食品偽装事件や自動車・家電製品のリコール、粉飾決算など、企業が消費者の安心・安全、利益を損なう不祥事が相次いで報道されたのは2000年代以降。当時、謝罪会見の様子から「ささやき女将」という言葉も話題になりました。こうした事態を受けて進んだのが、「コンプライアンス」の徹底を促す法整備です。現在では「コンプライアンス研修」を行う企業も多いですね。今回のテーマは「コンプライアンス」。今や「社会の常識」として浸透した言葉ですから、正しく理解することは必須です。

【目次】

「コンプライアンス」は今や社会の常識です。
「コンプライアンス」は今や社会の常識です。

【「コンプライアンス」を曖昧にしない「基礎知識」】

■「コンプライアンス」の意味は?

「コンプライアンス」は、「要求や命令への服従」を意味します。

「コンプライアンス[compliance]」には、①「服従」のほか、②「法律・規則遵守」、「従順さ」、③物理学の分野で使用される「弾性体のひずみを生ずる度合」といった意味を持つ言葉です。

■ごく簡単にいえば、「社会のルールにちゃんと従うこと」!

ビジネス用語としての意味は、上記②の「法令遵守」。特に、「企業が法律やルールに従って公正・公平に業務を遂行すること」を意味します。なんだかいかめしく聞こえますが、要するに「インチキをせずに、ルールにのっとったことをする」という、道徳的な主張のようなものです。社会に混乱を与えないようにする企業倫理や、社会からの信用を高めるための企業戦略などとの関わりで話題になることが多い言葉です。企業内の部署や役職の名称にも用いられることが多くあります。

■薬は「用法/用量を守って」使うことが大切!

医療の分野では、「服薬遵守」の意味で使われます。処方された薬を「指示どおりに服用」することです。つまり「使用上の注意をよく読み、用法・用量を守って」使うことが大切なのですね。

ちなみに、医薬品のCMで最後に必ず「ピンポーン!」と音が鳴るのは、薬事法で定められた「消費者への注意喚起」のための音声を、業界全体で申し合わせているからだそうです!「ピンポーン!」であれば機械音でも口頭でもOKなようです。これも「コンプライアンス」の表れなんですね。ご存知でしたか?

■「遵守」の読み方は?

「遵守」は「じゅんしゅ」と読みます。「法律・道徳・道理などに従い、それを守ること」を意味します。

■「モラル」「マナー」との違いは?

「モラル」は「道徳」や「社会的倫理」を、「マナー」は「態度」や「礼儀作法」を意味する言葉です。「コンプライアンス」という言葉が一般化し始めた1990年代後半当初、主な対象は法令や規則でしたが、その範囲は年々広がり、今や社会規範やモラル、マナーまでが組織の「コンプライアンスの基準」となることもあります。状況によって判断することが大切です。


【別の言葉にすると?「言い換え」「類語」表現】

■法令遵守  ■服薬遵守  ■遵守  ■順守  ■社内規定  ■社会的倫理

「法のコンプライアンス」など、文脈から何を遵守するかが明らかな場合は、単に「遵守」と言い換えることも可能です。また、新聞などでは「遵守」を「順守」と記載することもありますが、意味は同じです。

また、社外の方との会話において、「コンプライアンス」は「社内規定」の意味で使用されます。


【「コンプライアンス」の理解を深める「例文」7選】

■1:「日本を代表する大企業はどこもコンプライアンスに力を入れている」

■2:「わが社はコンプライアンス委員会を設け、徹底した法令遵守を心掛けている」

■3:「企業としてコンプライアンスを確保するのは、今や当たり前の時代だ」

■4:「コンプライアンスの主体は、個人ではなく、組織である」

■5:「組織が法令や規則を遵守するのは当然のことながら、今や社会規範や企業倫理、果てはマナーまでが組織のコンプライアンスの基準となる傾向にある」

■6:「弊社のコンプライアンスにより、新製品に関する詳しい情報はお伝えできません」

■7:「コンプライアンスに配慮して、当局では一部映像にモザイクをかけて放送します」

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「コンプライアンス」が社会全体の共通認識となった今、組織は問題が起きてからの対処だけではなく、未然に防ぐことも含めて「コンプライアンス」を問われています。年々ハードルが高くなっていくこの言葉、正しく理解するだけでなく、常に移り変わる時代の風潮を敏感に感じとるセンスを磨くことも大切ですね。

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館)/『ランダムハウス英和大辞典』(小学館)/『日本大百科全書 ニッポニカ』(小学館)/『すっきりわかる! 超訳「カタカナ語」事典』(PHP)/『これ1冊であとはいらない! 大人の語彙力大全』(中経の文庫)/『外来語 言い換え手引き』(ぎょうせい)/『カタカナ語 すぐ役に立つ辞典』(河出書房新社) /『「知ったかぶり」を解消する! ビジネス用語図鑑(WAVE出版) :