大好きなファッションで、私たちの社会に今、何ができるのか? 進化を遂げる“やさしいファッション”とは?

サステイナブルな取り組みがさらに活性化しているファッション業界。最愛ブランドがどのような理念と活動をもって生み出した製品か、背景を知ってから手に入れると、おしゃれがもっと楽しい! 今回はサステナビリティ・ディレクターとしてご活躍の向 千鶴さんにナビゲートしていただきながら、明るい未来に貢献する“やさしいファッション”の最新事情に迫ります。

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向 千鶴さん
WWDJAPAN編集統括 サステナビリティ・ディレクター
(むこう ちづる)神奈川県横浜市出身。東京女子大学卒業後、エドウインに入社。4年半、営業職を務める。日本繊維新聞社記者を経て'00年にINFASパブリケーションズ入社。記者として主にデザイナーズブランドの取材を担当。『ファッションニュース』編集長、『WWDJAPAN』編集長などを経て'21年4月から現職。海外コレクション取材のキャリアは業界屈指。クリエイターへの愛に溢れた取材活動で知られ、多くのラグジュアリーブランドから厚い信頼を集めている。

“職人の手仕事を継承することも、サステイナビリティのひとつ。近年はデジタルや新技術が加わり、ますます世界が広がっています”(向 千鶴さん)

ファッション業界紙の記者という立場で、20年近くパリコレ取材を夢中になって続けてきましたが、'10年代後半にさしかかった頃、「私が追いかけているファッションは、本当に社会の役に立っているのだろうか?」と思うシーンが増えました。

次々と新商品を発売し、話題を喚起し続けるファッションビジネスは、事実、制度疲労を起こし始めていました。途上国での安全・安心を軽視した労働体制、地球の生態系をおびやかす生産のあり方、大量生産と大量廃棄の悪循環…これらのニュースを業界外のメディアが大々的に報道し始めたことで、ファッションビジネスが環境と人に与えるネガティブなインパクトを自覚し、客観視しました。私は長くファッション業界で働きながら、そのビジネスが人と環境に負荷をかけている現実を直視してこなかったのです…。

本来、おしゃれとは人を輝かせ、その人の人生を豊かにするもの。また私自身も、新しい価値観を生み出すクリエイターたちの仕事を、これからもずっと追いかけていきたい――そのためには、業界を内側から変える、つまり持続可能なビジネスへシフトする方向へリードしなければ…そう思いを新たにし、現在はサステイナブルに注力した視点で、日々活動しています。

ラグジュアリーブランドの多くは、創業以来脈々と、上質な素材と職人の手仕事の継承を、大事に守り続けています。「つくり手の顔が見える」「責任あるものづくり」という点で、実は成り立ちそのものがサステイナブルなんです。

昨今、持続可能なビジネスを語るときによく使われる言葉が「トレーサビリティ」。誰がいつ、どこで生産したのかたどることができる、という意味ですが、まさにこれに相当します。そう聞くと、ファッションとSDGsのつながりも、自分ごととして身近にとらえられる気がしてきますよね。

ここ数年は、先端の科学やデジタルを駆使した最新技術へ投資して、まったく新しい素材開発や製法に力を入れる企業が増えています。

当たり前だと思っていた素材やつくり方を見直し、「より地球環境と人間社会に負荷をかけない、ほかの方法に置き換えられないか」と試行錯誤しているブランドが多く、目覚ましい進歩は、とても興味深い! 新しい時代へと確実に進化していることを感じます。

ファッションとサステイナビリティの関係は、消費者側ではなく、まずはつくり手側に責任があり、よい方向へ変わるべき、私はそう考えます。そうして消費者が自然と手に取った商品が、実はサステイナブルであった、という状態がいちばん理想的ですよね。大好きなファッションを通して明るい未来へ貢献できるなんて、消費者としてこんなに幸せなことはありません。

知識と経験を積み、本当の意味での豊かさを知るPrecious世代には、変わろうとしているブランドの活動にも耳を傾け、おもしろがってほしい。新しい取り組みは応援してもらうことで育まれ、少しずつ世界が変わっていくと信じています。


“人権”と“環境”の2軸が基本! 「SDGs×ファッション」を理解するために、まずは「グッチ」の活動に目を向けて

「サステイナビリティの概念には“環境”だけでなく、“人権”も含まれます。すべての人が健全でなければ、地球環境改善のアクションは広がりません。その2軸で革新的にサステイナビリティ戦略を推進している筆頭がグッチです」(向さん)

【SDGs×Fashion】PEOPLE(人権):ジェンダー平等に向けた大規模プロジェクトを今年3月、東京から発信!

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「CHIME FOR CHANGE」のロゴには、東京タワーもあしらわれている。
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国際女性デーの3月8日より、東京タワーをライトアップ。(C)Courtesy of Gucci
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ロジェクトのスペシャルコレクションを六本木ヒルズ店と公式オンラインショップにて発売中(数量限定)。(C)Courtesy of Gucci

誰もが平等に自己表現できる未来を目指すグッチの「CHIME FOR CHANGE」。東京からジェンダー平等を呼びかけるコンテンツ「GUCCI GENDER CANVAS」を特設サイトで公開中。スペシャルゲストとのトークセッションも(4月30日まで)。

「CHIME FOR CHANGE」特設サイトはこちら

職人の技術を未来へ継承するための教育プログラムを創設

イタリアのGucci ArtLabにて、職人を目指す若者の教育プログラム「GUCCI ECOLE DE L'AMOUR」を'18年に開講。長年かけて培ったクラフツマンシップと製造のノウハウを次世代に伝えることは、長期的なサステイナビリティに欠かすことのできない重要な要素。

全社員が地域社会のボランティア活動に従事

'19年にスタートしたグローバルプログラム「Gucci Changemakers」。グッチの全社員がNGO団体のボランティア活動を通じ地域社会に貢献できるよう、年間最大4日の有給休暇を取得できる。また北米各地の多彩な人々が才能を発揮する機会を創出するための基金や奨学金制度も。

【SDGs×Fashion】PLANET(環境):カーボンニュートラルに加えて、環境再生型農業支援を推進

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(C)Courtesy of Gucci

'18年以降、「グッチ」は自社の事業活動とサプライチェーン全体でカーボンニュートラルを実現。毎年残存する温室効果ガス排出量をオフセットすることで、森林、農業の保護と再生に努めている。生物多様性と気候にポジティブな変化をもたらすことを目的に改革を実施中。

事業活動における再生可能エネルギーの使用目標を100%に

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(C)Andrea Martiradonna

省エネなどで環境に配慮した建物に与えられるLEED認証を、複数のオフィスやショップで取得。イタリアの本社屋(写真・上)はLEEDゴールド認証され、ファッションショー開催時は再生可能エネルギーやLED照明を全面的に利用するなど、ショーのあり方も大きく注目されている。

最新コレクションも環境に配慮したつくりへますます進化

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バッグ『オフィディア』[縦19×横23.5×マチ8cm]¥176,000(グッチ ジャパン)(C)Courtesy of Gucci

環境に負荷をかけない最新の技術が採用されたGGスプリーム キャンバス。

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カーディガンの襟はエコファー。「グッチ」は'18年から動物の毛皮を製品に使用しないことを発表している。(C)Courtesy of Gucci

'21年11月、ブランドの新たな幕開けを祝す「LOVE PARADE」と冠されたショーが、ロサンゼルスのハリウッド大通りで開催された。クリエイティブ・ディレクター、アレッサンドロ・ミケーレの多様性へのメッセージが伝わる個性豊かなラインナップに。

※掲載商品の価格は税込みです。


問い合わせ先

グッチ ジャパン クライアントサービス

TEL:0120-99-2177

EDIT&WRITING :
三尋木奈保、池永裕子(Precious)