できる女性を目指すなら、さっそうと仕事をこなすことに加え、言葉づかいや人との接し方でも周囲の人たちに好印象を与えたいもの。

そんななか、ビジネススキルでの悩みの1位に「話し方」があがる現代にも関わらず、上手にコミュニケーションを取りながら好印象を与える話し方は、意外と誰も教えてくれません。

そこで、大東文化大学文学部准教授で、『頭の中を「言葉」にしてうまく伝える。』著者の山口謠司さんに、相手の心を惹きつけ、習慣にすると会話が弾む話し方のコツをお聞きしました。

■「事実の羅列だけ」話すと、知性が低いと思われやすい

「やばい」も要注意

まず、山口さんは、「人に伝えたい思いが、きちんと言葉になっているのか。そのための適切な言葉を使っているのか」に注目しています。

「新しい取引先との打ち合わせまでに準備する資料が、予想していたよりも大量になってしまって驚いた」と口にしても、あくまでも主観的事実に過ぎず、会話としても奥行きに欠け、知性を感じる言い回しにはならないと指摘します。「用意すべき資料が多いので、もっとデータベース化して、次回からはシステマチックにすべきだ」などと、自分の思考をきちんと言語化しなければ、相手にとって魅力的な会話にはならないそうです。

ところが、近年では、多くの社会人が自分なりの思考を言語化しようとしなくなり、その手前の単なる事実の羅列だけを話す人が多くなっていると警笛を鳴らします。前述の「新しい取引先との……」のほかにも、「今年の夏はかなり暑くなるらしい」、「LCC便を利用すれば、海外にもかなり安く行けるみたい」など。そして、「それで」と続きを促しても、「やばい」や「行きたい」のひと言で終わってしまうとも。

山口さんは、そのような話し方をしてしまうことの原因は、語彙力の乏しさにあると分析しています。なんでもかんでも「やばい」でこと足りてしまう言語文化もありますが、それはあくまでも気心の知れた仲間内でのこと。

「大人同士の会話で、そんな甘えた話し方をしていては相手にしてもらえないでしょう。また、知性も教養も低く見積もられるので、仕事相手を不安にしてしまいます」

確かに、知性ある女性としては、もっと別の話し方をしたいですよね。

■語彙力の乏しさは「文字の形を見る」と解決できる!

言葉の本来の意味を知ろう

山口さんは、「異なる世代、異なる背景を持つ人にもきちんと伝わる言葉づかいをするためには、常日頃から語彙を豊富にしておかなければなりません」とアドバイス。そして、語彙力を身につけるには、暗記よりも「文字の形を見る」ことが有効だといいます。

例えば、「感動」という言葉。「感じて、心を動かす」という意味は容易に想像がつきますが、もともとは「心」のない方の漢字で「咸動」と書き、「ハッと驚いてしまって、言葉が出ない」という意味だったそう。それに「心」がつき、「よっぽど心を動かされるような出来事があって、実際に心が動いてしまう」という言葉になったそうです。

「私たちは記号のように言葉を使ってしまっていますが、『有難いと思うから、有難いと言う』という意味を知ったうえで、『ありがとう』と口に出せば、人を感動させたり、人の心を読み取ったり、心を伝えられたりするのではないでしょうか。言葉の本来の意味を知って、語彙力を身につけてほしいと思います」

※「有り難い(ありがたい)」は「有ること」と「難い(かたい)」が組み合わさった言葉で、滅多にないこと、珍しくて貴重なこと、を意味する

漢字が持っている本来の意味と成りたちを理解すれば、言葉を本当の意味で使うことができるようになれそうですね。

そしてその語彙力は、雰囲気を想像できるように使うといいとのこと。

「例えば、誰かを食事に誘うときに、『お寿司を食べに行かない?』というよりは、『お寿司をつまみに行こうか?』とか、『ちょっと、お寿司をつまみたくない?」と誘ってみると、誘われた方も、お寿司をつまんでいる雰囲気を想像できます。昔ながらの食べ方や味も残っていますので、会話が弾むのではないでしょうか」

確かに、そう誘われたらと、思わず「つまみたい!」と答えますよね。また、食事中は人が使わないような言葉を意識すると会話が弾みやすいそうです。

「食事中も、何でもかんでも『おいしい』で片づけてしまわずに、人が使わないような言葉を意識して使ってみるとよいと思います。ソムリエの方は言葉づかいが上手なのですが、ワインを飲んでいるときに、例えば『赤になりきっていないような味がしますね』と告げれば、『どんな感じ? 詳しく教えて!』と会話が弾みます」

ソムリエや料理人などの言葉の使い方を参考にしてみるのも楽しそうですね。

■会話の冒頭で「季節の言葉」を使うと心が通わせられる

季節の話は共感されやすい

また、山口さんは、会話では、冒頭の言葉を工夫することを提唱します。

人は第一印象に左右されるといいますが、会話でも同じだそうで、「よし、この人と、この話題の土俵に一緒に乗ってみよう」と感じなければ、有意義なものにはならないと山口さん。

そんな山口さんは「会話では、ほわっとさせるような言葉が一番、大事だと思います」

「お勧めなのが、会話の冒頭に季節の言葉を入れることです。まず、『急に寒くなりましたね』や『雨が続きますね』などの言葉を入れてあげると、相手が温かみを感じたり、『自分のことを考えてくれているのだな』と感じてうれしくなったりします。

あるいは、『いい季節になりましたね。こう気候がいいと、どこかに出かけたくなりますよね』といえば、相手もワクワクする気持ちになり共感が生まれます。会話は心を通わせるために行うものですから、季節の言葉を使ってみたりするとよいのでは」

また、管理職の女性が部下の女性社員をお茶に誘うのなら、「ちょっと寒いから、温かいものでも飲みに行こうか?」と声をかけるだけで、「ちょっと、お茶しない?」だけでは伝わらない、心の通い合いというものが生まれるのではと教えてくれました。

 

以上、話し方が下手な原因と、知性を感じさせる言葉の使い方のコツを紹介しました。

人間関係の悩みは尽きませんが、話し方をちょっと工夫するだけで、心の通い合いが生まれ、今よりももっと上手なコミュニケーションが取れるようになるかもしれません。部下や同僚だけではなく、他部署の人や、取り引き先の方からも「あの人の話し方、素敵だと思わない?」と好意的に受け止められれば、仕事でもますます輝くことまちがいなし。さっそく、チャレンジしてみてはいかがでしょう。

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PROFILE
山口謠司(やまぐち ようじ)さん
大東文化大学文学部准教授。1963年長崎県佐世保市生まれ。博士。大東文化大学大学院、フランス国立社会科学高等研究院大学院に学ぶ。ケンブリッジ大学東洋学部共同研究員を経て現職。専門は、書誌学、音韻学、文献学。1989年よりイギリス、ケンブリッジ大学東洋学部を本部に置いて行なった『欧州所在日本古典籍総目録』編纂の調査のために渡英。以後、10年に及んで、スウェーデン、デンマーク、ドイツ、ベルギー、イタリア、フランスの各国図書館に所蔵される日本の古典籍の調査を行なう。
『頭の中を「言葉」にしてうまく伝える。』山口謠司・著 ワニブックス刊
この記事の執筆者
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WRITING :
竹内みちまろ