「重ね重ね」という言葉を、「なんとなく丁寧な印象になる気がする…」という理由で使っている人はいませんか? 確かに「重ね重ね」は、感謝や謝罪など、自分の思いの深さを丁寧に相手に伝えたいときに使うと効果的な言葉です。とはいえ、正しい知識をもたずにいると、フォーマルな席で思わぬ恥をかくことに。すぐに使える例文や言い換え表現も紹介します。

【目次】

「重ね重ね」を上手に使って、丁寧なリマインドや、感謝を伝えよう。
お詫びに感謝に念押しに…「重ね重ね」を上手に使って丁寧に伝えよう。

【「重ね重ね」の「基礎知識」】

■「読み方」

「重ね重ね」は「かさねがさね」と読みます。

■「意味」

「重ね重ね」は、【同じようなことが繰り返されるさま】。同じ言葉を繰り返し意味を強調することで、【念入りに相手に頼み込むさま、自分の心情の深さを相手に伝えようとするさま】という意味も表しています。

「重ね」を二度「重ねて」ていることから、「重ねて」という言葉をさらに強調するフレーズです。二重表現のように感じてしまう人もいるようですが、正しい日本語表現です。


【「重ね重ね」を使えるビジネスシーンはこの4つ】

ビジネスシーンで「重ね重ね」はどのように使われているのでしょうか。「重ね重ね」は、すでに思いや用件を伝えた相手に、さらに言葉を重ねる場面で頻繁に使われる表現です。主に4つのシーンに分けることができます。

■シーン1:お詫びするとき

口頭でもメールでもまずは「本当に申し訳ございませんでした」と謝罪し、原因や対応策について触れたあと、最後に改めて「重ね重ねお詫び申し上げます」を使うことで、深謝の気持ちを丁寧に伝えることができます。

■シーン2:感謝を伝えるとき

感謝の気持ちを強調したいときも「重ね重ね」が使えます。ただし、〈お詫び〉と同様、会話や文章の最初で使うよりも最後の締めとして、自分の心情の深さを相手に伝えるため「重ね重ね」を使うのがよいでしょう。

■シーン3:催促するとき

急ぎの案件への対応を依頼したいときにも、「重ね重ね」が使えます。「お忙しいところ恐縮ですが」「お手数をかけて申し訳ございませんが」などのクッション言葉を添えるといっそうソフトな印象に。

■シーン4:念を押すとき

相手に依頼の内容や納期などを思い出してもらうために送るリマインドメール。行き違いを防ぐために有効な方法ですが、相手にしつこい印象を与えないよう、配慮した文章をお送りしたいもの。【念入りに相手に頼み込むさま】の意味をもつ「重ね重ね」は、丁寧な印象を与えつつしっかりと念が押せる便利な言葉です。


【正しい使い方がわかる「例文」4選】

上述した4つのシーン(■1:お詫びするとき、■2:感謝を伝えるとき、■3:催促するとき、■4:念を押すとき)に沿って、それぞれ例文をご紹介します。

■1:「このたびは私の不注意でご迷惑をおかけいたしました。お手を煩わせましたこと、重ね重ねお詫び申し上げます」

■2:「先日は弊社までお運びいただきありがとうございました。また、結構な品を頂戴し、重ね重ねお礼申し上げます」

■3:「重ね重ねのご連絡となり申し訳ございません。至急お伝えしたい件がございますので、お電話いただけますようなにとぞよろしくお願い申し上げます」

■4:「以前お伝えした○○の件につきまして、重ね重ねとなりますが、事前のご準備のほどなにとぞよろしくお願いいたします」


【「重ね重ね」を使う際の「注意点」】

前述したとおり、「重ね重ね」は、すでに思いや用件を伝えた相手に、さらに言葉を重ねる場面で使われる表現です。しつこい印象を緩和する効果がありますが、それだけに多用しないことが大切です。

また、「重ね重ね」をメールや手紙で使用する際には、お礼でも謝罪でも、文章の最後、締めくくりに使用しましょう。「繰り返し」の意味を含んだ言葉ですから、初めての謝罪メールの冒頭で、いきなり「重ね重ね申し訳ありません」を使うと、思わぬ誤解の原因になることも。お詫び案件がふたつある場合はそれでよいのですが、謝罪の対象がひとつしかない場合、相手は「ほかにも何か不始末があったのか」と勘違いしてしまうかもしれませんよ。

結婚式や葬儀、お見舞いにおいては、重なることを連想させる「重ね言葉」は、別れる、切れる、破れるなどと同様、忌み言葉(避けるべき言葉)とされています。祝いの席では「本当におめでとうございます」、弔事では「お悔やみ申し上げます」「ご愁傷様でした」と気持ちを伝えましょう。


【似た意味で使える「類語」と「言い換え」表現】

「重ね重ね」と同じように使える言い換え表現も覚えておきましょう。

■幾重にも  ■くれぐれも  ■返す返す  ■たびたび  ■重々

■再三  ■再々  ■幾重にも  ■よくよく

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感謝や謝罪の気持ちを強調したいときによく使われる「重ね重ね」という言葉。実は【念入りに相手に頼み込むさま】という意味もあるため、リマインドメールなど、「再度のお願いや確認」にも使える便利な言葉です。それだけに多用すると「しつこい」「くどい」印象を与えてしまうので注意してくださいね。

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館)/『デジタル大辞泉』(小学館)/『敬語マニュアル』(南雲堂) :