前職で培ったナレッジを生かしていただけると期待し、採用いたします――この文章での「ナレッジ」の意味、おわかりですか? 文脈から「経験」や「知識」「技能」などが想像できるのではないでしょうか。今回は、“だいたいわかっているつもり”という人が多そうな「ナレッジ」というワードの、ビジネス使用について解説します。
【目次】
【「ナレッジ」をビジネスシーンで正しく使うための基礎知識】
■「ナレッジ」は「知識」を意味するカタカナ語
「ナレッジ[knowledge]」は、「知識」や「学識」などを意味する英単語です。
■ビジネスシーンでの「ナレッジ」の意味
カタカナビジネス用語としての「ナレッジ」は、「有益な知識や経験、事例、ノウハウなど、企業などの組織にとって付加価値のある情報」を指します。業務の効率化や生産性向上などにつなげるため、組織は「ナレッジの蓄積」を進めるのです。
冒頭の「前職で培ったナレッジを生かしていただけると~」という文章からは、会社の利益となりうる知識や能力が採用の決め手になったのだとうかがえますね。
■「ナレッジマネジメント」や「ナレッジベース」は必須フレーズ!
ビジネスの現場では、派生フレーズもよく使われます。必ず覚えておきたいものをふたつご紹介します。
重要フレーズ1:「ナレッジマネジメント」
「経営学の父」や「マネジメントの祖」などと呼ばれる、社会学者で経済学者のピーター・ドラッカーによる用語・概念。有益な知識を可視化・共有し、組織全体のレベルアップを図る経営手法のことです。
重要フレーズ2:「ナレッジベース」
IT化の発達によって広く普及するようになった概念です。個人が得た業務に関する知識などを集め、ほかの人とシェアできるようデータベース化したもの。人材流動が激しい昨今、有益な情報の断絶を防ぐための手段として注目されるようになりました。
【今すぐ使える「ナレッジ」の「例文」5選】
■1:「有能な人材のナレッジは、会社の知的財産です」
■2:「蓄積されたナレッジを活用して、積極的な営業を行う時期にきている」
■3:「A社との提携により得たナレッジに関して、共有方法や活用についてのリモート説明会を行います」
■4:「優秀なスタッフのナレッジを集約し、会社の発展だけでなく社会貢献にも役立てていきたい」
■5:「ナレッジ化が目的ではなく、それをどう活用していくかが重要だ」
【「ナレッジ」の「言い換え」と「間違えやすい類似語」】
■知識 ■技術 ■技能 ■情報 ■方法
これらは上記の例文1~4に置き換えることができます。
意味合いとして似ている下記の2ワードについても見てみましょう。
■ノウハウ
「ナレッジ=可視化・共有できる知識」「ノウハウ=体験を通して得る知識」という違いがあります。「ナレッジ」はデータベース化して共有できますが、データベース化できないのが「ノウハウ」というわけ。
■スキル
「訓練や実体験から身につけた能力」のこと。「ノウハウ」より、深い理解に基づいた専門的知識や能力という意味合いが強くなります。
【さらに知っておきたい「関連用語」 】
■ナレッジ共有
「ナレッジ共有」とは、個人レベルではなく、その組織に属するスタッフ間で知識を共有すること。組織全体の生産性を高めたり、効率的な売上につなげる活動に特化するために行われます。
■ナレッジワーカー
有益な知識によって新しい価値を生み出し、社会に貢献する労働者のこと。ピーター・ドラッカーが著書『断絶の時代』(1969年)で、「ナレッジワーカーとは、知識経済を根本から支える高度な専門知識をもつ労働者」だと定義づけ、広まりました。
■ジャパンナレッジ
おまけ知識ですが…「ジャパンナレッジ」は、インターネット上で利用できる有料サービスのデータベース。日本語、外国語、百科、人名などの各種辞典・事典を中心に、地図や音声、動画などの資料が閲覧できます。
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今回は「その仕事にとって有益な知識や情報」を指す、カタカナビジネス用語「ナレッジ」についてご紹介しました。「ナレッジ」は、その組織にとって必要な専門的な知識や技能に限るものではありません。例えば、異業種から転職してきた人材がもつ一見無関係な知識が、「未来のナレッジ」としてビジネスチャンスを生むかも…。組織や社会に貢献できる「ナレッジ」を、身につけていきたいものですね。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『情報・知識imdas』(集英社)/『すっきりわかる! 超訳「カタカナ語」事典』(PHP文庫)/『現代ビジネス用語事典』(日本文芸社)/『ビジネス用語図鑑』(WAVE出版)/『知っているようで知らない ビジネス用語辞典』(水王舎) :