今、世界の女性リーダーが注目され、国内でもその数の増加が叫ばれています。そこで、『Precious』8月号では、各分野で活躍する女性に「決断」をテーマにインタビュー。「女性リーダーのYesの包容力、Noの決断力」と題して掲載しています。
その中から今回は、「女性初」の公立中学校民間人校長を経て、現在は広島県教育委員会教育長を務める平川理恵さんのインタビューをお届けします。
Women leaders 1 ■ 平川理恵さん[広島県教育委員会教育長]
その決断は、子供にとってよいものなのかどうか? これが唯一にして最大の決め手なので、私は迷わない
リクルートの営業からMBA留学、起業を経て未知なる教育界に飛び込んだ平川理恵さん。横浜で民間人として女性初の公立中学校長を務めたのち、49歳のときに広島県教育委員会の教育長に就任。異例の若さと行政未経験での大抜擢は大きなニュースになった。
「私は校長時代、密かに【教育委員会は本当に必要だろうか】と疑問視していたんです。その組織のトップとなるお話をいただいて、それならば、私が教育委員会のあり方を再定義しようと決めたんです」(平川さん、以下同様)
言葉どおり、平川さんは型破りで大胆な決断を次々と行った。従来の内申点を重視した高校入試制度を改革したり、商業高校に新たなカリキュラムを加えたり…。特にコロナ禍では、広島の県立学校に通う生徒全員のグーグルの学習用アカウントを取得し、クラウドサービスを導入。休校となった1か月後にはオンライン対応が整った。【学びを止めないこと】を掲げ、実行までのスピードっぷりも話題に。
「生徒がひとり1台、PC端末をもち主体的に学ぶ時代が来ると確信していたので、コロナ禍となる前から先生たちの研修を行い準備していました。最初は周囲からもそんなの役に立たないといった声もありましたが、コロナ禍後はとたんに賛同が得られて急ピッチで進みました」
誰に対してもはっきりと考えを伝え、決断し、実践していく。強い意志と実行力の裏にあるものはなんだろう?
「これまでも、そして今も、私の決断基準は【誰のために何をするか】です。誰のためにとは、子供のためにであり、彼らが幸せならばすべてよし、問題があるならば全力でサポートするのが私たちの仕事です。そのための決断を行うのが私の役目。よりよい学びを得るために、ここが突破口になりそうだという策が見つかったら【人、モノ、資金】をかき集めに奔走するのが私のやり方です。これからも広島県の教育が少しでもよくなるよう、さまざまな改革を行っていくつもりです」
耳触りのいい政策や机上の空論は大嫌いだと平川さん。コロナ禍前は年間150校ほど視察し、決断したことが実行されているかを見届け、できていないことや気になることがあったら校長ととことん話し合ってきた。
「現場で何が起きているのか、肌感覚で理解していないと、正しい決断はできません。私は現場主義のリーダーでありたいのです」
- WRITING :
- 大庭典子
- EDIT&WRITING :
- 喜多容子(Precious)