春の行楽シーズンが近づき、相次ぐ大型の絵画展や美術展に足を運びたくなる時季。熱海や京都、奈良、横浜など、博物館が充実している街は各地にありますが、そのなかでも「上野のお山」は、日本屈指の美術館や科学館が立ち並ぶ、まさに日本一のアートパーク。そんな上野で「日本初の博物館」として知られるのが、東京国立博物館です。

この東京国立博物館の見どころを、美術史家で、明治学院大学教授の山下裕二さんに解説していただきました。

上野の東京国立博物館は「本館」「東洋館」「表慶館」「法隆寺宝物館」「平成館」で構成された巨大な博物館

現在の本館は昭和13(1938)年に再開館した建物。設計は建築家・渡辺 仁。コンクリート建築に瓦屋根を載せた「帝冠様式」となっている。
現在の本館は昭和13(1938)年に再開館した建物。設計は建築家・渡辺 仁。コンクリート建築に瓦屋根を載せた「帝冠様式」となっている。

「上野の東京国立博物館(以下、東博)。『行ったことあるよ』という人も多いでしょう。ただ、特別展で皆さんがよく大行列に並んでいるのは”平成館”という建物。しかし、東博の展示館はほかにも本館、東洋館、表慶館、法隆寺宝物館があり、日本や東洋美術などの名品が展示されています。

なかでも本館は、「東博に行ってここを観ないなんてもったいない」と言っても過言ではない場所。国宝や重要文化財が、並ばずに、じっくり観られます。実際に私も、国宝『松林図屛風』を展示室で独り占め、なんて経験があります。

昭和12年に竣工した建物自体も重要文化財。趣のある内装も見どころが多く、とても一日では見きれません。こまめに行われる展示替えのたびに足を運んで、ぜひ日本美術の奥深い世界を楽しんでほしいと思います」(山下さん)

東博「人気No.1作品」は長谷川等伯の描いた国宝『松林図屛風』

東博で人気が最も高い作品がこちら。近世日本水墨画の最高傑作とされる作品です。もやに包まれて見え隠れしている松林の様子が表現されており、なんともいえない静けさは禅の境地を思わせます。

国宝『松林図屛風』の左側部分 長谷川等伯筆 安土桃山時代・16世紀 東京国立博物館蔵【展示期間:4月13日~ 5月6日】
国宝『松林図屛風』の左側部分 長谷川等伯筆 安土桃山時代・16世紀 東京国立博物館蔵【展示期間:4月13日~ 5月6日】
国宝『松林図屛風』の右側部分 長谷川等伯筆 安土桃山時代・16世紀 東京国立博物館蔵【展示期間:4月13日~ 5月6日】
国宝『松林図屛風』の右側部分 長谷川等伯筆 安土桃山時代・16世紀 東京国立博物館蔵【展示期間:4月13日~ 5月6日】

日本美術史における「名作」が集う特別展が、「平成館」にて4月13日より開催予定

国宝『八橋蒔絵螺鈿硯箱』尾形光琳作 江戸時代・18世紀 東京国立博物館蔵 【展示期間:4月13日~5月6日】
国宝『八橋蒔絵螺鈿硯箱』尾形光琳作 江戸時代・18世紀 東京国立博物館蔵 【展示期間:4月13日~5月6日】

なお「平成館」にて、日本美術史上のさまざまな「名作」が集う特別展「名作誕生―つながる日本美術」が4月13日より開催予定です。ご紹介した長谷川等伯の『松林図屛風』や、琳派を代表する画家・尾形光琳が手がけた『八橋蒔絵螺鈿硯箱(やつはし まきえ らでん すずりばこ)』などの国宝や重要文化財を含む、約130点の「名作」が一堂に会します。日本美術の粋を集めた、この春イチオシの展覧会をこの機会にお見逃しなく!

山下裕二さん
美術史家、明治学院大学教授
(やました ゆうじ)『週刊ニッポンの国宝100』(小学館)の監修も務める。

問い合わせ先

  • 東京国立博物館
    開館時間/9:30〜17:00(入館は16:30まで)
    休館日/月曜日(ただし月曜日が祝日または休日の場合は開館し、翌平日休館)、12月26日〜2018年1月1日
    TEL:03-5777-8600(ハローダイヤル)
    住所/東京都台東区上野公園13-9

EDIT :
剣持亜弥(HATSU)
RECONSTRUCT :
難波寛彦