「今日も推しが尊いっ」「大谷翔平、尊すぎる~」こんなフレーズをSNS上で目にすることがあります。「尊い」という言葉の意味から言わんとしていることは理解はできると思いますが、実際に大人が使う文言としてふさわしいのでしょうか? ビジネスで、また目上の人へ使っても問題ない? 今どきの「尊い」の使い方をおさらいしましょう。
【目次】
【若者言葉の「尊い」とは?「正確な意味」など基礎知識】
■どう読む?
古風な読み方では「たっとい」となりますが、若者が使う「尊い」は通常通り「とうとい」と読みます。
■普通の「尊い」と意味が違う?
まず、「尊い」の本来の意味をおさらいしてみましょう。「尊い神仏」というような場合は「崇高で近寄りがたい。神聖である。また、高貴である」といった意味に。「尊い命」といったら、「極めて価値が高い。非常に貴重である」ということ。また、「高徳である。ありがたい」といった意味もあります。
SNS上に氾濫する「尊い」は、「本来の意味を超越するほど素晴らしく、ほかに比べるものがないくらい好きである」といった意味で使われています。また、ネット上では「素晴らしすぎて天にも昇りそうなこと」を「尊死(とうとし・たっとし)」とも言います。
■いつから?
10年ほど前から、好きなアイドルやアニメキャラクターなど“推し”への最上級の賛辞として使われ出したもの。いわゆる“オタク用語”が、俗語として一般化したものと思われます。オタク用語の一般化は珍しくありません。いくつか例を挙げてみましょう。
・推し:人にすすめたいほど気に入っている人や物、行動。「推しメン」「推し活」など。
・沼:どっぷりハマってしまうこと。「沼落ち」「韓ドラ沼」など。
・布教:自分の推しを広めるための活動のこと。「布教用にも購入する」など。
■どんなふうに使われる?
最上級の誉め言葉である「尊い」なので、感動や興奮が抑えきれないほど感情が高まった際に使います。
【使い方がわかる「例文」5選】
先日幕を閉じた第5回WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の準決勝・決勝戦の際には、きっと多くの「尊い」が飛び交ったことでしょう。若者がどのように使っているのか、WBC以外でも例を挙げてみます。
■1:「14年ぶり3回目の優勝、侍ジャパン尊い!」
■2:「大谷とトラウトの一騎打ち、尊すぎる!」
■3:「不振にあえいだ村上様、最終的に尊し!」
■4:「ドラマ『星降る夜に』の一星のストレートさが尊くて泣ける」
■5:「尊すぎて逆につらい…」
確かに“オタク言葉”から“一般的な俗語”へと昇格した感のある「尊い」ですが、社内の仲間内や親しい間柄ならともかく、仕事で“若者言葉”としての「尊い」を使うのはNGと心得て。もちろん、上司や取引先との会話やメールも厳禁です。
【今どきの「尊い」の「類語」、ビジネスOKの「言い換え」表現は?】
■類語
「最高である」ことを別の言葉で表すなら、下記のような言葉が「尊い」の類語といえそうです。
・エモい ・愛しい ・神 ・仏さま ・天使 ・〇〇しか勝たん
■ビジネスOKの言い換え
・素晴らしい ・最上級 ・期待以上 ・想像を超える
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最上級の誉め言葉である今どきの「尊い」。ビジネスシーンで使うことはなさそうですが、コミュニケーションを図るためにはこういう“若者言葉”も知っておく必要がありますね。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『情報・知識imidas』集英社/『推しが尊すぎてしんどいのに語彙力がなさすぎてしんどい―腐女子の感情類語辞典―』(一迅社) :