外来語を語源とし、日本語として一般化しているカタカナ語。そのなかでもビジネスシーンで使われるものを取り上げているこの連載で、今回は「サマリー」のあれこれを見ていきます。「今朝のミーティング、今日中にサマリーをつくって部内共有してください」と上司に言われても困らないよう、「サマリー」についてしっかり確認していきましょう。

【目次】

「サマリー」の作成が上手な人=デキるビジネスパーソン!
「サマリー」の作成が上手な人=デキるビジネスパーソン!

【知っているつもりの人にも…「サマリー」の基礎知識】 

■「サマリー」をひと言でいうなら「要約」です

「サマリー[summary]」は、「概要」や「要約」を意味する英単語。論文などの要点を短くまとめたものを指します。

■ビジネスシーンで「サマリー」が必要な理由

長い文章を読むのが苦手な人や、時間がない際に重宝されるのが「サマリー」です。

例えば、ミーティングやオリエンの内容を要約した「サマリー」は、読解力の優劣による取り違いや勘違いの可能性を低くし、共有者に共通情報・認識をもたらすことができます。その場に居合わせなかった人も、「サマリー」があればその後の仕事に大きな支障はないでしょう。

■「サマリー上手」は「仕事がデキる!」と好評価につながります

「要約」や「概要」は、単に長い文章を短くするということではありません。重要な部分を効果的に伝える要約には、「理解力」「文章力」そして「コミュニケーション力」が不可欠です。的確な「サマリー」が作成できる部下や後輩には頼もしさを感じるでしょう。


【一般ビジネスでの「サマリー」の「使用例」】

それでは、「サマリー」の使用例をご紹介しましょう。

■1:「オリエンの内容をA4用紙1枚のサマリーにまとめ、プロジェクトメンバーと共有してください」

■2:「○○教授の論文のサマリーをご用意しましたので、参考資料として後ほどお目通しください」

■3:「時間がないから、報告書の冒頭にサマリー付けておいて!」

■4:「とりあえずサマリー付けてって、あの部長、結局サマリーしか読まないんだよなぁ…」

■5:「商品のキャッチコピーは、サマリーをさらに要約したようなものだ」


【業界によって異なる「サマリー」の意味】

ぜひとも「サマリー上手」になりたいものですが、業界によっては少々意味が限定されて使われます。いくつか例を挙げてみましょう。

■IT業界での「サマリー」

ネットユーザーなら今や検索しない日はない、といっても過言ではないほど、検索エンジンのお世話になっている私たち。その際に、検索条件に適合したウェブサイトの一覧で、その掲載内容の一部を簡略化した文章が閲覧できますが、それをIT業界では「サマリー」と呼びます。検索時にはこの「超要約」である「サマリー」の冒頭の1、2行で欲しい情報か否かを判断することが多いため、大変重要な役割を担います。

また、ウェブサイトの運営者は、訪問者が閲覧したページ、日時や閲覧時間などの記録(アクセスログ)を分析し、運営や制作に生かしますが、その分析結果の特色や傾向を示す言葉として「分析サマリー」というフレーズが使われます。

■医療や介護分野での「サマリー」

病院や介護施設での「サマリー」とは「医療介護情報提供書」。患者の治療や経過、検査結果など、すべての診察内容の記録を要約したものであり、院内での科をまたぐ診療や、別の病院や施設などへ移動する際の申し送りを円滑に行うためにも必要なもの。「看護サマリー」「退院サマリー」など、さまざまな種類のものがあります。

■金融業界での「サマリー」

為替や株式などの市場動向をまとめたものを「サマリー」と呼びます。


【「サマリー」の「言い換え」と「類似語=レジュメ」】

「サマリー」を別の言葉で言い換えるなら、下記のワードが使えます。意味に大差はありませんが、相手に全体像を把握してもらうためにも、要点をできるだけ簡潔に伝えることが重要です。

■概要  ■要約  ■摘要  ■大略(たいりゃく) ■大要(たいよう)

「サマリー」は英語由来のカタカナ語ですが、類似語にはフランス語の「レジュメ[résumé]」が。「レジメ」とも発音されます。「サマリー」も「レジュメ」も、一般的なビジネスシーンでは同じように使われます。


【おさえておきたい「サマリー」の「関連用語」】

■「エグゼクティブサマリー」  

事業計画書の1枚目に添付する要約。新プロジェクトの立ち上げや新商品の提案をする際にも、最初に結論にあたる「エグゼクティブサマリー」を配置し、相手の関心を得るのも有効な手法として用いられます。

■「マーケットサマリー」 

前述しましたが、為替や株式などの市場(マーケット)の動向をまとめたもののこと。

■「サマリーデータ」

蓄積されていくデータに対して、一定の条件下で集計・圧縮されたデータのことを「サマリーデータ」、あるいは「サマリデータ」といいます。

例えば、個々の売上を、日別・週別・月別、また商品別や担当者別、支店別といった形で集計したものが「サマリーデータ」となります。

■「サマリーレポート」

プログラミング言語では「サマリーレポート」というフレーズも。これは「合計報告書」を意味するもので、「サマリー」には「合計」や「総数」といった意味があることもわかります。

■「サマる」

これは「バズる」や「ミスる」などと同様、名詞に「る」をつけて動詞化させた若者言葉。仲間同士ではいいですが、間違っても上司やクライアントに「サマっておきました」などと言わないように!

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「だらだらと長い話や文章ではなく、サマリーさえあればいいのでは?」と思ってしまったアナタ、それは間違いです。確かに情報過多で誰もが時間に追われている現代のビジネスシーンにおいて、「サマリー」の重要性は否定できませんが、知るだけでなく、考えたり意見を交わし、決定を下すためには「サマリー」だけでは足りないのです。とはいえ、「サマリー上手」であることに越したことはありませんね。

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本大百科全書(ニッポニカ)』(小学館)/『いまさら聞けない ビジネス用語BOOK』(成美堂出版)/『そうだったのか! スゴ訳 あたらしいカタカナ語辞典』(高橋書店)/『すっきりわかる! 超訳「カタカナ語」事典』(PHP文庫)/『あの新語もわかる カタカナ語 すぐに役立つ辞典』(河出書房新社)/『知っているようで知らない ビジネス用語辞典』(水王舎) :