メールや郵送物などを受け取ったとき、取り急ぎ「受け取りました」という連絡をするのがビジネスマナーのひとつです。でもちょっと待って。「受け取りました」はビジネスシーンにふさわしい敬語表現なのでしょうか?  今回は目上の方にも失礼にあたらない、「受け取りました」をより丁寧にした敬語表現とともに、そのまま使える実践的な例文をご紹介いたします。一緒に学びましょう!

【目次】

「受け取りました」は正しい敬語表現です。
「受け取りました」は正しい敬語表現です。

【「受け取りました」を深く理解するための「基礎知識」】

大切な文書ファイルが添付されたメールや緊急性の高い宅配便などを誰かに送ったとき、「きちんと届いたかな…?」と心配になるものです。そんなとき、先方から届く「受け取りました」の報告メールはありがたいですよね。逆もまた同じ。メールや郵送物を受け取った際には、できるだけ早く受け取りの報告メールをして、先方の不安を取り除くよう配慮するのがビジネスマナーといえるでしょう。

■「受け取りました」を敬語にすると?

「受け取りました」は、このままですでに正しい敬語表現です。
現在、敬語は〈尊敬語〉〈謙譲語I〉〈謙譲語II〉〈丁寧語〉〈美化語〉の5種類に分けられています。
「受け取りました」を分解すると、動詞「受けとる」+助動詞「ます」+助動詞「た」となりますが、「ます」は丁寧語にあたります。従って、「受け取りました」は正しい敬語表現であるといえるのです。

■「受け取りました」をもっと丁寧な敬語表現にすると?

助動詞「ます」は文章全体を丁寧にする敬語ですが、 尊敬語や謙譲語のように「送ってくれた人」に対する敬意を示すことはできません。社内のやり取りであれば問題ありませんが、取引先や目上の人に対しては、尊敬語や謙譲語を用いた敬語表現がふさわしいのものです。

「受け取りました」をもっと丁重度の高い表現にすると、「頂きました」となります。「頂く」は「受け取る」「もらう」の謙譲語。へりくだることで相手への敬意を示すことができます。ひらがなでも間違いにはなりません。

■さらに丁寧な敬語表現は?

「頂きました」をさらに丁重な敬語表現にすると、「拝受(はいじゅ)しました」となります。「拝」という漢字は、「拝(おが)む」という訓読みからもわかるように、自分のことをへりくだる意味を含んでいます。ここから「拝受」は、【つつしんで受けること。ありがたく頂戴すること】という意味となります。「拝見」「拝読」「拝借」なども同様で、「謙譲語I」に分類されています。

「拝受しました」をさらに丁寧に表現すると、「拝受いたしました」になります。「二重敬語では?」と思うかもしれませんが、大丈夫。そもそも二重敬語とは、「ひとつの語において、同じ種類の敬語を二重に使ったもの」で、一般的に適切ではないとされています。「拝受いたしました」の場合、「拝受」は「受け取るという行為が向かう先」に対する敬語〈謙譲語I〉。「いたしました」は、聞き手に対する丁寧な表現である〈謙譲語II〉に相当します。敬語の種類が違うため、二重敬語にはならないのです。

例えば、取引先が送ってきたメールを受け取ったかどうか、上司に聞かれたとしましょう。「拝受いたしました」と答えることで、取引先(受け取るという行為が向かう先)への敬意を表すると同時に、上司(聞き手)への敬意も示したことになるのです。「拝受いたしました」は最上級の敬語表現ですから、逆にいえば社内で使うには少々大げさ過ぎる言葉だともいえます。ごく親しい取引先に対しても、少し堅苦しい印象になってしまうかもしれませんね。


【「受け取りました」の「類語」「言い換え」表現】

■「受領しました」

「受領」は【受け納めること。金や物を受け取ること】という意味の言葉ですが、敬語のニュアンスはありません。ただし、「受け取りました」同様、丁寧語が使われた敬語表現です。丁寧さの度合いは「受け取りました」と同等に見えますが、現代語では「受け取る」などの動詞よりも「受領」などの名詞を使ったほうが丁重度が高くなるという原則があるため、「受領しました」のほうが「受け取りました」より丁寧な表現であるといえます。
相手が取引先をはじめ目上の方であれば、「受領いたしました」と謙譲語を用いた敬語表現にするのが適切でしょう。

■「頂戴しました」

「頂戴」「受け取る」や「もらう」を意味する謙譲語です。「拝受」と同じように使えますが、「お土産を頂戴した」のように、どちらかといえば「受け取る」よりも「もらう」という意味合いで使われることが多い言葉です。状況によっては「(私が)もらいました」の意味に受け取られてしまうケースも考えられますので、注意が必要です。


【具体的なシーン別「受け取りました」を伝える例文8選】

幅広いシーンで使用できる敬語表現は、「受け取りました」や「頂きました」ですが、シーンに応じた表現をいくつかご紹介します。

■「荷物」を受け取った場合  

・「先ほど商品サンプルを受領しましたこと、ご報告いたします。ありがとうございました」
・「お送りくださった宅配便を確かに受け取りました。早々のご対応をありがとうございます」

■「資料」「書類」をもらった場合  

・「本日、見積書を受領いたしました」
・「お送りいただいた資料、拝読いたしました」
・「詳しい資料を頂戴しました。ありがとうございます」

「拝受」は単に「受け取った」ことを意味する謙譲語です。メールに添付された文書や郵送されてきた書類の「内容を確認した」ことを伝えたい場合は、「拝読しました」が適切です。

■「メール」を受け取った場合

・「確かにメールを受け取りました。ありがとうございます。ご質問につきましては、改めてご返答申し上げます」
・「ご連絡をありがとうございました。直ちに上司に伝えます」
・「メールを拝受いたしました。ご提案につきまして、早速社内で検討させていただきます」


【「確認メール」のビジネスマナー】

ビジネスのやり取りでは、今や電話よりもメールが主なツールとなっています。メールは確かに便利ですが、顔が見えないぶん、微妙な言葉のセレクトで誤解が生まれたり、相手を不快にさせてしまうことも少なくありません。「受け取りました」を知らせる確認メールを送る際に、覚えておきたい基本的なマナーをご紹介します。

■できるだけ早く返信する

ビジネスメールのマナーとして、受け取ったメール本文に「質問したいことがある場合だけ返信する」と認識している人も多いようです。社内や内輪でのやり取りであれば問題ないのかもしれませんが、取引先を含め目上の方からのメールには、質問がなくても「受け取った事実をできるだけ早く返信する」のがマナーです。

もし、メールの内容を精査できない、あるいはすぐに対応できない場合であれば、「受け取ったけれど、回答には時間を要す」旨をお伝えします。その際、「○月△日までに」など、回答の目安をお伝えすると丁寧な印象になると同時に、先方の不安を取り除くことができます。「メールの内容について、上司の確認が取れてから返信しよう」といった姿勢は禁物です。

■報告メールの「件名」はどうする?

いただいたメールに「報告メール」を返信する場合、件名はそのままにしておきましょう。自分では丁寧なつもりで「拝受いたしました」など件名を変更してしまうと、先方はどのメールに対する返信なのか分からなくなってしまいます。かえって誤解や間違いを誘発する原因となりかねませんので、「Re:」以下の件名や「返信画面に引用される本文」は変更しないのが正解です。複数人が宛先に入っているメールで、自分が〈CC:〉となっている場合は、基本的に返信の必要はありません。ただし、「ご了承いただけるのであればご返信ください」などと書かれた場合は、ほかの〈CC:〉も残したまま返信します。

■感謝の言葉を添える

メールはとかく事務的な文章だけになってしまいがち。「お忙しいなか、詳細な資料をありがとうございました」「迅速なご対応に感謝申し上げます」など、相手への感謝の気持ちをひと言添えることで、コミュニケーションが円滑に進みます。

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敬語は「丁寧なら丁寧なほどいい」という単純なものではありません。「受け取りました」という意味のフレーズも、相手との関係性によって表現が自在に変化します。正しい敬語表現である「受け取りました」から「拝受いたしました」まで、丁寧さの異なる表現から、状況にふさわしい言葉をセレクトしたいものですね。

この記事の執筆者
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参考:「敬語の指針」(文化審議会答申)/『デジタル大辞泉』/『敬語マニュアル』(南雲堂) :