年の瀬が近づいてくると、「お歳暮を贈る準備をしなくなくては!」というプレッシャーを感じ始める人もいるのでは? 店頭、あるいはパソコンの前で、さあ選びましょうとなったとき、「正式なルールってこれでよかった?」と迷うことも多いですよね。そこで今回は、覚えておきたいお歳暮の基礎知識を解説。今まで贈る習慣がなかった方はもちろん、毎年贈り慣れているという方も、お歳暮にまつわる基礎知識をおさらいしましょう。

【目次】

【「お歳暮」とは?「意味」と「由来」】

■そもそも「お歳暮」って何?「意味」

「お歳暮」とは、今年一年お世話になった人に、「1年間ありがとうございました。また来年もよろしくお願いします」という気持ちを、品物に託して届ける季節のご挨拶です。

■「由来」

もともと 「歳暮」は「年の暮れ」や「年末」を表す言葉で、俳句の世界では12月の季語になっています。「お歳暮」が現在のように、「季節のご挨拶(贈りもの)」と呼ばれるようになった由来は諸説ありますが、日本独自の習慣として、毎年、年の暮れになると日ごろお世話になっている人に感謝の気持ちを伝えるための「歳暮回り」という行事からともいわれています。「歳暮回り」には何かしらの手土産を持参することが多かったことから、その贈りもの自体を「お歳暮」と呼ぶようになったというのです。


【送る時期はいつが正解?「お歳暮」のマナー】

■お歳暮は、12月初旬から下旬の間に贈るのがよい

冬のギフトとして贈るというイメージが強いお歳暮ですが、正式には、12月の初旬から下旬の間に贈るのが適切とされています。その時期を過ぎた場合は、「お年賀」「寒中御伺」「余寒御伺」と、贈る時期により扱いが変わってしまうので、注意が必要です。冬の季節の贈りものは下記の4つに大別されるので、おさえておきましょう。

・「お歳暮」…12月初旬〜20日ごろまで(最近は、11月下旬から贈り始める方も)
・「お年賀」…元日〜1月7日まで(関東の場合。関西は1月15日まで。地域により時期が異なります)           
・「寒中御伺」…1月8日(関東)・1月16日(関西)〜立春前日(2月3日頃)まで
・「余寒御伺」…立春(2月4日頃)から2月末日まで

■どんなものを贈ればいい?

お歳暮として贈るのは、食料品が一般的です。というのも「お歳暮」の成り立ちについて、他家に嫁いだ娘が、正月の歳神様に供える新巻鮭や鰤(ぶり)などの祝い肴を実家に贈った風習が残り、現在のお歳暮になったという説もあるのです。また、戦前は、神棚にお供えする米や餅、酒などをお歳暮としていたともいわれています。昔からの習わしで食料品中心の品揃えが多いですが、食料品以外を贈ってももちろん大丈夫です。一方、お年賀として贈るのであれば、干支をあしらったタオル、手ぬぐい、置物などのお正月を想起させるギフトや、菓子折りなどを手土産にする方が多いとされています。

■お歳暮を贈るべき間柄は?

お歳暮には「この間柄の人に絶対に贈らなければならない」という決まりはありません。仕事関係でお世話になっている方、会社の上司、親戚や感謝の気持ちを伝えたい方へ、年末のご挨拶として贈る習わしです。近年では、社内の儀礼が禁止されている企業もありますし、社外の相手にも個人で贈るという状況は減少しているのが現状ですが、個人的に、離れて暮らす両親やお世話になった人に贈りものを届けるのは、素敵な習慣ですよね。

注意したいのは、喪中の場合です。親族が鳴くなttから49日間までは「忌中」といって、ご供養などに専念し静かに過ごす期間とされているため、相手側、自分側のどちらかが忌中の場合には贈答品は控えます。この期間が過ぎてから、贈る時期に合った季節の挨拶の表書きを使うとよいでしょう。

■お歳暮をいただいたら、お返しはどうする?

お歳暮は相手からの感謝の気持ちでいただくもの。そのため、基本的にお返しは不要と言われています。ただし、お礼状はできるだけ出すように心掛けましょう。もしお返しをする場合は、贈る時期の季節の挨拶の表書きをつけて、いただいた品の半額程度の品を贈るのが適切とされています。とはいえ、お返しをするしないの判断は、相手との関係によって変わります。


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■贈答アイテムの人気ランキングは?

「今年は何を贈ろう…」と迷っている人のために、参考例として、郵便局のネットショップで人気の「もらってうれしい人気お歳暮ランキング」をご紹介します。

第1位……洋菓子
なかでも人気なのは、「日持ちがよいもの」「個包装のもの」なのだそう。

第2位……海鮮・水産加工品
いくらや明太子、かまぼこといった海鮮・水産加工品は根強い人気が。お正月には人が集まる機会も多いため、豪華に見える海鮮食材は喜ばれます。

第3位……果物・野菜・農作物
近年、野菜価格の高騰から、新鮮な野菜の詰め合わせがお歳暮として人気です。また、今年の夏の「米騒動」以降、価格が上昇したお米も、喜ばれそうですね。フルーツは熟すのが早いため、お歳暮を宅配で送る際は、事前に相手に連絡をしたうえで発送するのがマナー。気を付けてくださいね。

第4位……お肉・ハム
しゃぶしゃぶ用、すき焼き用の高級和牛は毎年ランキング入りする定番品です。「お歳暮のハム」に季節の風物詩として、懐かしいイメージをもつ人もいるのでは。

第5位……和菓子
日持ちがする和菓子は特に目上の方へ贈る御歳暮の鉄板アイテム。

■予算の相場は?

お歳暮にかける予算は、3,000円~5,000円くらいが相場。価格が高すぎると相手にも気を使わせてしまうので、明らかに高価だとわかる贈答品は避けるのが無難です。特にお世話になっている人であっても、1万円を上限として選ぶのが適切だと言われていますよ。 目上の人に高価すぎるものを贈るのは失礼にあたりますし、高額な贈りものは負担と感じる人が多いためです。

■表書きは必要?

近年、贈答品には熨斗(のし)と水引(みずひき)が印刷された熨斗紙を使う場合がほとんどですね。熨斗紙の上段には、贈る時期に合わせた、「お歳暮」や「お中元」などの表書きをつけるのが一般的。下段に少し小さめの文字で贈る側のフルネームを書きましょう。

■「お歳暮」と「お中元」の違いは?

「お歳暮」と「お中元」は、どちらももともとは祖先の御霊を祭るためのお供え物を贈る行事です。大きな違いは、贈る時期。「お中元」はざっくり言えば「夏」に贈りますが、「お歳暮」は年末。また、「お中元」は新年から夏頃まで、半年間の感謝を表しますが、お歳暮は1年間の感謝を品物に込めて贈ります。傾向としては、「お中元」よりも「お歳暮」のほうが、やや高額商品が選ばれるようですよ。

■「お歳暮」とコンプライアンスの関係

コンプライアンスとは、法令を遵守するための「社会的ルール」「企業としてのルール」。コンプライアンスが重視される近年、特に「お歳暮」を「賄賂」と受け取られてしまう可能性がある、政治家や公務員への贈りものは、控えたほうが賢明です。また、会社の上司に対しても、近年でも社内での「お中元」「お歳暮」などを含む贈りものを禁止している会社もあるので、事前に会社のルールを確認したほうがいいかもしれませんね。

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「お歳暮」は、12月初旬から中旬くらいにはお届けするのが、近年のマナーです。ということは…今すぐ準備をはじめるのが賢明です! 「懐かしいあの方はお元気かしら…?」と、先方のお顔を思い浮かべながら、あれこれ迷いつつ「お歳暮」を選ぶのも、楽しい行事ではないでしょうか。

この記事の執筆者
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WRITING :
松崎愛香
EDIT :
高橋優海(東京通信社)
参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /【マナーと常識事典】(現代用語の基礎知識2007年版付録)(自由国民社) :