「やるからには、高級鮨店の聖地・銀座で勝負しようと決めていました」と語る、新井祐一さんの修業先は、かの有名な二大名店『銀座久兵衛』で仕事の基本を学び、『すし匠』でコミュニケーションのいろはを習得されました。

『銀座 鮨あらい』の店主の新井さん
『銀座 鮨あらい』の店主の新井さん

美しい所作でテンポよく出される握り、人懐っこい笑顔で場を和ませるホスピタリティは、まさに両店の「いいところどり」。

「握りの花形はやっぱりマグロ。これがうまくなくてはいい鮨店とはいえない」と、ネタの状態によってフレッシュ、ねかせるなど、仕事やシャリの合わせ酢を変えるほどのマグロ好きです。

新井さんのこだわりのつまったマグロの握り
新井さんのこだわりのつまったマグロの握り

富山産コシヒカリを使い、粒はピンと、中はふっくらとした「逆アルデンテ」食感で炊き上げたシャリは、「鮨を食べたという満足感を味わってほしい」と大ぶり。また、ネタが書かれた木札や氷室など、昔懐かしい昭和の鮨店を思わせるしつらえも、新井さんのこだわりです。

「師匠から学んだ技術は踏襲しつつも、これからの店の味をつくるのは僕自身。一生食べ続けても飽きない鮨を、安定して出し続けるのが今の目標です」

写真のマグロは、キメが細かく身が柔らかな100kg前後のものを自ら吟味。シャリは米酢ベース。ネタ選び、仕事、シャリ、空間と徹底した美意識がうかがえます。

新井祐一さんに、こんなことも聞いてみました

Q.好きな魚は?
A.マグロ。「やっぱり、華やかで王道の存在だから」
Q.自分を魚にたとえると?
A.マグロになりたい。「常に動き続ける努力家でありたい」
Q.好きな言葉は?
A.圧倒的いちばんになる。「尊敬するお客様がよく口にされる言葉なので」
Q.好きな音楽は?
A.3代目J Soul Brothers from EXILE TRIBE 「『R.Y.U.S.E.I』がお気に入り」
Q.オフの日の過ごし方を教えてください。
A.オフは今、ほぼないんです。「休みができたらひとりになりたい」
Q.今、いちばん行きたい場所は?
A.モルディブ。「何もしないでぼーっと過ごしたい」
Q.小さいころの夢は?
A.鮨職人。

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この記事の執筆者
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田中美保さん 編集者
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『Precious6月号』小学館、2016年
1974年生まれ。編集プロダクション「スタッフ・オン」取締役社長。『Precious』をはじめ、『Domani』『Oggi』など女性誌の食や旅、生き方や著名人インタビューのページを担当。『しょうが女神の簡単おつまみ127』、『武田双雲の「書いて」夢をかなえる本』、『漂流郵便局』(いずれも小学館)など書籍の編集も。 好きなもの:食べること、料理、お弁当を詰めること、広いキッチン、大きなベッド、古い建物、鎌倉、『Empire 成功の代償』、『Castle ミステリー作家は事件がお好き』、キューバ、ブエノスアイレス、ハワイ、ジャック・ジョンソン、有吉佐和子『悪女について』、林真理子『星に願いを』(山田詠美のあとがきも好き)、ガルシア・マルケス『百年の孤独』、サーティワンのチョコレートミント
クレジット :
撮影/篠原宏明 取材/森中奈央(TRYOUT) 文/田中美保