会社員に「人事異動」はつきものです。慣れた仕事、やりがいを感じていた仕事が変わるのは不安ですね。そして、築き上げた人間関係をまた最初から…というのもハードなもの。けれど培った関係や蓄積された経験はきっと次につながるはずです。後任者へのスムーズな引継ぎのためにも、「異動の挨拶」や「異動の案内」はとても重要! 今回は、明日異動辞令を受け取っても慌てない、「異動の挨拶」のあれこれをご紹介します。

【目次】

自分らしい「異動の挨拶」って?
自分らしい「異動の挨拶」って?

【「異動の挨拶」のおさえるべき「基本」】

まずは人事異動に際し、当事者がやるべき重要な事柄「異動のお知らせ」や「異動の挨拶」を確認します。社内外に失礼がなく、気持ちよく異動するためにおさえておくべきポイントはふたつです。

■異動のお知らせは「いつ?」

一般的には、人事異動の辞令が下りる数日前に当事者に「内示」があります。正式な辞令が下りるまで、この内示は会社にとっての機密情報。むやみに口外してはいけませんが、進行中の案件に支障をきたす場合など、その異動によってなんらかの不利益を被る先がある場合も…。タイミングを考慮しなくてはならないので、内示を受けた際に「正式辞令はいつか」「社外に異動を知らせてよいのはいつか」など、確認しておくことが大切です。

■異動のお知らせは「誰に?」

「今までお世話になった人」と「異動先の仕事でこれからお世話になる人」が対象ですが、まずは「お世話になった人」へ。その時点で後任者が決まっている場合には、その案内も合わせてしたいものです。通常業務でメールのやり取りをしている相手には、メールでOKです。

また、社内の人でも、一緒に仕事をしていた同僚や上司、部下などには、本人から異動の詳細を知らせるのがマナーです。

■異動の挨拶は「誰に? どうやって?」

業務内容によるので一概にはいえませんが、営業職や渉外担当の場合は、顧客や取引先などへの挨拶も必要でしょう。挨拶状を送付したり、メールでのお知らせで構いません。しかし、あなたが異動したあともかかわりが深く続く重要な相手先には、直接挨拶に伺うのがベターです。後任者と共に出向き、感謝と引き継ぎをしっかりと行うところまでが、あなたの仕事。上司も同行できればなおよいでしょう。


【このまま使える「社外への異動の挨拶メールの定型文」】

ポイントは、「感謝を伝える」「後任の案内」「新天地での豊富」「相手の発展・活躍を願う」を簡潔に伝えること。ネガティブワードはご法度です。

■異動の挨拶メール例文

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件名:異動のご挨拶【社名(氏名)】

本文:

〇〇会社 営業部 □□□□□様(フルネームで正しく)

平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
●●社の××でございます。

私事で恐縮ですが、△月△日付で営業部から制作部へ異動することとなりました。

これまで□□様には一方ならぬご厚情を賜りましたこと、
深く感謝申し上げます。
本来であれば直接ご挨拶にお伺いすべきところですが、
メールでのお知らせとなりまして申し訳ございません。
(挨拶訪問前の一報であれば、「訪問に先立ち、まずはメールにてご挨拶申しあげます」など)

なお、××(後任者の氏名)が後任として引き継ぎます。
これまで同様、ご指導、ご鞭撻いただけますと幸いに存じます。
(後任者の氏名、電話番号、メールアドレスなど)

私にとって制作は未経験の分野ですが、新たな仕事に精一杯励みたいと思っております。

□□様および御社のますますのご発展をお祈り申し上げます。
今後とも何卒よろしくお願いいたします。

(異動先の部署名、電話番号、メールアドレスなど)

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これに相手との思い出などを2~3行付け加えると、感謝の気持ちがより伝わるはずです。


【このまま使える「社内での異動の挨拶スピーチ例」】

リモートワークや時短勤務などが珍しくなくなった今、部署内全員が集まる機会は少ないかもしれませんが、現在の部署を離れる際には「挨拶を…」とスピーチを求められるでしょう。そんなときに慌てないよう、異動辞令を受け取ったら、「異動の挨拶スピーチ」を考えておくことも大切です。

スピーチは、業務に差し障りがないよう、要点を簡潔に、1分程度でまとめるのが理想です。「たった1分?」と思うかもしれませんが、うまくまとめれば“1分スピーチ”は意外なほどの情報量になります。

■異動の挨拶スピーチ例文

お疲れさまです(「おはようございます」などでも)。このたびの辞令により、△月△日付(あるいは「明日付」や「本日付」など)で◎◎部に異動いたします。□□部の一員として皆さんと共にしました経験は、私にとってかけがえのない財産です。異動先でもこの経験や教訓を生かし、新しい業務に力を尽くしていきたいと思っています。今後も顔を合わせる機会があるかと思いますが、これまで同様よろしくお願いいたします。〇年〇か月の間、お世話になりました。ありがとうございます。

上記の例文を聞き取りやすい速さで読んでも、わずか30秒ほど。これでも十分ですが、「業務は××さんが引継ぎます」や「異動先では□□を担当します」など、公開できる情報があれば付け加えましょう。聞く人を心配させない、不安に思わせないことが肝心と心得て。


【「異動の挨拶メール」への返信例】

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件名:Re:異動のご挨拶

本文:

〇〇会社 営業部 □□□□□様(フルネームで正しく)

平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
●●社の××でございます。

ご多忙のところ、異動のご連絡を頂戴し、
誠にありがとうございます。

○○様には助けられることばかりで、
ご一緒させていただいた仕事は毎回滞りなく運び、成果も残してきました。
こちらこそ、心より感謝の気持ちをお伝えしたく存じます。

新しい職場におかれましても、○○様のますますのご活躍をお祈りしております。

今後ともよろしくお願い申し上げます。

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【「異動の挨拶」マナーと注意点まとめ】

■異動情報を公開していい時期を確認
■基本的に一斉メールは厳禁!
■ネガティブワードも厳禁!
■感謝の気持ちを簡潔に伝える
■引継ぎや後任者など、今後の業務に関わる情報も伝える
■新天地への前向きな気持ちを伝える
■相手の活躍を願って締める

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「今の環境から離れたい」と望んでいた場合を除き、慣れた仕事や人間関係から離れることや新天地への不安など、人事異動はなにかとネガティブな気持ちになるもの。「異動の挨拶」は自分を奮い立たせるためのいい機会だと思って、しっかりやり遂げましょう。

この記事の執筆者
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