先に3Wayで楽しめる“《ケリー》ウォッチ”の最新作をお伝えした「エルメス」ですが、2022年は魅力的なニューモデルがまだまだあります!

今回お届けするのは、「エルメス」らしく、旅への希求心を掻き立てるようなコンプリケーション、“《アルソー ル タン ヴォヤジャー》”と、最新テクノロジーを駆使して、そのダイヤルに新たな表情を宿した“《ケープコッド》クレプスキュール”。いずれも時計、そしてファッション上級者の琴線に触れる、独創性とエレガンスをまとったタイムピースです。

時計の中の時計が衛星のように周る、「旅する時計」

メインダイヤルに描かれた地図、そしてそれを囲む世界各都市の名前──そう、これは「旅する時計」。ふたつの時刻を同時に表示できる「デュアルタイム」ウォッチです。

「エルメス」はしばしば、複雑機構を搭載したコンプリケーションウォッチを、アイコンのひとつである“アルソー”で表現してきましたが、2022年は満を持して「デュアルタイム」ウォッチを発表しました。しかし、ただ単なる「デュアルタイム」ウォッチという直球を投げないのが「エルメス」。これは喩えるなら、「デュアルタイム」と「ワールドタイム」の中間のような、非常に独創的な変化球! 早くも世界中から感嘆の声が上がっています。

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ダイヤルに描かれているのは、架空の《乗馬の世界地図》。そんなところからも、「エルメス」らしい遊び心が伝わる。(C)Joël Von Allmen

「デュアルタイム」──ふたつの時刻は、12時位置上の開口部にあるホームタイム(出発地、つまり日本に暮らしているとしたら日本の時刻)と、時分針を備えた小さなダイヤルがローカルタイム(旅の目的地)で表示。なんといっても驚かされるのは、幻想的な地図上に浮かぶかのような、この小さなダイヤルが、重力に引かれる衛星のように移動すること!

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「デュアルタイム」はとても複雑な機構を搭載しながら、40mmを切る38mmというサイズを実現。これひとつだけで、ほかにアクセサリーを一切必要としないほどの存在感を放つ。(C)Marius W. Hansen

こんなにもファンタスティックで、美しい「デュアルタイム」があったでしょうか!?

この非常に独創的な機構を叶えたのは、エルメスのためだけに独自開発されたムーブメント「ル タン ヴォヤージャー」。モバイルカウンターと12時位置にあるホームタイム表示は、わずか4.4mmのケースに内蔵されています。

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架空の地図が描かれた文字盤からベゼル、そして小さなダイヤルが織りなす、異なるニュアンスのブルーのグラデーションも洒脱。 (C)Joël Von Allmen
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《アルソー ル タン ヴォヤジャー》¥2,695,000 (予価) ●ケース:ステンレススティール ●ケース径:38mm ●ストラップ:アリゲーター、もしくはカーフ ●ムーブメント:自動巻き ※2022年11月1日世界同時発売予定  (C)David Marchon

かつてのように、自由に世界と行き来できる日は必ず戻ってくる! この「旅する時計」は私たちに優しく、力強く、こう語りかけてくれます。

繊細な夕暮れの情景を映した文字盤は、最新テクノロジーの賜物

もう一作は、新たな色と模様をまとった、“《ケープコッド》クレプスキュール”。「クレスプキュール」=「夕暮れ」をモチーフにしたこのダイヤルは、単結晶シリコン(シリコンウェハー)製という非常にレア、というか、この素材を時計のダイヤルに用いたメゾンは「エルメス」が初めてではないでしょうか。

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《ケープコッド》クレプスキュール ¥598,400(予価) ●ケース:ステンレススティール ●ケースサイズ:縦29×横29mm ●ストラップ:レザー ●ムーブメント:クオーツ ※2022年4月以降発売予定  (C)Joël Von Allmen

唯一無二と言っていいこの文字盤が生まれるまでには、長い歳月が要されました。さかのぼること、2018年。「エルメス」はクリエーションに特化した技術的革新を探求する取り組みの一環として、スイスのヌーシャテルに本拠を置くスイス電子工学・マイクロ技術研究センター(CSEM)と初めてミーティングの場を設けました。これがきっかけとなりシリコンウェハー製の文字盤を製造するプロジェクトがスタートしたのです。

半導体特性をもつため、通常は電子機器に使用されるシリコンウェハー。ですが「エルメス」は、そのピュアな美しさから、時計の素材として採用するというチャレンジに挑みました。

その高度な技術的工程を担うのは、CSEM研究所の専門のエンジニア。厚さわずか0.5mmの1枚のプレートからつくられるこの文字盤は、窒化ケイ素の極小(72ナノメーター!)フィルムで、極めて精密にコーティングすることで、メゾンが思い描いたこの濃いブルーの発色に成功したのです。

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製造工程で蒸着される材料の量により、その色は繊細で独特な色合いのカラーパレットとなり、無限に表情を広げていく。(C)David Marchon
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ウェハーに青色光を照射してモチーフを転写。この工程では数回液体に通してからゴールドを塗布し、さらに余分なものを取り除くために何度も水洗いを行う。最後に《ケープコッド》のケースフォルムに合わせて、プレートを精密にカットして文字盤が完成する。(C)David Marchon

伝統的な技術を大切に継承し続けている一方で、最新テクノロジーを駆使した新たな技法でクリエイションの幅を広げ、深化させる「エルメス」。比類なきサヴォワールフェール(職人技)を昇華させた文字盤に、独自の美学が注ぎ込まれた“《ケープコッド》クレプスキュール”は、ラグジュアリーウォッチの新たな可能性を切り拓きました。

※掲載商品の価格は、すべて税込みです。

問い合わせ先

エルメスジャポン

TEL:03-3569-3300

この記事の執筆者
東京都出身。大学在学中から雑誌『JJ』などで執筆活動を開始。女性向け本格時計のムックに携わったことから、機械式時計に開眼。『Precious』などの女性誌において、本格時計の魅力を啓蒙した第一人者として知られる。SIHHとバーゼルワールドの取材歴は、女性ジャーナリストとしては屈指のキャリアの持ち主。好きなもの:海、ハワイ(特にハワイ島)、伊豆(特に下田)、桑田佳佑様、白い花、シャンパン、純米大吟醸酒、炊きたてのご飯、たまご、“芽乃舎”の野菜だし、“エルメス”のバッグと“シャネル”の靴、グレーのパーカー、温泉、スパ、素敵旅館、村上春樹、宇野千代先生、神社、日本の陶器(特に唐津焼)、朝ドラ、ドラミちゃん、長文のインタビュー原稿