「セグメント」は、マーケティング用語として頻繁に使われるカタカナ語です。「かたまり」「集団」といった意味で、「なんとなく雰囲気で使っている」人も多いようです。この機会に「セグメント」の正確な意味と使い方をマスターしましょう!
【目次】
【捉えにくい「セグメント」の意味を再確認!】
■「セグメント」の「意味」は「分割されたものの一部分」
「セグメント」は「分割されたものの一部分」という意味のカタカナ語です。例えば「女性」を「未婚の女性」と「既婚の女性」に分類すると、このふたつがそれぞれ「セグメント」になります。特定の条件で「分割されたものの一部分」であり、「共通の属性をもつ集団」であるともいえます。英語の[segment]が由来です。
■ビジネスではどんな「意味」で使われる?
「セグメント」はもともと土木や建築の分野で使う言葉で、「一区画」「線分の一部」という意味で使われています。大きな塊で考えているとわかりにくい、扱いにくい、また曖昧になりがちなものを、部分に分けて正確に把握する、というイメージです。
■マーケティング用語としての「セグメント」は?
ビジネスシーンでは「顧客情報をセグメントする」といったかたちで使われています。これは「顧客情報を区分化する」という意味です。特にマーケティングや広告の世界でよく使われる言葉で、顧客層を年齢や性別、購買傾向、商品に対する認識など、「購買に至る傾向が似通っている集団」に分けることを指します。「特定のセグメント=客層」に向けて焦点を絞った商品やサービスの開発・提供が積極的に行われ、ヒットにつながっています。
■経営分野における「セグメント」とは?
経営分野における「セグメント」は、会社における「事業領域」「事業部門」という意味です。
■IT用語「ネットワーク」におけるセグメントとは?
コンピュータやIT分野では、主にふたつの意味で使われます。
①データ量が多いプログラムやファイルを記憶装置に読み込むときの、データを分割する単位。
②コンピュータや通信機器が大規模に接続されているLAN (ラン) ネットワーク上で、複数の機器から構成された小さなネットワーク。
■「医療業界」における「セグメント」は?
医療業界において、顧客は患者さんです。ある分野や機能に特化した医療サービスを準備して提供することを「セグメント」あるいは「セグメンテーション」といいます。
■放送・通信業界では?
地上デジタル放送の場合、放送に割り当てられた電波の周波数帯域を13の領域に分割して利用します。この、それぞれの領域をセグメントといいます。13のセグメントのうち12を一般のデジタル放送用として使用し、残りの1つ(ワン・セグメント)が携帯電話やモバイル端末向けのテレビ放送に使用されるため、「ワンセグ」と呼ばれるのです。
通信に関係した分野では、デジタルデータの送信単位(パケット)であったり、情報をやりとりできる一部のエリアを示す際や、「ひとつのものを分割したときの一部の範囲や長さ」を示す際にも使われています。
【「セグメント」の理解を深め、そのまま使える「例文」4選】
■1:新商品の開発にあたり、まず対象となる客層のセグメントごとに、消費パターンを分析してみる。
■2:年配者用のスマホや一人カラオケなど、特定のセグメント向けの商品がヒットする時代だ。
■3:多くの英会話教室では、生徒のレベルにより上級・中級・初級など、セグメントに分けて授業が行われている。
■4:市場をセグメンテーションしたうえで、新製品の販売戦略を考えよう。
【「言い換え表現」と「混同しやすい言葉」をチェック!】
「セグメント」の言い換え表現は多くあります。
■一部分 ■一節 ■局所 ■セクション ■部分 ■一端 ■集団
■パート
「パート」は「全体の中の一部分」であるのに対して、「セグメント」は何かを「分割したものの中の一部分」。つまり「分割したり」「分割されたり」しているところが「パート」との相違点です。
■ターゲット
「セグメント」は、特定の条件で「分割されたものの一部分」です。共通の属性をもっている集団そのものを指します。一方、「ターゲット」は、セグメント分けされた集団の中から、自社の製品、サービスの対象として絞り込んだ、一部のセグメントのことです。つまりターゲットの多くは、セグメントから絞り込んで決定されるのです。
【知っておきたい「セグメント」の「関連用語」】
■セグメンテーション
分割化、細分化、「何かをセグメントに分ける行為」のことです。「セグメント分け」あるいは「セグメントする」とも表現されますが、「セグメント」そのものを「セグメンテーション」と称することもあります。マーケティングの分野では、製品に応じて市場を細分化し、それぞれに適した販売方法や広告展開を分析し、実行することを「マーケット・セグメンテーション」といいます。
■セグメント利益
企業の「事業部門」ごとの利益のこと。大企業は、利益を順調に稼ぐセグメントもあれば、万年赤字のセグメントを抱えることもあります。これらを集計したものが、企業の営業利益です。特に、多岐にわたって事業展開している企業は、決算報告書などでセグメント利益を算出し、公表しています。
■セグメント情報
事業部門や地域別に開示する売上高や営業損益のこと。どんぶり勘定で見るのではなく、区分することで事業内容を明確に知るという意識が働いていることがわかります。経営や会計の分野で使われます。
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例えば、上司のヘアスタイルが「きっちり1:9にセグメント化」されていたとしても、「素晴らしいセグメントですね!」がほめ言葉として通用するか否かは疑問です。ほめ言葉、感謝の言葉、謝罪の言葉など、日常よく使う言葉は正しくセグメント化し、適切に使いたいものです!
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- Precious.jp編集部
- 参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『ランダムハウス英和大辞典』(小学館) /『日本大百科全書 ニッポニカ』(小学館) /『現代用語の基礎知識』(自由国民社) /『イミダス』(集英社) /『一生分の教養が身につく! 大人の語彙力強化ノート』(宝島社) /『これ1冊であとはいらない! 大人の語彙力大全』(中経の文庫) /『すっきりわかる! 超訳「カタカナ語」事典』(PHP) /『カタカナ語 すぐ役に立つ辞典』(河出書房新社) :