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スーパーフード・キヌアに含まれる「成分」は?
アンデスの高地に発展したインカ文明を支え、NASAが宇宙食として関心を寄せ、国連も21世紀の地球の食糧事情を救うものとして期待を寄せるキヌア。それはひとえにキヌアが栄養面で見た時に、素晴らしい作物だからにほかなりません。アンデス地方の厳しい環境を生き抜く驚異の生命力、それがキヌアを21世紀を代表するスーパーフードにしています。
具体的に、キヌアの栄養成分と米(精白米)を、文部科学省「食品データベース」より比較した結果を紹介します。
精白米と比較して、キヌアのタンパク質は「2倍以上、カルシウムは9倍以上」
私たち日本人にとっての主食である精白米と較べると、炭水化物はほぼ同じくらい(精白米の方が少し上回っています)ですが、タンパク質は2倍以上、脂質は4倍近くになっています。ミネラルを見ると、カリウムは7倍近く、カルシウムは9倍以上、マグネシウムは8倍近く、リンは4倍以上、鉄は5倍以上となっています。
ビタミンに至っては、B1は50倍以上、B2は10倍以上、B6は3倍以上、葉酸は15倍以上の数値です。
必須アミノ酸を多く含み、良質なタンパク質が豊富なキヌア
優れた栄養成分のなかで、まず最初に注目したいのがタンパク質です。その含有量の多さはもちろんですが、キヌアには、牛乳に匹敵するほど良質なタンパク質が含まれています。
タンパク質は約20種類のアミノ酸からできています。私たちの体を構成する大切な栄養素であることは言うまでもありませんが、約20種類のアミノ酸のうち、9種類のアミノ酸を、私たち人間は体内でつくることができません。つまり、私たちはこの9種類のアミノ酸を食べ物から摂取しなければならないのです。この9種類のアミノ酸を「必須アミノ酸」と呼びます。
一般的に、食べ物に含まれるタンパク質の栄養価を表現するときも、この「必須アミノ酸」を多く含むものを「栄養価が高い」「良質なタンパク質を含む」などと表現します。肉や魚、卵などの”動物性タンパク質”は必須アミノ酸をバランスよく含んでいます。「畑の肉」と言われる大豆も、必須アミノ酸をバランスよく含んでいます。
一方、”植物性タンパク質”は、9種類の必須アミノ酸を含んでいても、一部のアミノ酸の含有量が少ないものが多いのです。ですがキヌアは、9種類の必須アミノ酸をバランスよく含んでいる、稀有な植物なのです。
アミノ酸スコアが高いキヌアは、動物性タンパク質の代わりになれる!?

食べ物から摂った必須アミノ酸を使って体内でタンパク質をつくるには、9種類の必須アミノ酸がすべてそろっていなければなりません。例えば9種類のうち、8種類のアミノ酸が豊富にあって、1種類だけ少ないと、この一番少ないアミノ酸に応じたぶんしか、タンパク質をつくることはできません。せっかく取った8種類の必須アミノ酸の多くは、無駄になってしまうのです。
必須アミノ酸がバランスよく含まれているかどうかを示す数字が「アミノ酸スコア」と呼ばれるものです。豚肉、卵、牛乳、大豆などはアミノ酸スコアが「100」、つまり必須アミノ酸がバランスよく含まれています。
一方、精白米のアミノ酸スコアは「61」、トマトは「51」、りんごは「56」。トマトやリンゴはビタミンやミネラルが豊富で健康によい食べ物ですが、アミノ酸スコアの観点からは、優れた食べ物とは言えません。
キヌアのアミノ酸スコアはと言うと、なんと「85」。魚介類や畜肉には劣るものの、高い数字と言っても間違いないでしょう。必須アミノ酸をバランスよく含む優れた食べ物のひとつで、動物性タンパク質の代わりとなるとも言われています。
グルテンフリーのキヌアはアレルギーの方にも安心
良質なタンパク質、豊富なビタミンやミネラル、特に葉酸は葉ものにも匹敵するキヌアが、最近注目を集めていることがあります。そのひとつがグルテンフリーであることです。グルテンは小麦に含まれるタンパク質で、パンや麺類をつくるときに欠かせない成分ですが、その一方でアレルギーの原因になります。
キヌアは「擬穀類」なので、グルテンを含んでいません。ですから安心して食べることができます。
低GI値のキヌアは、肥満や糖尿病、脳梗塞や心筋梗塞などのリスク緩和が期待できる
GI値、グリセミック・インデックスも最近、注目を集めている言葉です。簡単に言うと、何かを食べた後、血糖値が上昇する度合いを示したもの。具体的には摂取後2時間までに血液中に入る糖の量を表したものです。
「血糖値スパイク」という言葉も登場していますが、食後、血糖値が急上昇すると血管にダメージを与え、肥満や糖尿病、さらには脳梗塞や心筋梗塞などのリスクが高まります。キヌアはGI値が低く、こうしたリスクを下げると期待されています。
植物性エストロゲン(大豆のイソフラボンと同じ成分)が含まれるキヌアは、更年期障害、骨粗しょう症、乳がんなどのなどのリスク軽減が見込まれる
さらに最近、キヌアには女性ホルモン(エストロゲン)に似た植物性エストロゲン(大豆に含まれているイソフラボンと同じ成分)が含まれていることもわかりました。エストロゲンの減少によって起こる更年期障害、骨粗しょう症、動脈硬化、乳がんなどのリスクを減らす効果が見込まれます。また脂質も、そのほとんどがコレステロールを抑える不飽和脂肪酸のリノレン酸、オレイン酸。抗酸化・抗炎症、抗肥満、抗糖尿病効果や皮膚の健康にも寄与することが期待されるなど、文字通り完全無欠のスーパーフードなのです。
食べる時の「注意点」

インカ帝国の繁栄を支えてきたキヌアには、特に目立ったデメリットはありません。唯一、キヌアの種子はサポニンという苦味成分で覆われており、これは脱穀、精製した際にほぼ取り除かれますが、一部、残っている場合もあります。サポニンは水溶性なので、使う前には水で洗ってください。この苦味成分はキヌアが何千年、何万年という進化の中で、鳥や虫などの外敵から、身を守るために獲得したものと考えられています。
おすすめ「レシピ2選」

擬穀類であるキヌアはご飯のように炊飯器で炊く、あるいは茹でて使うのが一般的です。キヌアの種子は苦味成分のサポニンで覆われています。サポニンは脱穀時に取り除かれますが、一部、残っている場合もあります。サポニンは水溶性なので、使う前には水で洗ってください。
またキヌアは茹でると透明になりますが、周りに白い縁取りのようなものが現れます。キヌアの胚芽です。中には寝グセの髪の毛のように飛び出すものもあります。
【1】キヌアライス

キヌアを炊飯器に入れて炊くだけ。炊いている時に、キヌア特有の匂いがすることもありますが、炊き上がるとほとんど気にならないはずです。
【2】キヌアサラダ

茹でて使うのもお勧め。ポテト、海藻、アボカド......。さまざまな食材と一緒にサラダにして食べると、プチプチした食感も楽しめます。
【3】キヌアミネストローネ
パスタの代わりにミネストローネに使うと、グルテンフリーなミネストローネのできあがり。キヌアは水洗いして加えてください。
「アレンジ方法3選」
【1】フライの衣にする
茹でたキヌアをフライの衣にすると、カリッとした食感が楽しめると同時にヘルシーに仕上がります。
【2】パン粉の代わりにする

パン粉の代わりに、ハンバーグに混ぜるのもオススメです。
【3】茹でたキヌアを冷蔵庫でストックする
茹でたキヌアは冷蔵庫で3〜4日間保存できます。茹でてストックしておけば、いろいろな料理に手軽にアレンジできます。
監修者

グルテンフリーのスーパーフード「キヌア」の特徴、タンパク質やアミノ酸の豊富さ、健康作用、レシピ、注意点など
- TEXT :
- Precious.jp編集部