Column : 持たない時代に「持つ」ということ

ものを「持たない」「買わない」ことに目が向けられている今、名品とどのように付き合い、何を求めるのか? プレシャス世代の3人の女性がそれぞれの視点で語ります。経年変化にこそ、ものの価値を見出す。

今回は、「SHIGETA PARIS」主宰、ホリスティックビューティーコンサルタントのCHICO SHIGETAさんにお話しを伺いました。

CHICO SHIGETAさん
「SHIGETA PARIS」主宰、ホリスティックビューティーコンサルタント
「SHIGETA PARIS」主宰。美容室を営む家に生まれ、5歳の頃からマッサージを覚える。大学と美容学校のダブルスクールで学び、美容の本質を学ぶため渡仏。2006年にSHIGETA PARISを創業。新作の『トウキョウシャインメディテーションキット』のミストとオイルは瞑想やブレイクタイムに最適と評判。

自分が豊かになることが未来の誰かを幸せにする。そんな「名品」を探しています

 

「SHIGETA PARIS」を立ち上げたのが2006年。SDGsという言葉はなく、世の中にオーガニックやウェルネスに対する意識も、現実味がなかった頃です。植物の力でストレスを解消し、心と体のバランスを図り、自分自身が幸福感に満たされることで、人にも優しい視線を向けることができる。それが社会や地球環境を変えることにつながっていく。そんな思いで始めましたが、人々の意識が内面に向けられ始めたこともあり、これまで伝えてきたことが、受け入れられるようになった気がしています。

「名品」も私にとって、自分を豊かに満たしてくれるもの。心地よくなれるものに尽きるような気がします。サステイナブルであるかを意識して、長く使えるものを選びますが、それだけでは満足できません。やはりデザイン性があって美しくないとダメなのです。

2018年から、今5歳になる双子の娘たちのことを考えて、タイのホアヒンに移住。パリと東京の3拠点を行き来する暮らしになりました。タイの田舎でナチュラルな生活を送っているので、意外と思われるようですが、実は「ピンヒール」が大好き。足が小さく、甲高なので、自分の足に合う「セルジオ ロッシ」と「ジミー チュウ」のパンプスは何足も買いました。

パリの石畳ではヒールがすぐに壊れるので、年に2回は修理に出して、10年以上履き続けています。タイでは履く出番がないのですが、娘たちがクローゼットにあるヒールのパンプスを見つけると、目を輝かせながら「ザッツ・スタイル!」「お願い、履かせて!」とねだられて(笑)。ハイヒールのもつフェミニンさや官能性などをまだ知らない子供にも「綺麗なものは綺麗」と伝わるのですね。

思えば、美容院を営んでいた母も、お店に立つことは「舞台に出る」ことと考え、いつもモードな服を着て、おしゃれをしていました。ゆるい格好はしていなかった。そんな母の影響があるのかもしれません。私は小柄なせいもあってマキシ丈が苦手。腰のラインや鎖骨、足首など、女性らしいシェイプが見える服や靴を身につけるのが、気持ちいいのです。

そして小物は気に入ったものを何年も使っています。例えば、カンボジアの小さな村で職人が手づくりしている無染色のゴールドシルクのストール。インスタグラム(@naokobonbon)で見つけて注文し、その魅力を発信したところ、なんと完売に。思いがけず自分の買い物で職人の方の仕事が生まれるような循環に貢献できるのもうれしい。

私のものづくりは環境や植物への配慮がないと成立しません。ヨーロッパの厳しい認証をスタンダードにしています。追求すればするほど、周りの幸福なくして、自分の幸福はないことに気付く。今、欲しい名品がどう循環していくのか…。買うことが誰かの幸せな未来につながるといいなと、いつも考えています。

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EDIT&WRITING :
藤田由美、池永裕子(Precious)