【目次】

睡眠不足がダイエットに与える影響とは?


「睡眠の質は美や健康の質、人生の質といっても過言ではありません。それは、これまで多くの研究が明らかにしています。睡眠の質が高まることで、昼間の主観的な健康感やQOLが高くなることが報告されています。睡眠の質の低下による悪影響は様々ありますが、例えば肌荒れです。肌が再生するには、肌の内部で細胞分裂が起こることが必要で、その細胞分裂は睡眠中に成長ホルモンが分泌されることで促進されるため、いい睡眠が取れないとうまく細胞分裂が起きないのです。あとは、睡眠不足は食欲の中枢を乱して空腹感の増大を招くなど、食べることにも影響します。睡眠時間と肥満の関連は様々な研究結果も出ています」(睡眠コンサルタント 友野なお先生)。また、「睡眠不足だと、食欲を司るホルモンの異常が起き、食欲が増進しやすくなります。また、不規則な生活も同様に、体内時計を乱したり、肥満になるという報告もあります」(フードプランナー/管理栄養士 岸村康代さん)だそう。

 
友野なお先生

睡眠コンサルタント  株式会社SEA Trinity代表取締役

(とものなお)千葉大学大学院 医学薬学府 先進予防医学 医学博士課程にて予防医学の観点から睡眠を研究。順天堂大学大学院 スポーツ健康科学研究科修士。日本公衆衛生学会、日本睡眠学会、日本睡眠環境学会 正会員。 自身が睡眠を改善したことにより、15kg以上のダイエット、さらに体質改善に成功した経験から科学的に睡眠を学んだのち、睡眠の専門家として全国にリバウンドしない快眠メソッドを伝授。 著書に『昼間のパフォーマンスを最大にする正しい眠り方』(WAVE出版)、『疲れがとれて朝 シャキーンと起きる方法』(セブン&アイ出版)など多数。

バナナで快眠!?専門家に聞く、真冬の「睡眠不足」対策とは?

岸村康代さん
フードプランナー、管理栄養士/野菜ソムリエ上級プロ、一般社団法人大人のダイエット研究所代表理事
(きしむら やすよ)大妻女子大学家政学部食物学科管理栄養士専攻卒業後、商品開発、病院での指導などを経て、独立。日本野菜ソムリエ協会ビューティーフードプログラムの監修をつとめる。メタボ指導の現場で10kg減、20kg減という数々の健康的なダイエッ トのサポートをしてきた経験や野菜ソムリエ上級プロなどの資格も活かし、商品開発、講師、執筆、メディア出演など、多方面で活動中。目的別に効率よく栄養を摂る“パワーフードスタイル"を提唱し、商品開発やツール製作なども手がけている。

暴飲・暴食の原因が判明!うっかり「食べすぎてしまう人」が無意識にやっている悪習慣8選

「トリプトファン」を摂取して良い睡眠を促す


睡眠ホルモン分泌を促す、セロトニンを生み出す!

外から上手に摂取することで快眠に導く。
外から上手に摂取することで快眠に導く。

「深い睡眠を促すには、睡眠ホルモンと呼ばれるメラトニンの分泌が大きく関わっています。メラトニンの分泌を促すのが、セロトニンという脳内物質です。セロトニンは、日中、元気でいることや癒しの源となる神経伝達物質です。夜になると脳の松果体でメラトニンに変換されます。このセロトニンを生み出すのが「トリプトファン」という必須アミノ酸です。このトリプトファンは、体内で合成することができず、食べ物から摂取する必要があります。

トリプトファンを摂取し、セロトニンを生み出すことで睡眠ホルモンを分泌させるのが良いわけですが、よりよく眠るためにはトリプトファンを多く含む食材を摂取すれば良いというわけではないのです。トリプトファンの他に、炭水化物やビタミンB6を組み合わせることが重要なポイントとなります。トリプトファンは、乳製品や卵、大豆やナッツなどのたんぱく質に含まれますが、しっかり眠るためにはいも類などの炭水化物と、豚肉や魚類などに多いと言われるビタミンB6を合わせることが必要なので、これらの食材を意識したバランスの良い食事を取れると良いでしょう」(友野先生)。

スーパーフルーツ「バナナ」で簡単に快眠生活!?

トリプトファン、炭水化物、ビタミンB6の3つをバランスよく摂取できる。
トリプトファン、炭水化物、ビタミンB6の3つをバランスよく摂取できる。

快眠を目指し、トリプトファン、炭水化物、ビタミンB6の3つをバランスよく摂取した食生活を送ることができればもちろん良いですが、忙しい毎日で献立を考え続けるのもなかなか心が折れそうなもの。そこで、この3つをバランスよく摂取できるというスーパーフルーツを発見! 昔から食べ続けられているお馴染みのバナナにこんな効果があったと、今、改めて見直されているのです。「バナナは、トリプトファン、炭水化物、ビタミンB6の全てが含まれています。食材それぞれで見ると足りないものがありますが、バナナであればこの3つが揃うため、朝の習慣にすると良いでしょう」(友野先生)。

ダイエットに影響しない睡眠前の「夜食」


太りにくい夜食の選び方

そもそも、なぜ夜食は太りやすいのでしょうか。実は脂肪の蓄積には、糖質を摂取したときに分泌されるインスリンが関係しています。「食べものに含まれる炭水化物が糖に分解され、体内の血糖値が高くなると、血糖値を下げる『インスリン』というホルモンが分泌されます。このインスリンが分泌されると糖が脂肪細胞に取り込まれ、脂肪として貯えられる仕組みです」(ながいさん)。血糖値は通常、食後2時間でピークになり、その後2時間で元の状態に戻ります。つまり食後4時間はインスリン分泌も高くなっている状態。その間にエネルギー消費が行われないと、食べたものの多くが脂肪として蓄積されてしまうのです。

ごはんやパン、麺類といった炭水化物のほか、お菓子や芋類など糖質を多く含む食物は、血糖値の急上昇を招きやすい
ごはんやパン、麺類といった炭水化物のほか、お菓子や芋類など糖質を多く含む食物は、血糖値の急上昇を招きやすい。

インスリン分泌の観点から、「血糖値が上がりにくい夜食」をとることが太りにくくするポイントになります。教えていただいたおすすめの食材や食べ方は以下の通りです。

【1】タンパク質が豊富な食材を選ぶ

豆腐や卵、お刺身などタンパク質が豊富な食べ物がおすすめです。温かいと満腹感が得られやすいため、豆腐なら冷奴よりも湯豆腐を召し上がるといいでしょう。お刺身ならばカツオやマグロが夜食にはぴったり。タンパク質からエネルギーや筋肉・血液を作るために必要な栄養素、ビタミンB6も一緒に摂ることができます。

【2】葉物野菜を選ぶ

「ほうれん草やキャベツなどの葉物野菜も血糖値の上昇を抑えます。特に、栄養価も高いほうれん草は健康にもいいのでおすすめ。簡単につくれるおひたしにしたり、お味噌汁に入れたりしてみては」と、ながいさん。反対に、糖質の多い和菓子やケーキ、スナック菓子などは夜食としてはNG! 夜食として食べるより、夕食後にデザートとして食べた方が血糖値は上昇しにくくベターです。

冷奴よりも温かい湯豆腐の方がダイエット中の夜食にはおすすめ
冷奴よりも温かい湯豆腐の方がダイエット中の夜食にはおすすめ。

睡眠の質を落としにくい夜食の選び方

「寝る2時間前までには食事を終えるように」とよく耳にしますよね。これは食後、食べ物が胃で消化されるまで2〜3時間かかるため。この間に眠りにつくと、体内の消化活動が睡眠を妨げることになるのです。「睡眠は体の機能を休める行為ですから、その間は消化活動の働きは弱くなります。しかし胃に食べ物が残った状態で眠りにつくと、消化活動のために休ませるべき体の機能を動かすことになり、睡眠の質が悪くなるのです。消化不良も起こりやすく、翌朝の寝起きが辛いなどの悪影響が出てきます」(えいよう未来研究所代表 ながいかよさん)。

そんな睡眠への悪影響を抑えるコツは「消化されやすい夜食」をとること。心がけたいポイント4つをお教えいただきました。

【1】加熱されていない食材を選ぶ

加熱されている食材は、生の食材よりも消化に時間がかかります。例えば卵なら、ゆで卵よりも生卵や温泉卵などがおすすめ。生卵は納豆に加えるなどして取り入れてみましょう。

【2】食物繊維の少ない食材を選ぶ

食物繊維が多い食材は健康に良いという印象を抱くかもしれません。しかし、消化されにくく胃に負担がかかるので、夜食には不向きなのだそう。例えば、特に不溶性食物繊維が多く消化に時間のかかる玄米ごはん、ゴボウのきんぴらなどは避けるようにしましょう。

【3】発酵食品を選ぶ

納豆やヨーグルトなどの発酵食品は、体内に入る前からすでに酵素や微生物の働きにより消化の下準備が整っています。そのため、消化に費やされるエネルギーの消費が少なく、胃腸の負担が軽くなります。

【4】ゆっくりよく噛んで食べる

胃に負担がかからないよう、ゆっくり噛んで食べることも大切なポイント。噛むことはストレスを緩和しリラックスにも繋がるため、眠りの質を上げる食べ方とも言えます。

ヨーグルトは無糖のものを選んで
ヨーグルトは無糖のものを選んで。

夜食を食べずに済ませたいなら、1日の食事の仕方の見直しを

ここまで太りにくい夜食のポイントや睡眠に影響しない夜食をご紹介しました。とはいえ、「なるべくなら夜食をとることなく済ませたい!」という方も多いはず。そんな方のために、眠る前にお腹が減らない1日の食事方法についてアドバイスをいただきました。

【1】食事の間隔を4時間は空ける

「夜中にお腹が空く原因は、そもそも1日の食事のリズムが乱れているせいという可能性があります。食事は3食しっかりとり、また食事の間隔は4時間以上空けることを目安としてみましょう。これは前述したように、食後に血糖値が上昇してから元に戻るまでに約4時間かかるためです」(ながいさん)。また、血糖値が戻る前に食事をすると、インスリンの分泌時間も継続することになります。つまり脂肪を蓄えやすい状態が長時間続くことに。結果として太りやすくなることにつながるため、食事のリズムを整えることは美容の面からも重要です。

【2】ダイエット中でも食事の量は減らしすぎない

つい夜食や間食を食べてしまう方には、3回の食事で食べる量が少ない傾向があるそうです。ダイエットを意識して炭水化物を抜いているけど、次の食事までの間にお菓子をちょこちょこ食べている。仕事が忙しくて食事がおろそかになり、遅い時間にお腹が空く…そんな方はこれを機に1日の食生活を見直し、ご自身の体をいたわる食事にシフトしてみてはいかがでしょうか。

ダイエットをしていたつもりが、お菓子を食べてカロリーオーバーなんてことも……
ダイエットをしていたつもりが、お菓子を食べてカロリーオーバーなんてことも……

最後に夕食・夜食時間の過ごし方について伺いました。「夕食や夜食は、質の良い眠りをつくるための準備時間です。体は一日の終わりにリラックスすること、休息することを求めています。ゆっくり疲れを癒し、自分を大切にする時間にしてください」(ながいさん)。夜食は「食べていけない」ものではありません。お腹が空いて寝付けなければ、お刺身やほうれん草のおひたしをしっかり噛んで食べる。残業でもう少し仕事を頑張るためならば温かいお味噌汁に豆腐を入れたものをササっと飲んでみる。ぜひ夜食と上手なお付き合いをしてみてください。

 
 
ながい かよさん
えいよう未来研究所代表、管理栄養士
武庫川女子大学卒業後、病院勤務・料理講師を経て、ヘルスケア企業にて働く人の栄養指導に従事。現在は乳がんクリニックでの栄養指導の他、全国各地にて講演活動を行う。単なる制限指導をするのではなく、その人の生き方に着目し、日常に生かせる理論と実践方を提案する栄養指導は、「楽しい!」「聞いてよかった!」「前向きになれた」と大好評。著書に『仕事で圧倒的な成果を残すハイパフォーマーが実践する飲食の技術』がある。

食べても太らない夜食とは?ダイエットに影響しない「正しい夜食の食べ方&メニュー」

週末の「寝だめ」は睡眠の質を下げる


寝だめはNG!

たくさん寝ても、起きる時間のズレは2時間までに

たくさん寝ても、起きる時間のズレは2時間までに

平日は忙しいから睡眠時間が短めで、週末にたっぷり寝るという人も少なくないと思います。しかし、休日に朝寝坊すると、せっかく整えた体内時計がズレてしまいます。「普段との起床時刻の差が大きくなれば、その分体内リズムのズレも大きくなってきます。休日にたっぷり寝ると、週末は寝つくことのできる時間が遅くなり、さらにリズムを崩してしまいます。睡眠・覚醒のリズムが乱れると、戻すのに3日間くらい必要になり、月曜日からエンジンをかけて頑張るのが難しくなります。社会人の方が体調を崩しやすいのは案外土日が多いんですよ。なので、土日もなるべく普段と同じ時間に起きる、多く寝たとしても、起きる時間の差は2時間以内にしましょう。もしどうしても疲れきっているようなら、昼寝をするのがいいと思います」(リカバリーアドバイザー 福田英宏さん)。毎日の生活・睡眠リズムを大幅に崩さないことも大事なのですね。

福田英宏さん
リカバリーアドバイザー
(ふくだ ひでひろ)機能性アパレルメーカー勤務を経て、現在は休養の普及や啓蒙活動を行っている。プロアスリートをはじめとするスポーツ選手に「リカバリー理論」を指導するほか、休養や健康関連を展開する企業のコンサルティングを手掛ける「疲労回復の専門家」として活動中。睡眠改善インストラクター、温泉入浴指導員などの肩書きももつ。

生活の変化で不眠気味の人へ。睡眠不足が解消できる10のコツ

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。