「煩雑」は「込み入って煩わしいこと」という意味の言葉です。「いろいろなものが入り混じっている」という意味では「繁雑」や「複雑」と共通した意味をもちますが、「煩雑」には「煩(わずら)わしい」というネガティブな気持ちが含まれているため、扱いには少々注意が必要です。正確な意味と使い方を解説しましょう。

【目次】

ネガティブな感情を含んだ言葉です。
ネガティブな感情を含んだ言葉です。

【「煩雑」を理解するための「基礎知識」】

■読み方

「煩雑」は「はんざつ」と読みます。「ひんざつ」は誤読なので気を付けてくださいね。

■意味

「煩雑」とは「込み入って煩わしいこと」を意味します。「煩」は「火」と「頁」とを合わせた字。「頁」は「頭」を意味するため、「煩」は「頭が熱して痛むこと」や「かき乱す」という意味になります。ここから「煩(わずら)い」、つまり「心配。苦労。面倒。迷惑。病気」などの意味をもつようになりました。恋の病を「恋煩(こいわずら)い)」と言いますね!


【「煩雑」と「繁雑」はどう違う?】

「繁雑」は「なすべきことなどが多すぎて、ごたごたしていること」という意味です。『日本国語大辞典』では「煩雑・繁雑」はひとつの項目にまとめられており、ほぼ同じ意味の言葉ですが、厳密には、「煩雑」が「入り組んで煩わしい」意であるのに対して、「繁雑」は、「事柄が多い」という意味が強くなります。


【「煩雑」の「類語」「言い換え」表現】

■複雑

「煩雑」「繁雑」「複雑」は似た意味の言葉です。共通しているのは「雑」という文字が使われていること。「雑」という字は「いろいろなものが入り混じっている」という意味があり、「複雑」は、「複雑な心境」などと使われるように、「いろいろな要素が重なり混じって解決しにくい、説明しにくい」という意を表わします。

■煩瑣(はんさ)

「煩瑣(はんさ)」は「こまごまとして、煩わしいさま」を表す言葉ですが、口頭で使われることは少ない、書き言葉です。

■面倒、厄介

「面倒」と「厄介(やっかい)」は、「煩わしい」という意味で、ほぼ共通しています。また、「親の面倒を見る」「友人の家に厄介になる」のように、「世話すること」や「世話になること」も表します。


【ビジネスでの「使い方」がわかる「例文」3選】

「煩雑」という言葉には、「煩わしい」というネガティブな気持ちが含まれています。そのため、ビジネスシーンで使用する際には注意が必要です。例えば、「煩雑な作業となりますが、よろしくお願いします」などと使ってしまうと、相手は「煩わしい作業だとわかっていて、あえて頼んでくるのか」と受け止めてしまうかもしれません。この場合は「繁雑」や「複雑」を使うのが適切です。

■1:「煩雑な手続きが次々に重なり、納期には間に合いそうにない」

■2:「事態は煩雑を極め、一向に解決の兆しが見えなかった」

■3:「煩雑な事務手続きに関しては、早急に簡略化の検討が必要だ」

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「煩雑」は事態が「混み合っていること」を示す言葉ですが、そこには「煩わしい」というネガティブな感情も含まれます。そのため、ビジネスで使用する際には慎重さを求められる言葉です。「繁雑」や「複雑」などの言葉と正しい使い分けを心掛けたいですね。

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館)/『使い方の分かる 類語例解辞典』(小学館) /『一生分の教養が身につく! 大人の語彙力強化ノート』(宝島社)) :