寒い季節に熱い湯というイメージの強い温泉ですが、夏には夏ならではの楽しみ方があります。とりわけ40度未満のぬる湯は、副交感神経を優位にする作用があるといわれており、猛暑の疲れを癒すのにぴったり。この夏のバケーションは、極上の湯で心身をリフレッシュしてみませんか?

そこで、全国2,500以上のスポットを巡った経験のある、温泉ジャーナリストの植竹深雪さんから、夏こそ行きたい温泉宿をピックアップしてもらいました。本記事でお届けするのは、長野県茅野市にある「奥蓼科温泉 渋辰野館」です。

植竹深雪さん
温泉ジャーナリスト
(うえたけ みゆき)全国各地の2500スポット以上を巡っている温泉愛好家。フリーアナウンサー、温泉ジャーナリストとして、テレビ番組をはじめ、さまざまなメディアで活躍中。著書に『からだがよろこぶ! ぬる湯温泉ナビ』(辰巳出版)がある。
公式サイト

ぬる湯というよりひんやり!20度前後の冷泉で夏のほてりを癒す

長野県中部、平均標高1,000mを超える山間にある奥蓼科は、年間を通じて涼しい国内有数の避暑地。その奥蓼科にて、白樺の森の中に佇む「渋辰野館」は、創業100年を超える老舗の温泉旅館です。

渋辰野館の入り口
渋辰野館の入り口
レトロで温かみのあるロビー
レトロで温かみのあるロビー

「渋辰野館には、信玄の薬湯、森の温泉、内湯の3つの温泉がありますが、メインの信玄の薬湯は、まさしく夏こそ入りたい名湯。20度前後とかなりひんやりの鉱泉で、体感的にはもっと低く感じられました。すぐそばに加温の浴槽もあるので温冷交互浴が可能です」(植竹さん)

ひんやり21度の冷泉で夏の暑さを吹き飛ばす
ひんやり20度前後の冷泉で夏の暑さを吹き飛ばす

「温泉の濃度が高く、湯あたりのおそれもあるので長湯は禁物。案内板にも“1日3回まで、1回の入浴は15分まで”と注意書きがあります。浸かってみると、はじめは硫黄の成分なのか、ピリピリとした刺激もありますが、からだが慣れてくると爽快感がたまりません。加温の浴槽と源泉の浴槽とを行ったり来たり温冷交互浴をしているうちに体の芯からポカポカに。泉質の素晴らしさをしみじみ実感させられます」(植竹さん)

開放感抜群の「森の温泉」
開放感抜群の「森の温泉」

「そして、もうひとつの森の温泉は、その名のとおり森林に囲まれた露天風呂。奥蓼科のすがすがしい風を感じながら入浴できて、雰囲気も最高です。また、私が入ったときには、その日のコンディションによるのか、源泉は同じなのに信玄の薬湯よりも森の温泉のほうがピリピリした刺激が少なく、浴感がマイルドでした」(植竹さん)

内湯からの眺望も最高!
内湯からの眺望も最高!

山里の恵みを凝縮した創作料理にも感動

白樺林を眺めながら食事を楽しむ
白樺の林を眺めながら食事を楽しむ

20度前後の冷泉で濃度は高めと、かなりインパクトのある温泉をもつ渋辰野館ですが、植竹さんにはもうひとつ忘れられない思い出があるとのこと。

「いい意味で裏切られたのが、お食事。歴史があり重厚感も秘湯感も感じる湯宿で、おしゃれな創作料理をいただけたのが実に斬新です。まず、“森のたからものづくし”というコンセプトの前菜の盛り合わせは見た目的にも感動。色とりどりの野菜・山菜が一枚の木の皿にきれいに盛り付けられているんです。数えきれないほど多彩な食材をちょこっとずつという、普段の食事ではなかなか体験できない楽しみもあり、前菜から気分が上がります」(植竹さん)

多彩な食材を少しずついただく
多彩な食材を少しずついただく

「野菜のスープも印象に残る一皿。ピューレのように濃厚で、スープをあてにお酒が進んでしまったほどです。そのほか、胡麻をたっぷりきかせた野草鍋、地元野菜の天ぷらなど、品数が豊富で食の太い私でもお腹が限界!…だったのですが、シメに出てきた信州そばは別腹。さっぱりとおいしく、するすると箸が進み完食です」(植竹さん)

山の恵みがちりばめられた創作料理が絶品
山の恵みがちりばめられた創作料理が絶品

以上、「奥蓼科温泉 渋辰野館」をご紹介しました。ひんやり冷泉と加温の浴槽との交互浴で心身を整えたい人は、ぜひこの夏の旅先候補に加えてみてはいかがでしょうか?

※外出時には新型コロナウィルスの感染対策を十分に講じ、最新情報は公式HPなどでご確認ください。

問い合わせ先

  • 奥蓼科旅館 渋辰野館
  • 住所/長野県茅野市奥蓼科温泉
  • 客室数/全12室
  • 料金/1名 ¥19,350~(税込) ※別途入湯税150円がかかる場合があります。
  • TEL:0266-67-2128

WRITING :
中田綾美
EDIT :
谷 花生