ビフォーアフターのビジュアルと、「結果にコミットする」というフレーズが印象的なプライベート・ジム ライザップのCM。2014年に始まったこのCMと共に、「コミット」というカタカナ語の認知度も急上昇しました。今回は「コミット」について解説します。最後まで読んでいただければ、「コミット」に関する疑問は解消されること、謹んでコミットいたします!
【目次】
【まずは「コミット」の「基礎知識」から】
■「コミット」を簡潔にいうと「関与」「約束」ってこと!
カタカナ語の「コミット」は、「深く関わりをもつこと」、「約束すること」と、主にふたつの意味で使われています。村上春樹さんをきっかけに、この言葉を知った人も多いかもしれませんね!
■「コミット」の由来は「コミットメント[commitment]」です!
英語の[commit]には、「委託する」「書き留める」「表明する」「犯罪を犯す」「(約束などで)拘束する」などの意味があり、確かに[commit oneself to a promise]というフレーズで「確約する」という意味にはなりますが、どうもカタカナ語の「コミット」とは意味や使い方が異なるようです。
それもそのはず、実はカタカナ語の「コミット」の由来は、英語の「コミットメント[commitment]」なのです。[commitment]には、「公約」「責任」「深い関わり」「献身」などの意味があります。
■ビジネスシーンでの「コミット」は、強い意志の表れ!
ビジネスシーンでは一般的に「(成果を)約束する」、「責任をもって積極的に関わる」といった意味合いで使われます。「コミット(メント)を得た」と言えば、「確約を取った」の意であり、「結果にコミットする」と言えば、「結果について責任をもつ」という意味になります。重みのある言葉ですから、「コミットできる人」とは「自分の関わる仕事に責任をもち、結果を出せる人」ということができるでしょう。
ただし、「コミット」には「献身的に身を投じます!」という力強さ、賢明さの意味合いが含まれていると同時に、「でも、駄目だったらごめんね」というニュアンスを暗に含んで使用されることもあるので、この点には注意が必要です。
■IT業界や政治の世界での使い方は?
IT業界での「コミット」は、「データベースにおいて一定の単位の処理が正しく行われ、終了したこと」を意味します。また、政治の世界では「公約」、「確約」、「関与」などの意味で使われています。「公約」に「ダメだったっらごめんね」のニュアンスが込められていたら、困りますね。
【「コミット」の「言い換え」「類語」表現と「関連用語」】
■関わる ■約束(する) ■確約(する) ■責任ある関与(する) ■公約
使われるシーンによって意味や使われ方が違いますので、前後の文脈から意図を読み取ることが大切です。
■フルコミット
「フルコミット」は、「限度いっぱい」という意味の「フル[full]」と「コミット」を組み合わせた和製英語です。「最大限の努力をする」、「全責任を負う」といった意味で使われますが、英語圏では伝わらないので注意してください。
■オーバーコミット
「オーバーコミット(メント)」は英語の[overcommitment]に由来します。本来の「無理な約束」という意味に加え、「過剰介入」「越権行為」などを意味します。例えば、自分の担当の範囲を逸脱して、余計な指示を出したりすることがこれに当たります。
【「コミット」の理解を深める「例文」5選】
■「コミット」を「成果を約束する」という意味で使ったら
1:「今期は、対昨期120%の売上を達成することをコミットします。」
2:「数字をコミットすることで、プレゼンテーションの説得力が増す。」
決意表明として、「責任をもって成功を約束します」という意味で「コミット」を使用すると、強いリーダーシップを表現できます。反面、周囲からの期待値も上がり責任も増えそうですね。
■「コミット」を「責任をもって積極的に関わる」という意味で使ったら
3:「当社は今後、環境事業にコミットします。」
4:「来年度は海外事業にもコミットしていく予定です。」
5:「私はその件に一切コミットしないつもりだ。」
最初の例文を言い換えれば、「当社は今後、責任をもって環境事業に積極的に関わっていきます」となります。企業の経営方針として、強い意志を伴った表現です。
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「コミット」は、これを公言することで、周囲に頼もしさや力強さを示せる言葉ですが、同時に大きな責任が伴う言葉です。相応の覚悟が必要であり、プレッシャーもつきもの。とはいえ、それらを乗り越えることで得られる成果はきっとあるはず。怖がらずにチャレンジすることを「自分にコミット」することも、ときには必要かもしれません。「コミット」の意味を正しく理解して、自分の成長や活躍につなげていきたいですね!
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- Precious.jp編集部
- 参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『ランダムハウス英和大辞典』(小学館) /『現代用語の基礎知識』(自由国民社) /『分かりやすく伝える 外来語 言い換え手引き』(ぎょうせい)/『これ1冊であとはいらない! 大人の語彙力大全』(中経の文庫)/『すっきりわかる! 超訳「カタカナ語」事典』(PHP)/『カタカナ語 すぐ役に立つ辞典』(河出書房新社)/『一生分の教養が身につく! 大人の語彙力強化ノート』(宝島社) :