激動の時代に選ばれる価値のある真のラグジュアリーウォッチとは何か?時計業界の2021年を総括!

2021年に発売されたラグジュアリーウォッチから珠玉の逸品を選出する『Precious WATCH AWARD』が、『Precious』1月号にて発表されました。4年目を迎えた今回は、「MEN'S Precious WATCH AWARD」も合同開催。

独自の審美眼をもつ5人の審査員が、あらゆる観点で熟考&吟味を重ね、変化の時代に男たちが選ぶべき時計を決定しました。

数多くの時計が世に送られた2021年。時代の流れが大きく転換するなかで、我々が時計を見る目は変わったのか。今年、審査員の心を揺さぶったノミネート作、受賞作を通じて、ラグジュアリーウォッチの価値について考察します。

「MEN'S Precious WATCH AWARD 2021」審査員

並木浩一さん
桐蔭横浜大学教授・時計ジャーナリスト
(なみき こういち)出版社勤務を経て、京都造形芸術大学大学院 にて博士号を獲得し、研究者の道へ。人間が行う「静」の表現として時計を探究する一方、「動」の表現としては、ダンスを研究。スイス取材経験も豊富。独自の切り口で時計誌への寄稿も多く、時計に関する著書も多数。
マーク・チョーさん
「アーモリー」、「ドレイクス」共同代表
モダンとクラシックを融合させた自在なスタイリングが支持されるファッショニスタとしてもさまざまな媒体で活躍中。ヴィンテージから現行品まで、時計の知識は豊富。自身のスタイルにマッチするシンプルウォッチを数多く所有する時計愛好家としても有名。
平山祐介さん
俳優・モデル
(ひらやま ゆうすけ)脱サラののちに一念発起してメンズモデルの世界へ。パリコレクションなどのランウェイを経験したのち、さらに俳優の世界にも飛び込み、二足のわらじで活躍中。時計好きとしての一面ももち、機械式からカジュアルウォッチまで、幅広い時計を所有する。
関口 優さん
『HODINKEE JAPAN』編集長
(せきぐち ゆう)全国版の時計誌編集長を経たのちに、世界的な人気を誇る海外時計メディアの日本版『HODINKEE JAPAN』の立ち上げを機に現職に。時計の専門的な知識をベースにしたコーディネートも支持される。また、インスタライブやイベントなどでも活躍中。
守屋美穂
Precious/MEN'S Precious編集長
(もりや みほ)小学館入社後、27年にわたり女性ファッション誌の編集や新媒体の立ち上げに携わる。ファッション、美容、ライフスタイルまで幅広い分野に精通。2020年よりMEN'S Precious編集長も兼任。時計に関しては、スケルトンウォッチに注目している。

「語れる時計、トーキング・ピースに注目です」並木浩一

ブレゲのダイヤモンドウォッチ
左/名作と呼ばれる『マリーン』は、チタンをまとうことで日常使いできるラグジュアリーを表現した。右/視覚的にも華やかなダイヤモンドウォッチは、今回、急遽新設された注目のカテゴリー。

時計を取り巻く環境がここ数年でがらりと変わるなかで、2021年も非常に多様な時計が登場した。だからこそどのポイントに着目するかで、時計の見え方は変わってくる。

その点で特に気になるのは、行動が制限されるなかで、ユーザーたちが、時計店に実際に足を運ぶ機会が少なくなったことで生まれた、時計選びのあるいは時計づくりの新基準について並木氏は指摘する。

「今まで、重んじられていた触覚、つまり、触って感じる時計選びの機会が減った今、ブランドのアプローチは、触覚を離れ、視覚的なつくり込みを高めていると思います。それは、多くの時計に見られた外装表現の向上、あるいはカラーダイヤルに見られる色彩の多様化などが挙げられる。一方で、SNSでの訴求が増えていくと、より『語れる時計』として、一本のストーリーをいかにつくり込むかという点も注目されていくでしょう」

ダイヤモンドウォッチやハイコンプリケーションなど、ビジュアルとしても目を引くものが増えている点とこの指摘は重なってくる。

「普遍性と新鮮味、このバランスが重要です」平山祐介

時計『ヒストリーク・アメリカン1921』と『A.ランゲ&ゾーネ』
左/デザインのプロトコルを変えず新ムーブメントを投入する『A.ランゲ&ゾーネ』。右/100年を経ても基本デザインは変わらない『ヒストリーク・アメリカン1921』。文字盤などの外装は進化。

一方で、平山氏が感じたのは、普遍性と新鮮味のバランスだ。

「心に残るのは奇をてらったデザインや仕掛けではなく、見た目に落ち着きのある普遍的なもの。昔から気になっていたモデルが、少しディテールを変化させたり、変わらぬ世界観をもちながら進化を遂げていたり。そういう時計は、技術が高まった今、安心感をもって見ることができますね」

例えば、本アワードで取り上げる名品ウォッチは、誕生から変わらぬ姿を守っていることで、非常に高い人気を保っている点が当てはまるだろう。また、一般に名作と呼ばれるフォーマットの時計も、日々進化を遂げている点にはチョー氏も同意する。時計界が普遍的な名作を育てながら、新たな道を模索していることの表れとも見ることができる。

「『オーデマ ピゲ』や『A.ランゲ&ゾーネ』は、トラディショナルな佇まいでありながら非常にエクスペリメンタルな挑戦をしている点に好感がもてます」

「どこでつけるのか。これを考えるのが現代的です」守屋美穂

ブルガリとエルメスの時計
左/『エルメス』の新作時計は、部屋でつけるなど、時計の新たな活躍の場を与えてくれるかもしれない。右/ジュエラーならではの美観を極めた『ブルガリ』は、看板である『薄型化』を追求。

また、デイリーウォッチやラグジュアリースポーツウォッチについては、次の守屋のコメントに通じるものがあるだろう。

「時計というものをどこでつけるのかな、ということをよく考えます。あまり外に出なくなった今、家でつけることも大いにアリだと感じるわけです。だからこそ、着用時に快適だと感じられる軽い時計などは、ユーザーにも求められるかもしれません。また、アクセサリーと一緒に楽しむ時計というのも、着用シーンが広がっていいですよね」

結局のところ、時計は愛でるだけのものではなく、着用して人生を豊かにするもの。その先のイメージをいかにもてるかというのは、ラグジュアリーなライフスタイルを考えるうえでも、忘れてはいけないポイントだろう。

「過度に集中する人気の埒外に素敵な時計がいっぱい!」関口 優

パテックフィリップとオーデマピゲの時計
左/アイコンウォッチに超複雑機構のフライングトゥールビヨンを搭載した話題の一本。右/ストーリーを深化させて、ふたつの名作を融合し、新たな顔立ちを獲得した最新の『カラトラバ』。

最後に、関口氏のコメントが時計の楽しさを広げるヒントになりそうだ。

「今、一部のブランドやモデルが、入手困難で、転売されるなどの異常な状況が起きているのも事実。ですが、そうしたある意味一面的な価値観で時計を見るのではなく、視野を広く保てば、過度に集中したもの以外のオープンスペースには、実におもしろい時計が揃っているなと感じることができます。今こそ自分の価値観を信じて、心から楽しめる時計を選べたらと願っています」

時計を選ぶ楽しみは、自分でその価値を創造することにある。本アワードが、その一助になれたら幸いといえるだろう。

※2021年「Precious Watch Award」「MEN'S Precious WATCH AWARD」受賞ウォッチはこちら!さらに、今年一番輝いた時を過ごした「時の人」も選出!詳しくはこちら

 

※掲載した商品は、すべて税込み価格です。

※文中の表記は、YG=イエローゴールド、WG=ホワイトゴールド、PG=ピンクゴールド、RG=ローズゴールド、PT=プラチナ、SS=ステンレススティール、TI=チタンを表します。

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PHOTO :
生田昌士(hanna/人物)、戸田嘉昭・池田 敦(パイルドライバー/静物)
STYLIST :
菊池陽之介(人物)、関口真実(静物)
HAIR MAKE :
竹井 温(&'s management)
EDIT&WRITING :
安部 毅、安村 徹(MEN'S Precious)