日常的な謝罪の言葉として「失礼いたしました!」を使っている人は多いのでは? ですから、実は、「実は“失礼いたしました”は謝罪の言葉ではありません」と聞いたら驚かれるでしょうか。今回はお馴染みの「失礼いたしました」がなぜ謝罪の言葉として適切でないのか、その理由を解説します。また、「失礼いたしました」に代わる謝罪の言葉や英語での表現もご紹介します!

【目次】

謝罪ではなく気遣いの言葉として活用して。
謝罪ではなく気遣いの言葉として活用して。

【「意味」は?「失礼いたしました」の「基礎知識」】

■意味は?

「失礼いたしました」の「失礼」には、「礼儀や礼式を欠くこと」「礼儀をわきまえないこと」「相手に対して礼儀を欠いているさま」といった意味があります。そして、「失礼いたしました」は、「いたす」という謙譲語で相手立てつつ、「(私は)礼儀を欠いておりました」と自分の過失を認める表現です。ポイントは、謝罪のニュアンスは含んでいるものの、ニュアンス止まりで「相手に許しを求める表現ではない」というところ。つまり、ビジネスシーンにおける謝罪としては不十分なフレーズなのです。

では「失礼いたしました」はどんなシーンで使うのが適切なのでしょうか。


【「失礼」はある意味万能!退室の挨拶など「使える場面」は】

「失礼いたしました」は「失礼しました」の謙譲語表現ですが、いくらへりくだったとしても、上記で説明した通り、謝罪の場面にはふさわしくありません。とはいえ、相手に大きな迷惑をかけておらず、感情的な軋轢も生まないとわかりきった場面であれば、ビジネスシーンでも日常的に使える、ある意味万能な言葉です。

■シーン1:日常の「ちょっとした過失」を詫びるとき

メールの返信が遅れたり、長文になってしまったときなど、失礼を詫びるときに「返信が遅れ失礼いたしました」「長文にて失礼いたしました」などと使います。狭い歩道や駅のホームなど、公共の場で、すれ違いざまに相手に触れしまったときなど、とっさに「失礼(しました)!」などと言うことがありますよね。「失礼しました」はこのような「ちょっとした過失」を詫びるときに使われる挨拶のようなフレーズなのです。

■シーン2:退社・退室など別れの挨拶として

「失礼」には「別れること。いとまごいをすること」という意味もあります。そのため、退出するときや別れるときに「失礼いたします」あるいは「失礼します」と、別れの挨拶として用いられます。

■シーン3:自分の非礼を自覚した場面で

人に何かを依頼したり、他者の話題に口をはさむ必要があるときなどに、申し訳ない気持ちを表すクッション言葉のように使われます。この場合の依頼は、道を尋ねる、名刺をいただいていない人の漢字を確認するなど、ごく軽いお願いに限ります。


【ビジネスシーンでそのまま使える「例文」6選】

では上記3つのシーンに応じた例文をご紹介しましょう。

■シーン1:日常の「ちょっとした過失」を詫びるとき

・「ご連絡が遅れまして、大変失礼いたしました」

・「(メールや手紙の最後に)乱筆乱文にて失礼いたしました」

■シーン2:退社・退室など別れの挨拶として

・「お名残は尽きませんが、これにて失礼いたします」

・「私はここで失礼させていただきます。お気をつけてお帰りください」

自分が退室するときだけでなく、エレベーターに乗って帰る取引先などを見送る際にも使われます。

■シーン3:自分の非礼を自覚した場面で

例えば入室の際、ノックの後に「失礼いたします」と挨拶しますね。これは、相手の空間や時間を奪って割って入ることへの自覚を相手に伝える表現といえます。このように、マナーには反するけれど止むを得ず行なわなければならないような場合にも使える言葉ですよ。

・「お話の途中に失礼いたします。○○さまより急ぎのご伝言を預かりました」


【「謝罪」に適した「類語」「言い換え」表現は?】

ビジネスシーンにおける謝罪のシーンでは、どのような言葉が適切なのでしょうか。

■「ご容赦ください(ませ)」

■「お詫び申し上げます 」

■「申し訳ありませんでした」

■「申し訳ございませんでした」

■「心より謝罪申し上げます」

■NG:すみません ■NG:すみませんでした 

「すみません」は「すまない」の丁寧語。漢字表記は「済みません」。「(このまま)済ますわけにはいきません」と述べることで、相手に謝罪の意を表した言葉です。自分の申し訳ない気持ちを表す言葉ですから、「失礼いたしました」同様、ビジネスでの謝罪の場面には使えません。


【「失礼いたしました」と言われたときの「返事」は?】

「失礼いたしました」と相手が非礼を詫びてきた場面で、「こちらは全然気にしていませんよ」という気持ちを伝えるために、何と答えればよいでしょうか。

■目上の方や取引先に対して

・「とんでもないことでございます」

・「お気遣いなくお願いします」

・「お気遣いなさいませんように」

■同僚や親しい人に

・「どういたしまして」

・「お気遣いなく!」


【「失礼しました」を「英語」にすると?】

英語の表現も、3つのシーンに分けてご紹介しましょう。

■ちょっとした過失を詫びるとき

・I'm sorry I was not in yesterday.(昨日は留守にして失礼しました)

I'm  sorry that I could not meet your demands.(ご要望に沿えず申し訳ありません)

■別れの挨拶として

・Well, I must be going [leaving] now.(では、失礼いたします〕

・Excuse me, but I must be going now.(お先に失礼いたします)

自分の非礼を自覚した場面で

・Excuse me, but may I speak to you for a few minutes?(失礼ですがちょっとお話があります)

・Excuse me.(前を通るときに。失礼します)

・May I give you some advice?(失礼を顧みずご忠告申し上げます)

***

「失礼いたしました」が使えるのは、「相手への礼を欠いた場面」のみ。「マナーに反してしまった」程度のことに対するお詫びですから、相手に迷惑をかけた場面など、謝罪の言葉としては不適切です。とはいえ、「長文にて失礼いたしました」など、気遣いの言葉として使えば、相手に誠実でソフトな印象を与えられる言葉です。上手に使いこなしたいものですね。

この記事の執筆者
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