旅の行き先ランキングで1、2を争う人気の北海道。本州とはスケールの異なる雄大な自然や、ご当地グルメなどさまざまな魅力に溢れますが、実は日本で一番、温泉地が多いスポットでもあるのをご存知でしょうか。旅行の際は、北の大地から湧き出た湯のよさもたっぷり堪能したいところです。

そこで、温泉ジャーナリストの植竹深雪さんに、北海道の名湯をピックアップしてもらいました。今回ご紹介するのは、函館市にある湯の川温泉「割烹旅館 若松」です。

植竹深雪さん
温泉ジャーナリスト
(うえたけ みゆき)全国各地の3000スポット以上を巡っている温泉愛好家。フリーアナウンサー、温泉ジャーナリストとして、テレビ番組をはじめ、さまざまなメディアで活躍中。著書に『からだがよろこぶ! ぬる湯温泉ナビ』(辰巳出版)がある。
公式サイト

国内外の要人をもてなした老舗旅館で絶景露天風呂を堪能

創業は大正11年(1922年)。令和4年に100周年を迎えた「割烹旅館 若松」は、古き良き歴史と伝統を今に受け継ぎながら、洗練されたおもてなしサービスを提供してくれる全22室の老舗旅館。

「若松は湯の川温泉の貴重な自家源泉を持つ湯宿。玄関の前の東屋では、天然温泉が尽きることなく湧き続ける様子を目にすることができ、到着早々、湯旅の気分が盛り上がります」(植竹さん)

「若松」の玄関。手前の東屋では源泉が絶え間なく湧き続けている。
「若松」の玄関。手前の東屋では源泉が絶え間なく湧き続けている。

重厚感あるお屋敷のような玄関から足を踏み入れると、館内は和の情緒溢れる優雅な空間。格調高い調度品や手入れされた中庭など見どころも満載です。

一枚板で造られたテーブルは圧巻。
一枚板で造られたテーブルは圧巻。
アンティークな時計など調度品も目を引く。
アンティークな時計など調度品も目を引く。

そんな風情豊かな老舗旅館では、心洗われるようなオーシャンビューの温泉も自慢のひとつだと植竹さん。

「温泉は、男女別の露天風呂と内湯が1か所ずつ。露天風呂は津軽海峡を間近に望む造りで、開放感がたまりません。心地よい海風を感じ、潮騒に耳を傾けながらの湯浴みは至福のひととき。内湯も一面ガラス張りで眺望抜群です。泉質は塩化物泉。無色透明でしっとりとした肌ざわりですが、敷地内の自家源泉から湧き出したばかりの湯は力強さも感じられ、心身の疲れを十二分に癒すことができました」(植竹さん)

目の前に海が広がる露天風呂。
目の前に海が広がる露天風呂。
檜の香りが漂う内湯からも津軽海峡を望める。
檜の香りが漂う内湯からも津軽海峡を望める。

昭和天皇・皇后両陛下をはじめ国内外の要人をお迎えしてきた「割烹旅館 若松」では、客室でも極上の寛ぎ時間を提供。和室、メゾネットルーム、特別室と種類がありますが、どのタイプもオーシャンビューです。日頃の喧騒を忘れて、客室からの眺めにも酔いしれてみてはいかがでしょうか。

客室からの見事な眺め。
客室からの見事な眺め。
昭和天皇がお泊りになられた大部屋を再現した特別室。
昭和天皇がお泊りになられた大部屋を再現した特別室。

京都で修業を重ねたシェフが手掛ける本格会席コースは至福の味わい

「出汁が絶品」との呼び声が高い会席コース。
「出汁が絶品」との呼び声が高い会席コース。

「割烹旅館 若松」は、宿名に“割烹”を掲げるだけあり、料理もミシュランのお墨付き。京都で修業を重ねた料理長が北海道の旬の食材を駆使して、目でも舌でも楽しめる会席コースを演出してくれます。

「純和風の本格会席コースのは出色のクオリティ。温泉以上に、ここでの食事を目的に訪れる価値があるといっても過言ではありません。先付にはじまり、前菜、煮物、お造りとどれも食材の素晴らしさもさることながら、その素材の引き出し方や出汁の繊細さ、見せ方の創意工夫など、家庭では絶対に再現できない匠の技に感動しきりです」(植竹さん)

盛り付けも細部まで趣向を凝らしている。
盛り付けも細部まで趣向を凝らしている。

「例えば、殻付きの雲丹に季節の野菜が添えられた一皿では、雲丹の下にペースト状のじゃがいもを軽く炙ったものが敷かれていました。外からは見えない細部まで手の込んだ演出が素敵です。また、お造りの醤油はジェル状で、海の幸のおいしさをより引き立ててくれます。さらに、訪問した時期が秋だったため、にんじんがもみじの形に飾り切りされていたり、椀物の蟹の真丈で菊の花弁が散らされていたりなど、季節感もたっぷりで、料亭ならではの特別な食体験を叶えてくれます」(植竹さん)

北海道の旬の素材が目白押し。
北海道の旬の素材が目白押し。
家庭では絶対に味わえない芸術的な料理の数々。
家庭では絶対に味わえない芸術的な料理の数々。
朝食の一例。
朝食の一例。

以上、「割烹旅館 若松」をご紹介しました。温泉や客室から心洗われるような絶景を堪能し、京風会席で胃袋も大満足。そんな贅沢なステイを叶えたい人は次の旅先候補のひとつに加えてみてはいかがでしょうか。

問い合わせ先

関連記事

WRITING :
中田綾美
EDIT :
谷 花生