「アカウンタビリティを果たしてください」と聞いてピンとこない人も、「説明責任を果たしてください」ならわかりますね。報道番組や国会中継などでも耳にするようになった「アカウンタビリティ」、本日はこのカタカナ語について解説します。経営や政治の世界でよく使われるワードですが、いつあなたが「アカウンタビリティを…」という場面に遭遇するかわかりません。しっかり使い方を身に付けてください。
【目次】
- 「アカウンタビリティ」をしっかり知るための「基礎知識」
- どんなシーンで使われる? 「例文」と「使用例」
- 一般的なビジネスでの「例文」5選
- 業界による「アカウンタビリティ」の違い
- 「アカウンタビリティ」は言いにくい?「類語」や「言い換え」も
【「アカウンタビリティ」をしっかり知るための「基礎知識」】
■「アカウンタビリティ」をひと言でいうと「説明責任」です
英語の「アカウンタビリティ[accountability]」を直訳すると「説明責任」となります。これは日本のビジネスシーンで使われるカタカナ語の「アカウンタビリティ」でも同じ意味。
「会計」「経理」「決算」を意味する「アカウンティング[accounting]」と、「責任」「責務」の「レスポンシビリティ[responsibility]」からなり、もともとは「会計上の説明責任」といった限定的な意味の単語でした。企業の経営側は株主やスポンサー、顧客や消費者に対し、経営や事業内容、資金の運用などを報告・説明する責任があります。政治家は、国民が納得できるよう政策について説明をする責任があります。これが「アカウンタビリティ」の当初の意味です。
■日本のビジネスシーンで使われる際の「意味」
それが転じ、個人間の取引などのさまざまな場面でも「詳細や状況を説明する義務」、「対外的に説明する責任」という意味で広く使われるように。また、「アカウンタビリティ」はその「義務」や「責任」だけでなく、「企業(担当や権限をもつ機関や人)が、自らの行動・選択・決定のもととなる考えなどを明言する」という意味でも使われます。
【どんなシーンで使われる? 「例文」と「使用例」】
■「アカウンタビリティを果たしてください!」
どんなシーンで使われるのかを実感するため、使用例を見てみましょう。
1.皆さまにご安心いただけますよう、定期的にアカウンタビリティを果たしてまいります。
2.良いリーダーになるには、高いアカウンタビリティスキルも必要だ。
3.今回の件について、誠実にアカウンタビリティを果たしてください!
「アカウンタビリティ」の主な目的は、「情報開示」と「社会的責任」を果たすこと。それをないがしろにすると、「アカウンタビリティを果たせ!」「アカウンタビリティを無視するつもりか!」などとつめ寄られるわけです。しかも報告や説明をすればいいというわけではなく、相手を納得・理解させなければ、「アカウンタビリティを果たした」とはいえません。
■取り組みとしての「アカウンタビリティ」
利害関係にあるシーンでは「説明責任」という意味で使われますが、事態への対応や改善に向けた取り組みとして、関係者が事前に理解を得るために説明・説得することにも「アカウンタビリティ」を使います。
【一般的なビジネスでの「例文」5選】
■1:「あの会社はアカウンタビリティが十分ではない」
■2:「積極的なアカウンタビリティが消費者からの信頼につながる」
■3:「今回の問題については、アカウンタビリティが果たされているとは言い難い」
■4:「事業縮小はやむを得ないが、株主へのアカウンタビリティは真摯に果たさなければならない」
■5:「株主総会では、常にアカウンタビリティが重要視される」
【業界による「アカウンタビリティ」の違い】
■「医療現場」でのアカウンタビリティ
専門知識をもたない患者側は、病状や治療についてわかるように説明をしてほしいもの。医師側はその要望に対して、処置や治療方法などについて説明する責任があります。これが、「医療現場でのアカウンタビリティ」です。
例えば、「患者に専門用語を多用して説明するのは、医師のアカウンタビリティに背く行為だ」という文章からも、「アカウンタビリティ」がただの説明ではないことがわかります。
■「福祉現場」でのアカウンタビリティ
福祉分野では、サービス事業者はしっかりと内容を説明し、利用者側はそのサービス内容を十分に理解・承知したうえでの契約が必須です。社会福祉法第76条には、利用契約時の説明を「努力義務」と規定していますが、「利用者側が十分理解するような説明」=「アカウンタビリティを果たす」ことが求められます。
介護分野でも、医療や福祉と同じような意味で「アカウンタビリティ」が使われます。一般的なビジネスシーンでも、医療・介護・福祉といった現場でも、「アカウンタビリティ」は「相手に伝わる」ことが重要なのです。
【「アカウンタビリティ」は言いにくい? 「類語」や「言い換え」も】
■アカウンタビリティの言い換え
・説明責任 ・説明義務
■アカウンタビリティの類似語
・レスポンシビリティ:どちらも「責任」を意味しますが、「アカウンタビリティ」が成果についての説明責任(成果責任)を表すのに対し、「レスポンシビリティ」は実行に対する説明責任(実行責任)を表します。
・インフォームドコンセント:医療の現場で使われる「インフォームドコンセント」はどうでしょう。「アカウンタビリティ」は「患者側が理解するよう説明する義務」であり、「インフォームドコンセント」は「治療内容などの情報を患者側が説明を受けたうえで理解して同意」すること。要するに、患者側が「インフォームドコンセント」に至るには、医師側の十分な「アカウンタビリティ」が必要だということです。
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企業の不祥事や偽装などが、ニュースサイトや報道番組で取り上げられることが多い――という時代になってしまいましたが、個人レベルでは「アカウンタビリティを!」と迫られることがないよう努めたいものですね。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『情報・知識imdas』(集英社)/『すっきりわかる! 超訳「カタカナ語」事典』(PHP文庫)/『あの新語もわかる カタカナ語 すぐに役立つ辞典』(河出書房新社)/『ビジネス用語図鑑』(WAVE出版) :