なんらかのお願い事を聞き入れてくれた相手に対し、便利に使える「ご理解いただきありがとうございます」。この連載の第70回で取り上げた「ご理解のほどよろしくお願いいたします」に続き、今回もビジネスシーンでよく使われる「ご理解」というワードを取り上げます。「ご理解いただきありがとうございます」の、正しい使い方や例文を見ていきましょう。

【目次】

「ご理解いただきありがとうございます」は謝罪?お礼?
「ご理解いただきありがとうございます」は謝罪?お礼?

【「ご理解いただきありがとうございます」を徹底解説!】

■意味

このフレーズは、大きくは「ご理解いただき」と「ありがとうございます」に分けられます。「ご理解いただき」は、「理解してくれて」「了承してくれて」という意味。「ご(お)~いただく」は「~してもらう」の謙譲語です。「ご理解いただき」とへりくだることで相手を立て、丁寧な印象を与える言い方です。

「ご理解いただきありがとうございます」は、理解してくれた相手に感謝の気持ちを表すフレーズなのです。

■使い方

依頼や希望を聞き入れてくれた相手に対して用いるフレーズではありますが、変更や至急の案件、無理を承知のお願いなど、こちらに多少でも「申し訳ない…」という気持ちがあるケースでの使用がふさわしいといえるでしょう。

■上司にも使える?

「ご理解いただきありがとうございます」は正しい敬語表現なので、目上の人に用いても差し支えはありませんが、「理解」という言葉に上から目線や押しつけがましさを感じる場合も…。相手によっては「ご承諾」「ご承知」などと言い換えることが必要です。


どんなときにどう使う?場面別の「例文」3選+α

実際にどんなシーンで使うのがふさわしいのか、例文を紹介します。取引先や顧客など、さらに高めた敬語表現を用いたい場合には言い換え文もご参考にしてください。

■1:「このたびは突然の変更にもかかわらず、ご理解いただきありがとうございます」

言い換え:「このたびは弊社事情による変更でご迷惑をおかけいたしますが、ご理解を賜り誠にありがとうございます」

■2:「年末年始の営業時間は下記のように変更いたします。ご理解いただきありがとうございます」

言い換え:「年末年始の営業時間を下記のように変更させていただきます。ご理解のほど感謝申し上げます」

■3:「本件の詳細についてはご質問いただいてもお答えできませんこと、ご理解いただきありがとうございます」

言い換え:「本件は公式発表前のためお問い合わせにはお答えできかねますが、ご理解を頂戴し大変ありがたく存じます」

「ありがとうございます」より丁寧なお礼の表現には、「感謝申し上げます」や「お礼申し上げます」などが。上司や取引先など、相手との関係を考慮して使い分けましょう。


【「ご理解いただき」の「類語」「言い換え」表現】

「理解」の類語を使って、下記のように言い換えることができます。

・ご容赦いただき ・ご了承いただき ・ご承諾いただき ・ご承知いただき 

ビジネスパートナーとして深くかかわっている相手なら、「ご理解いただき」では少々他人行儀かもしれませんね。「ご理解いただき」には「こちらの事情を~」という意味が含まれているので、もっと直接的な表現として「事情を汲んでいただき」や「勝手をご承諾いただき」と言い換えたほうが、スムースなコミュニケーションが図れるかもしれません。


「失礼」にならないように…「注意点」まとめ

今回の「ご理解いただきありがとうございます」は、こちらに何かしら落ち度がある場合によく使われるフレーズです。謝罪の意味も含んだお礼のフレーズと心得て使用する際には、失礼が重ならないように注意してください。

■「ご理解」一辺倒ではなく、ふさわしい「言い換え・類語」を用いる

■「ありがとうございます」は、相手によっては、より丁寧な表現も検討する

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ビジネスシーンでは、お礼やお詫びのフレーズを用いながらコミュニケーションを取りますよね。そんなときに使える定型文化したフレーズも多く、今回の「ご理解いただきありがとうございます」もそのひとつ。そんな重宝なフレーズこそ、ふさわしいケースや相手であるかどうか、しっかり考えて使いたいものですね。Thank you for your understanding!

 
この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『敬語マニュアル』南雲社/『ビジネスですぐ使える 語彙力が身につく本』(三笠書房) :