毎日オフィスに通うという生活から、家で過ごす時間が増え、働き方や暮らし方そのものが変わった今、「リーダー」に求められるものも大きく変化しています。

最新『Precious』4月号では、特集「変化の先に続く新しい日々は、ジャケット、ドレス、ときどきスニーカー」にて、女優・西田尚美さん演じる新しい時代の女性リーダー像をご紹介すると共に、キャリア女性たちへのインタビューを掲載しています。

チャーミングに周りを照らし、アクティブに自らのおしゃれと生き方を発信する。心を惹かれるのは、魅力溢れる女性リーダーたちが牽引する新時代のエレガンス!

きっと、多くの部下をもつプレシャス世代の女性たちが、次に目指すべきひとつのお手本になるはずです。

■1:エレガンスは人に敬意を払うこと。それこそが、新リーダーの資質と考えます|ショーメ ジェネラル・マネージャー 蒲谷直子さん

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様々な意見を取り入れ、有機的なチームづくりのできるリーダーが求められている。

時代がドラスティックに変化している今、リーダーに必要とされているのは「多様性に対して理解を深める姿勢」だと感じています。

今はいろいろな人がさまざまな価値観をもち、その意見を個々で発信できる時代。だからこそ引っ張るのではなく、さまざまな価値観を受容する。「ついてきて」と背中を見せるのではなく、「どう思う?」と耳を傾ける。そんなリーダーが求められていると思うのです。

私自身、自分への諫めとして「違和感」をとても大切にしています。例えば人は、自分の常識を超えた意見を「それは違う」と排除してしまいがちですよね。でも一瞬立ち止まり「どういうこと?」とその声をすくい上げてみる。するとその先に、自分だけでは決してたどり着かなかった、新しい世界が広がっていることがあります。異なる価値観は、未来の扉を開く鍵となりうるのです。

すると大切になってくるのが、有機的なチームづくりです。内外のネットワークを広げることはもちろん、才能溢れる人々が夢を見られる、そして能力を発揮できる環境を整えることも、リーダーの役目だと感じています。

蒲谷 直子さん
ショーメ ジェネラル・マネージャー
(かばや なおこ)LVMHウォッチ・ジュエリージャパン 株式会社 ショーメ 取締役 ジェネラル・マネジャー。東京大学法学部卒業後、外資金融 M&A部門アナリスト、外資コンサルティング会社コンサルタントを経たのち、「カルティエ」「ルイ・ヴィトン」「デビアス」にて企画、リテール、マーケティング、デジタルなどの職務を担当し、現職に。趣味は、子育てをしながら息子とともに始めた剣道。現在は四段の腕前に。ほかに水墨画をたしなむなど、多趣味で多才。

詳細記事はこちら:【新しい時代のリーダー像とは?】「ショーメ」ジェネラル・マネージャー 蒲谷 直子さんにうかがいました


■2:「複眼的な視点」で世界を見渡す、その姿勢がチャンスとなる時代です|建築家 松岡恭子さん

キャリア_2,インタビュー_2
変わりゆく時代の中、複眼的な視点で世界を見つめてみる。

福岡を拠点に活動する建築家として今考えていること。それはこの時代は大変なことが山積みだけれど、大きなチャンスでもあるということです。約30年のキャリアを積んだ人間として、何百年に一度という転換期に現役でいられたことに心から感謝しているのです。

そこで心掛けているのが「勇気をもつこと」、そして「手を携えること」。「どうなるか」と不安を抱えるのではなく、「どうするか」を具体的に決める。それがたとえ仮説や疑問の提示だとしても、それを実験し、検証する勇気が必要だと感じています。

また建築家とは、オーケストラの指揮者のようなもの。異分野の声を聞き、まとめ上げるのは得意とするところですが、それは懸命に働き続けてきたプレシャス世代の女性ならば、同じように感じているのではないでしょうか。

今こそ、人と人を繋ぐ架け橋となり、その化学反応を楽しみながら、次の世代へとバトンタッチする。この頃は、そんな人生のシーズンにたどり着いたことを実感しているのです。

松岡 恭子さん
建築家
(まつおか きょうこ)九州大学工学部卒、現・東京都立大学大学院、コロンビア大学大学院修士課程修了。コロナ禍がもたらす社会変化への危機感から、福岡の都心を九州の文化発信ハブとする社会実験「One Kyushu ミュージアム」を発案。食や伝統工芸などの多彩な専門家を迎え、総合プロデューサーとしても活動中。建築設計事務所「スピングラス・アーキテクツ」の主宰者であり、総合不動産会社「大央」の2代目として社長を務める。美食家であり、愛猫家でもある。

詳細記事はこちら:建築家 松岡恭子さんに聞く、これからの時代の働き方について


■3:自分の内側に「多様性」を発見する、そんな旅路を楽しんで見ませんか?|ジャズピアニスト・数学教育者 中島さち子さん

インタビュー_3,キャリア_3
様々な分野に触れ、自分の中の多様性を発見する。

私は今、科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、アート(Art)、数学(Mathematics)の頭文字を組み合わせた「STEAM」という教育プロジェクトに携わっています。

…というと難しく聞こえるかもしれませんね。ジャズピアニストであり、数学教育にも携わる私だからこそ、実感を込めてお伝えしたいのですが、これらは複雑に絡み合っていて、人はそのすべてを内側にもっているのです。

大人になり、今は触れることのない分野でも「おもしろそう」と思ったら、そこに針を落としてみませんか? そのときは「Learn Science(科学を学ぶ)」ではなく、「Think like a scientist(科学者のように考える)」という姿勢でいるのはどうでしょう。要は難しく考えなくてOKということ。

複数の領域に針を落とすうち、共通する何かが見えたり、それらが繋がる感覚を味わったり…。遠い世界ではなく、自分の内側で「多様性」が起きていることを実感できると思うのです。

そんなふうにして「人の心に火をつけられるかどうか」。これからのリーダーシップには、そんなことが必要だと感じています。

中島 さち子さん
ジャズピアニスト・数学教育者
(なかじま さちこ)高校在学中に国際数学オリンピックインド大会に出場し、日本人女性初の金メダルを獲得。東京大学理学部卒業後、音楽の道へ。2010年より数学関連活動も再開し、数学や音楽についての講演・ワークショップ活動も開始。2018年より、内閣府「STEM Girls Ambassadors」就任。経済産業省が推進する「未来の教室」実証プロジェクトをはじめ、多様な STEAM 教育プログラム開発を行う。著書に『音楽から聴こえる数学』(講談社)ほか。

詳細記事はこちら:ジャズピアニスト・数学教育者 中島さち子さんに聞いた「未来のリーダーに求められること」

PHOTO :
Getty Images
WRITING :
本庄真穂
EDIT :
喜多容子・古里典子(Precious)