「お手元の資料をご参照ください」や「添付資料をご参照ください」など、会議やプレゼン、メールでの連絡などで頻繁に見聞きする「ご参照ください」というフレーズ。何気なく使っているかもしれませんが、正しく使えているという自信はありますか? 今日は「ご参照ください」の効果的な使い方や、陥りやすい間違いなど、ビジネスのスキルアップにも役立つ敬語表現をご紹介します。

【目次】

必見資料は「ご参照ください」でOK?
必見資料は「ご参照ください」でOK?

「ご参照ください」の意味は?【基礎知識編】

■単語の意味とフレーズの構成

名詞である「参照」の意味は、ほかのものと照らし合わせて参考にすること。接頭語の「ご」を付けると丁寧語になります。「~(して)ください」は動詞「くれ」の尊敬語ですが、「ご参照ください」や「お越しください」などの場合は、何かを要望する際に補助動詞として用いられます。

「ご参照ください」は、「〇〇と照らし合わせてご参考にしてください」という意味になります。

■誰に対して使える?

一般的に、取引先の相手や目上の人など、敬うべき相手に使うことが多いでしょう。

あるいは、知らない相手や不特定多数に対して、礼儀を尽くす意味でも使われます。ポスターや車内広告などで、「詳しくはQRコードをご参照ください」といったフレーズも目にしますね。

ビジネスでそのまま使える「例文」5選

では、「ご参照ください」を使うビジネスシーンを、言い足しや言い換えを含めた例文でご紹介します。

■1:「明日の会議資料をお届けしますので、あらかじめご参照ください」

■2:「お見積書を添付いたします。ご参照のうえご検討くださいますと幸いです」

■3:「契約内容は添付にてご参照いただき、必要書類をご用意くださいますようお願いいたします」

■4:「弊社の感染症予防対策につきましては、別紙をご参照いただけますでしょうか」

■5:「お問い合わせありがとうございます。添付の申込書に記入例もございますので、ご参照のうえご記入ください」

「参照」と似た意味をもつ「類語」「言い換え表現」

「参照」と似た意味の単語でも、厳密にはニュアンスが違います。ビジネスメールなどでもよく使われるフレーズ例を見ながら、その違いを確認してください。

■1:「参考」

「参考」は、資料など形のあるものから、他人の意見や考え、過去の事例まで、すべての物や事柄を自分の考えを決める手掛かりにすること。

例:弊社での事例を添付いたしますのでご参考にしてください。

■2:「照会」

「照会」は問い合わせて確認すること。「参照」より精度の高い確認、ということになります。

例:懸案事項をご照会のうえ、改めてご連絡くださいますようお願いいたします。

■3:「引用」

自分の話や文章の中に、他人の言葉や文章を用いることを「引用」といいます。「参照」は〇〇と照らし合わせたり比べたりすること、「引用」は〇〇をそのまま用いること、という違いがあります。

例:参考になる事例がありましたら引用願います。

■4:「確認」

「確認」は確かめたり認めることに重点を置いた単語、一方の「参照」は参考にすることに重点を置いた単語です。

例:本日のお打ち合わせを踏まえ、プレゼン資料を修正しました。ご確認お願いいたします。

■5:「閲覧」

「閲覧」には、書物や書類などの内容を確認しながら読むという意味も。「照会」同様、「参照」より精度の高い確認を表します。

例:当社ウェブサイトより、新製品のカタログが閲覧いただけます。

「ご参照ください」のまとめ

状況に応じてさまざまな類語に置き換えて使いたい「参照」。最後に、「ご参照ください」というフレーズについてまとめましょう。

1)意味:照らし合わせて参考にしてくださいと相手を促す

2)使える相手:取引先や上司など目上の人

3)注意点:何かと照らし合わせることを意味するので、対象となる資料などを忘れずに!

4)誤用:「ご参照してください」は誤った表現

接頭語「ご」を付けて丁寧語にした時点で、「ご参照」は相手が「参照する」という意味になっています。ですから、「する」を要請した「してくれ」の丁寧語である「してください」とすると、意味が重複してしまいます。正しい敬語フレーズは、口頭でもメールなどでも「ご参照ください」となります。

 

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似た単語やフレーズが多い「ご参照ください」ですが、それぞれの違いまで意識して使っていましたか? 今日もまた、“敬語の達人”に一歩近づきました。明日もお楽しみに!

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
『デジタル大辞泉』(小学館)/『敬語マニュアル』(南雲堂)/『「させていただく」の使い方 日本語と敬語のゆくえ』(角川新書)/『とっさに使える 敬語手帖』(新星出版社) :