「いつも雑務に追われて残業ばかり」「努力のわりには成果が上がらない」

これらは、多くのビジネスウーマンが抱える悩みでしょう。仕事の効率を上げてパフォーマンスを高めるには、何が必要なのでしょうか? やる気や努力、根性……。日本人が大好きなこれらの要素は、実は仕事の効率や生産性とはほとんど関係ないのだそう。

では、具体的にはどうすればいいのでしょうか? 『効率・時間・スピード すごい習慣力』の著者・冨山真由さんから、行動科学にもとづいた方法をご提案いただきました。3種類のよくある仕事の悩みを、どんな習慣で劇的に改善できるのか?ご紹介しましょう。

■1:作業するときは「25分集中したら5分休む」

 
 

人とコミュニケーションを取るのは得意だけれど、書類作成が苦手。プレゼン資料や報告書など書類の作成をつい後回しにしがちで、いざ作成に取りかかっても、なかなか作業が進まないまま時間だけが過ぎてしまいがち。

もっと集中力を高めたい、持続させたいと常々願っているものの、具体的な方法はわからない……。この場合、一体どうすればいいのでしょうか。

「残念ながら、私たちが集中力を持続させる方法はありません。また、やる気や意志の強さと、集中力の持続に相関関係はありません。集中力が切れかけているのに、無理して頑張り続けたとしても、思うような成果は望めず、効率が悪くなるだけでしょう。

生産性を上げるには、規則的に小休憩をとることが大切です。集中力に関する研究では、『30分1セット(25分の作業+5分の休憩)』にするのが効率的だとされています。25分なら誰でも集中力が続くからです」(冨山さん)

この30分を1セットにする方法の源流は、1992年にフランシスコ・チリッロ氏が開発したタイムマネジメント手法「ポモドーロ・テクニック」にあるようです。具体的な方法は以下のとおり。

(1)やるべき作業を決める。
(2)タイマーを25分でセットする。
(3)タイマーが鳴ったら手を休め、どこまでやったかを記録する。
(4)5分間の休憩をとる。
(5)1~4を1セットとし、4セット(2時間)終わった時点で、長めの休憩(15分~30分)をとる。

これを繰り返すだけです。ちなみに、冨山さんによれば、とりあえず「25分だけやる」と決めることで、面倒な作業、苦手な作業を先延ばしにする悪癖を予防する効果もあるとのこと。

また、(3)のどこまでやったかを記録するというのは、単位時間あたりに自分がどれくらいの作業ができるのか?把握するのに役立ち、また成果を見える化することで、自己肯定感を高めることにもつながるといいます。

苦手な作業を後回しにしがちな人、集中力の持続のなさが悩みの人は、ぜひ「ポモドーロ・テクニック」を実践してみましょう。

■2:「どの作業に時間を奪われているのか」を特定し、無駄な仕事を減らす

 
 

いつも丁寧な仕事を心がけており、「とにかく真面目」だと定評はある。ただ、どの仕事も完璧を期するためか、作業に時間がかかってしまい、定時に切り上げられる日が週に一度あるかないか……。

もっと効率よく仕事をしたいと常々願っているものの、具体的な方法はわからない。この場合、一体どうすればいいのでしょうか。

「完璧主義で真面目な女性ほど、無駄な仕事に時間をとられすぎている可能性があります。たとえば、見積もり書や請求書は、一度テンプレートをつくってしまえば、以後は必要な部分だけ書き換えれば済むのに、毎回イチから作成してしまう。

また、整理整頓が大事だからといって、PCのフォルダを細かく分類した結果、かえって必要なファイルを開くのに時間がかかってしまう。

こうした非効率な作業に時間を奪われていると、やってもやっても終わらない状態となり、また、そんな自分に自己嫌悪するという悪循環にも陥りかねません。無駄を省くためにも、自身の業務を見える化することがとても大切です」(冨山さん)

自分にとって無駄を減らし、仕事の効率を高めるための手順は以下のとおりです。

(1)ムダの見える化:「1日の行動予定」と「実際の行動結果」を比較し、予定以上に時間がかかっていた仕事をノートに書き出す。
(2)犯人の特定:(1)で書き出した仕事をいくつかのプロセスに分解し、どのプロセスに時間がかかっているのか計測する。
(3)ピンポイント行動:時間のかかっているプロセスについて、対策を考える。

各手順について、以下でもう少し具体的に解説します。

まず、(1)ムダの見える化ですが、ただ漠然と「時間が足りない」と悩んでいるだけでは、仕事の効率は上がりようがありません。予定と結果を目に見える状態で比較して、どの仕事に時間を奪われているのか?大まかにつかむことが大切です。

次に(2)犯人の特定ですが、たとえば(1)の作業で、メールでの日報作成に時間がかかっていることが判明したとします。この場合、メールでの日報作成という業務を、1日の仕事内容を思い出す→気づきを整理する→文章を作成する→修正する→上司に送信とプロセスに分解し、どの工程で時間がかかっているのか、計測してみましょう。これで、時間泥棒の犯人がよりクリアになります。

最後の(3)ピンポイント行動とは、行動科学で成果につながる行動のこと。たとえば、(2)において1日の作業内容を思い出すに時間がかかる人は、仕事が終わるたびに箇条書きにする。気づきを整理するのが苦手な人は、一区切りつくたびに、気づきをボイスレコーダーに吹きこんでおく…などが、ピンポイント行動にあたります。
ピンポイント行動がどうしても思いつかない場合は、その作業が得意な人を観察したり、その人に相談したりしてもよいでしょう。

見える化と分類によって、ムダを洗い出し、その改善をはかる。日々漫然と業務にあたるのではなく、上記のステップで効率化をはかりましょう。

■3:あらかじめ「10分、30分でできること」を考えておき、隙間時間を有効活用する

 
 

営業成績がよく、数多くの顧客を抱えている。ただ、自分のタスクやスケジュールはそつなくこなしているものの、取引先から急に打ち合わせ時刻変更の連絡が入ったり、商談相手の到着が予定より遅れたりなど、顧客の都合で、やたら隙間時間が生じてしまいがち。

時間のロスさえなければ、もっと自分のやるべきことや、やりたいことができるはず。この場合、一体どうやって時間を有効活用していけばいいのでしょうか。

「仕事ができる人ほど、隙間時間の活用が上手です。相手の都合で変更が生じたことに怒りを覚える気持ちもわかりますが、隙間時間にやるべきこと、やりたいことを手帳などにリストアップしておきましょう。

準備をしておけば、隙間時間ができたときに手持ち無沙汰になることがありませんし、また隙間時間の原因をつくった相手に対する怒りの感情が緩和されます。

たとえば、好きな作家の本を読むなど、リストアップしたやりたいことに隙間時間をあてるようにすると、相手の遅刻なども”ラッキー”に感じられるようになってきますよ」(冨山さん)

隙間時間の活用はすでに心がけている人もいるかと思いますが、より仕事の効率化をはかるべく、次のことも実践してみましょう。

(1)10分用、30分用、1時間用と3段階に分けてリストを用意する

3段階に分けて、やるべきこととやりたいことをリストアップしておくことで、どんな事情にも対応しやすくなります。また、仕事上のやるべきことだけでなく、プライベートでのやりたいことも織り交ぜておくのが、隙間時間をより楽しむコツです。

(2)自分のあらゆる業務を細分化することを意識する

上記のリストアップでは、思いつく限り書き出すことをおすすめしますが、いざやってみると、「意外と隙間時間でできることがない」という人もいるかもしれません。

その場合は、習慣2でやったように、自分のあらゆる業務のプロセスを分解して、隙間時間のリストに加えられないか検討してみましょう。

たとえば、企画書の作成というと、腰を落ち着けて行う業務のようなイメージもありますが、細かく分解すると、情報収集やアイディアを考えるなどのプロセスは、出先での突発的な隙間時間に回すことも可能です。

こうした観点からも、業務の細分化や各プロセスにかかる時間の計測は、仕事の効率化に欠かせないといえるでしょう。

「どうせ自分は要領が悪いから」などと、あきらめるなかれ。今回ご紹介した3つの習慣は誰でもすぐに実践できるものばかりですので、ぜひ日々のパフォーマンスを向上させるのに役立てていきましょう。

冨山真由さん
一般社団法人行動科学マネジメント研究所コンサルタント
(とみやま まゆ)株式会社ウィルPMインターナショナル行動科学マネジメント公認チーフインストラクター。行動習慣コンサルタント、行動定着コーチ。現在、日本では数少ない女性の行動科学マネジメント公認インストラクターとして、企業の若手社員から管理職まで幅広い層を対象に、セルフマネジメント研修を年間120回ほど行っている。
『効率・時間・スピード すごい習慣力』冨山真由・著 三笠書房刊
この記事の執筆者
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WRITING :
中田綾美
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