大の栗好きとして知られる、小説家の林 真理子さん。そんな林さんに、栗を使った絶品スイーツを教えていただきました。

左/パティスリーSATSUKIの「スーパーモンブラン」 右/岬屋の「竹栗蒸」
左/パティスリーSATSUKIの「スーパーモンブラン」 右/岬屋の「竹栗蒸」

「栗とくれば、やはりスイーツ。岬屋さんはわが家からとても近いのであるが、交通のアクセスが悪く、行くとなるとバスかタクシーを使わなくてはならない。しかし近所の仲よしママが通う料理教室が、このお店のごく近くなのだ。秋になると『いりますか』と声をかけてくれる。ここは羊かんもおいしいが、それに新栗が加わるのだから、買わないわけにいかない。竹皮につつまれた羊かんを、そおっと開ける時の幸せな気分といったらない。羊かんの上に栗がぽっこり顔を出す。その面積が大きければ大きいほど嬉しいものであるが、栗蒸しは、そのクッションとなる羊かんがとても重要な要素となる。

『岬屋』のそれは栗を受けとめる、大らかな素朴さにみちていて、その質感が絶妙だ。噛んでいくと栗が口中ですーと混ざるように計算されつくしているのである。

そして最後は、秋になるのをみな心待ちにする『ホテルニューオータニ パティスリーSATSUKI』のスーパーモンブラン。何年か前、ここでは、和栗、イタリア、フランスの栗を三種類食べられる『三栗物語』というプレートがあったような。

モンブランは一年中食べられるものであるが、これは新栗の時にだけ出るスーパーモンブラン。ペーストと生クリームの深い層をかきわけ食べるのは、まさに至福のひとときである」

■岬屋の「竹栗蒸」

どこを切っても顔を出す、鮮やかな黄色い栗は、大粒で甘く、形がいいという茨城産のもの。栗の風味と小豆の味をしっかり感じられるようにと、甘さを抑えたあんはしっとりやわらか。竹皮で包んで蒸し上げるため、竹の香りがほんのり移っているのも風流。

■パティスリーSATSUKIの「スーパーモンブラン」

和栗のおいしさを最大限に生かした秋恒例のスーパーモンブラン。今年の特徴は、和栗のマロンペーストが際立つよう、こしあんの葛ジュレや黒蜜の粒あん、和三盆のカラメルなどを使用。和テイストな仕上がりなので、濃厚ながらしつこくなく、さっぱりといただける。

問い合わせ先

  • 岬屋 TEL:03-3467-8468
  • 住所/東京都渋谷区富ヶ谷2-17-7
    営業時間/9:00~18:00
    定休日/月、日、祝日
    ¥2,400(税抜) ※11月中旬まで販売(要予約)、取り寄せは要相談
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  • パティスリーSATSUKI TEL:03-3221-7252
    住所/東京都千代田区紀尾井町4-1 ホテルニューオータニ ザ・メインロビィ階
    営業時間/11:00~21:00 定休日/無休
    ¥2,100(税抜) ※1月末まで販売
この記事の執筆者
TEXT :
林 真理子さん 作家
2017.9.2 更新
1954年生まれ。山梨県出身。日本大学藝術学部文芸学科を卒業後、コピーライターを経て、1982年にエッセイ集『ルンルンを買っておうちに帰ろう』を出版。1986年『最終便に間に合えば』『京都まで』により直木賞を受賞。現在は数々の文学賞の選考委員を務める。『我らがパラダイス』(毎日新聞)、『夜ふけのなわとび』(週刊文春)、『美女入門』(an・an)、『マリコのゲストコレクション』(週刊朝日)ほか、多数連載中。 好きなもの:初夏、お寿司、クラシック、オペラのアリア「私のお父さん」、ティファニー ブルー、誠実、咲きかけの淡いピンクのバラ、高知県
公式サイト:林 真理子ブログ あれもこれも日記
クレジット :
撮影/尾嶝 太  文/林 真理子