「十把一絡げ」は、稲を10把で1束と数えることから生まれた言葉です。「いろいろな種類のものを無差別にひとくくりにする」という意味で使われていましたが、今では「価値のないものとして雑に扱う」というニュアンスで捉えている人が多いのではないでしょうか。今回は「十把一絡げ」本来の意味や由来を解説。正しい読み方の理由もご説明します。

「【目次】

多く批判的なニュアンスが伴います。
批判的なニュアンスが伴います。

【「十把一絡げ」を正しく理解するための「基礎知識」】

■読み方

「十把一絡げ」は「じっぱひとからげ」と読みます。「じゅっぱ」と読みたくなりますよね? 実は「10」という数字は、うしろにくる助数詞によって、「じゅう」のほか、「じっ」と「じゅっ」という読み方に分かれるのです。助数詞とは、「本」や「個」をはじめ、今回取り上げる「把」のような、数を表す語に沿える接尾語のこと。日本語の伝統的なかたちとしては、「カ・サ・タ・ハ行」などの音で始まる助数詞がうしろにくると、「10」は促音化して「じっ」となるのが習慣です。そして現在、「わ」と読まれている「把」は、もともとは「は」と読み、「ハ行」の助数だったのです。

ですから、伝統的な読み方としては、「10本」は「じっぽん」、10個は「じっこ」であり、「10把」も「じっぱ」と読むのです。「カ・サ・タ・ハ行」以外の助数詞、例えば「枚(まい)」や「人(にん)」は「じゅうまい」「じゅうにん」が正解です。しかしながら現代では、「10」を「じっ」と読む習慣は薄れつつあり、ほとんどが「じゅっ」という読み方へ移行する傾向にあります。そのため、「10本」を「じゅっぽん」、「10個」を「じゅっこ」と読むのは「新しい発音」として認知されつつあります。「10把」を「じゅっぱ」と読むのも間違いとまでは言えず、『日本国語大辞典』も、「じゅっぱひとからげ」という見出しでも、「十把一絡げ」を掲載しています。

とはいえ、「十把一絡げ」は慣用句として使われてきた言葉ですから、「じっぱひとからげ」という読み方は、ぜひ覚えておきたいですね!

■意味

「十把一絡げ」には大きくふたつの意味があります。
・いろいろな種類のものを無差別にひとまとめにして扱うこと。
数は多くてもひとつひとつ取り上げるほどの価値がないものとしてひとまとめに扱うこと。
どちらかといえば、「十把一絡げ」はふたつめの、「価値がないものとしてひとまとめに扱う」というネガティブなイメージが強い言葉です。例えば「十把一絡げに扱われた」というように、雑な扱いを批判するような意味合いで使われることも多いので、この言葉を使う際には十分な注意が必要です。

■ 由来は?

「十把一絡げ」の「把 」は、人間の片手で握った程度の太さの束を数える際に使われる助数詞で、「小松菜2把」や「線香3把」などと使われます。とりわけ「稲は10把で1束と数える」ことから、10把の稲をひと束にまとめている状況のことを「十把一絡げ」と表現するようになりました。ですから、本来の「十把一絡げ」の意味にネガティブなニュアンスはなく、単に「無差別にひとまとめにして扱う」という意味を表していた言葉でした。


【「使い方」がわかる「例文」3選】

■1:「一世を風靡したヒット商品も、流行が過ぎればワゴンゼールで十把一絡げで売られてしまうものだ」

■2:「単に“世代”という括りで十把一絡げで扱われるのは、誰にとっても不愉快なものだ」

■3:「多様性が尊重される今の時代に、女性だからと十把一絡げに論じる部長の感覚は、かなりの時代錯誤だと言わざるを得ない」

1〜3は、「ひとつひとつ取り上げるほどの価値がないものとして、何もかも一緒くたに扱うこと」という意味で「十把一絡げ」を使っています。日常の会話では、こういった用いられ方がほとんどです。ネガティブなニュアンスが伝わってきますね!


【「類語」「言い換え」表現】

■「無差別にひとまとめにして扱う」という意味に近いのは

・一括 ・ひとまとめ ・ひと山 ・一元的

「一括」はシンプルに「ひとつにまとめること」という意味です、「ひと山」は果物や野菜などを積み重ねたひと塊を指して使います。「一元的」とは「すべての事物の種々の現象の本質を、ただひとつのものと見る様子」。「複数のものをひとつにまとめて考える」という点で「十把一絡げ」と同義の言葉です。

■「価値がないものとしてひとまとめに扱う」という意味に近いのは

・寄せ集め ・二束三文

「寄せ集め」とは「何かをするために必要な数を集め揃えること」。「二束三文」は「数量が多くても、値段がごく安いこと」です。価値のないものとして安価に扱うという意味で「十把一絡げ」と共通したニュアンスをもっています。ほかには「いっしょくた」「ごちゃまぜ」などが「十把一絡げ」の言い換え表現として挙げられます。どれもカジュアルな印象の話し言葉ですね。


【「十把一絡げ」の「対義語」は?】

■個別扱い

「個別」は「全体を構成しているものを切り離したひとつひとつ」を意味します。

■多元的

「多元的」とは「物事の要素・根源がいくつもあるさま」。「十把一絡げ」の同義語としてあげた「一元的」の対義語です。

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いかがでしたか? もともとの言葉の由来としてはネガティブな意味はないとしても、いざ自分が「十把一絡げ」に扱われたら、愉快な気持ちにはなれそうにありません。誰かを不快な気分にさせないためにも、「十把一絡げ」を使う際には、相手や状況を慎重に判断する必要がありそうです。

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『使い方の分かる 類語例解辞典』(小学館) /『数え方の辞典』(小学館) /『角川類語新辞典』(角川書店) :