【目次】
【先方とは?ふたつある「読み方」とそれぞれの「意味」】
「先方」という単語だけを見て何と読みますか? 読み方によって意味が異なるこの単語について、まずは意味など基礎的なことを確認しましょう。
■読み方1:「せんぽう」
一般的には「せんぽう」と読むことが多いでしょう。社内での会話やメールで、取引先や顧客を指して「先方(せんぽう)がいらっしゃいました」「先方(せんぽう)からの返答待ちです」というように使いますね。また取引先との会話でも、第三者を指して「先方(せんぽう)の意向も考慮して」などと言います。
■読み方2:「さきかた」
実は、「先方がいらっしゃいました」も「先方からの返答待ちです」も、「先方」を「さきかた」と読むことも。
「せんぽう」も「さきかた」も、「相手方(あいてがた)」や「相手の人」「ここにはいない第三者」を指す名詞です。
■読み方3:「さきがた」
一方で、「さきがた」と濁って読む場合には意味が異なり、時間的に少し前のことを指します。「さっき」や「ちょっと前」を、かしこまって言う語です。
■読み方と意味のまとめ
会話では問題なさそうですが、メールなどの文章の場合は紛らわしいことになりそうですね。読み方と意味をさくっとまとめましょう。
・せんぽう/さきかた(濁らない)=相手、あるいは第三者を敬っていう
・さきがた(濁る)=時間的に少し前のこと
【使い方がわかる「例文」】
相手を表す「せんぽう/さきかた」と読む場合のビジネス例文を紹介しましょう。
■1:「弊社から先方に催促いたします」
■2:「先方から承認が下り次第、作業が開始できるよう準備を進めます」
■3:「今回の出来映えに、先方も大変喜んでくださいました」
■4:「〇月〇日〇時、先方は3名さまでお越しになります」
■5:「先方の意向を踏まえて回答させていただきます」
1は「弊社」とへりくだっているので、取引先など敬うべき相手に対しての使用例。2~4は社内などでの報告に。5はお客様への対応などで使える例文です。いずれも、「先方」を社名や個人名などに置き換えることが可能です。
「さきがた」と、時間のことを表す例文も見ておきましょう。
■1:「先方より気になっていることがあり、ご相談したいのですが…」
■2:「先方お伺いしました件、再度確認させていただきます」
■3:「先方より冷たい雨が降っています」
【「類語」と敬語にしたい場合の「言い換え」表現】
■「先方(せんぽう/さきかた)」の類語・言い換え
読み方によって意味が異なる語の場合は、メールなどの文章では極力使用を避け、類語や言い換え表現を使うべき。「相手方(あいてがた)」や「あちら」、場合によっては「取引先」「会社名」「個人名」などに言い換えてもいいでしょう。
■敬語としての言い換え表現
敬語として使用する場合の言い換え例文も確認しておきましょう。
・お相手方も困っていらっしゃるようですので、早期に解決したいと思います。
・この度の不手際は、あちらさまも落ち度を認めていらっしゃいます。
・お取引先からの承諾が得られていないため、お待たせしております。
・明日は自宅より客先に直行いたします。
【先方と反対の意味をもつ「対義語」は?】
「先方」が相手や第三者を示すのですから、その対義語は自分サイドを示す語です。
・当方 ・私ども ・こちら ・弊社 ・弊方
「弊方(へいほう)」は、「当方」をより丁寧にした言葉ですよ。
【「先方」を使う際の注意点まとめ】
最後に、読み方によって意味が変わること以外に、ビジネスシーンで気を付けたいことを再チェック!
■注意点1:目の前の相手には使わない
「先方(せんぽう/さきかた)」の意味は「相手方」「相手の人」ですが、さらに注釈するなら「ここにはいない相手」を指します。会話をしている相手やメールを受け取る相手を指す言葉ではないのでご注意を。ビジネスシーンでの「先方(せんぽう/さきかた)」は第三者のことを指す、と覚えてください。
■注意点2:「先方さま」は大間違い!
「先方(せんぽう)」は、その場にいない相手を指す言葉なので敬語表現はないと覚えておきましょう。したがって「先方様」や「先方殿」は間違いワード! 第三者を丁寧に言う場合は「先様(さきさま)」と表現するのが正解ですが、現代のビジネスシーンでは少々古風に感じるかもしれません。会社名や、「さま」を付けた個人名で十分でしょう。
ちなみに、「小学館様」のように「会社名+様/殿」は不適切! この場合は「御中」を付けるべきですね。
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今回の「先方(せんぽう/さきかた)」は、第三者を指して、身内や会話の相手との間で使うもの、ということも学べました。気持ちのよい敬語表現はビジネススキルの重要な要素。毎日ひとつずつでも身に付けていきましょう。
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- Precious.jp編集部
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