徴の、新感覚の和菓子となっています。
そんな新しい羊羹を作ろうと思った理由から、完成に至るまでのエピソードや想いなど、「鶴屋吉信」の開発担当者にお話を伺いましたので、実食レポートとともにご紹介いたします。
和菓子でありながら、従来の和菓子とは異なるものを作りたい!
開発のきっかけは、「和菓子をもっと身近に感じてもらえるよう、日常に取り入れやすい商品を作りたい」という想い。
あくまでも「和菓子」でありながら、自宅でのお茶の時間にはもちろん、ちょっとした手土産やお返しなどのカジュアルギフトにもおすすめできるようなものを……ということで、商品の形やサイズ感の検討から始まったそう。
「伝統的な羊羹のイメージからは異なるものが作りたいという想いから、いわゆる羊羹の棹型である、ひとつに繋がった大きなものから脱却した形、毎回切り分ける必要がない、片手でも召し上がれる、食べきりサイズでお気軽に……といった視点から考えました。
弊社の『鶴屋吉信ようかん』など、『小型羊羹』と称される長方形の棒状の商品が既にございますが、それとは別に弊社の商品で今まで扱ったことのない形をと考えた結果、洋菓子では一般的な『タブレットチョコレート』から発想を得ました。
可能な限り薄く、お召し上がりやすいサイズ感、そしてタブレットのように平たく成形することで素材を広げて並べることができ、見た目にも華やか、かつ羊羹のイメージとはかけ離れた意外性を持たせられるのではないかと考えたのです」(開発担当者)
一見、洋菓子のようにも見えるギャップから、和菓子に馴染みの少なかったお客様にも手にとってほしいという願いも込められているそうです。
羊羹のおいしさは絶対!苦労したのは、風味を損なうことなくアイデアを形にすること
おいしくあることが最重要のため、おいしさや風味を大切にしながら、いかにアイデアを形にしていくかという点に一番苦労したといいます。
「当初はドライフルーツの他に、カシューナッツやアーモンド等のナッツ類のみを使った風味も数種類考案していましたが、羊羹との相性を考えてドライフルーツと少量のナッツをアクセントにすることにしました。
また、今回の商品ではドライフルーツならではのサクッとした食感を維持したかったのですが、羊羹はチョコレートに比べて水分が多いため、素材を羊羹に混ぜ込むと水分がしみこむほか、賞味期限などにも影響が出てしまう課題がありました。
悩みましたが、平たく成形した羊羹が固まる直前に、ひとつひとつ手作業で素材を加えていく方法を採用しました」(開発担当者)
人の手によって行うことで、素材を傷めず、かつデザイン通りに完成させることができる「果の彩」。試行錯誤の末完成した、3種のフレーバーをご紹介します。
カラフルで華やか!「果の彩」3つの風味
■1:ほんのりピンク色が可愛い「うすべに」
ほんのりとピンク色に染めた紅羊羹(べにようかん)の上に、白いスリコハク羹を重ねて二層になっている「うすべに」。
いただいてみると、いわゆる羊羹らしい柔らかさの紅羊羹に、シャリッとした食感のスリコハクが合わさってとても新鮮。甘酸っぱいドライいちごの風味と香りが口のいっぱいに広がり、爽やかな後味です。
■2:チョコレートを練り込んだ羊羹「しょこら」
クーベルチュールチョコレートを練り込んだ、なめらかなチョコレート風味の羊羹に、クランベリーといちごが合わさった「しょこら」。
一瞬、見た目からもビターなショコラ風味からも「チョコレート?」と間違えそうになりますが、和菓子特有の優しい甘みからしっかり羊羹を感じることができます。いちごやクランベリーのほどよい酸味が加わり、これぞ和菓子と洋菓子の「いいとこ取り」のお味です。
■3:柑橘系のほろ苦さがくせになる「だいだい」
白あんをベースとした、やわらかい甘さの白羊羹に、国産オレンジのドライフルーツと国産甘夏柑のドライピールがあしらわれた「だいだい」。
とてもシンプルな組み合わせですが、大きめのドライフルーツは存在感抜群。また、2種類の柑橘が使われていることで、奥深い味わいを感じられます。柑橘独特のほろ苦さがくせになる、大人好みのテイストです。
3種類のフレーバーは、鶴屋吉信を象徴する「のれん」の紺色をイメージした、高級感あふれる化粧箱に入っています。贈る相手の年代を問わない上質な手土産として、さまざまなシーンで手に取りやすそうですね。
「果の彩」という商品名を決めるにあたって、「彩(あや)」には、「綾(あや)」の音をかけたのだそう。
「『綾』は『綾絹』など、布が織りなされた様子を意味することから、羊羹と果実が重なり合っている様子をなぞらえながら、京都らしさ、鶴屋吉信の本店があり馴染みの深い西陣織などの和の文化の意味を込めました」と担当者は話します。
老舗の想いがたくさん詰まった新たなおいしさを、ぜひ味わってみてはいかがでしょうか?
問い合わせ先
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- WRITING :
- 篠原亜由美
- EDIT :
- 小林麻美