リニューアルされた奈良のラグジュアリーホテル「登大路ホテル奈良」へ

最近、日本各地にオーベルジュが誕生しています。オーベルジュという言葉についてはもう説明不要ですよね? Auberge=フランスの田舎に多い、料理が自慢の小規模な宿、もしくは宿泊施設のあるレストラン。日本では1986年に、フランス料理の巨匠であった勝又登シェフが箱根で開業した「オーベルジュ・オー・ミラドー」が初めてのオーベルジュとされています。私がこちらに初めて行けたのは90年代後半だったでしょうか。当時20代のボーイフレンドとふたり、ちょっと緊張しながら食事したことをおぼえています。

なぜオーベルジュが増えてきたのか。そのひとつの大きな理由はパンデミックです。コロナ禍で海外へ出かけられなかった人々が国内へデスティネーションを求めたことでしょう。次に、国土交通省観光庁などお役所も“ガストロノミーツーリズム”に注目し始めていること。この“ガストロノミーツーリズム”とは、文字通り、美味しいものが食べたいがために旅することを指しています。この辺りは私の知人である柏原光太郎氏が最近刊行した『ニッポン美食立国論』(講談社)にくわしいので、ご興味あればぜひお読みください。

というわけで、私もオーベルジュへ。向かったのは奈良です。奈良は以前、オトナの修学旅行をテーマにご紹介したことがありましたが、今回は基本的にホテルにおこもりするステイでした。いつもは外のレストランやバーをホッピングし、ショッピングも楽しむ私ですが、今回はなぜ?

「登大路ホテル奈良」のロビー
「登大路ホテル奈良」のロビー

と言いますのも、今回ステイした「登大路ホテル奈良」が、まるで友人のお宅に招かれたかのようにゆったりくつろげる場所だったから。もちろんフツーの友人ではなく、超富裕層な友人のお宅に招かれた気分、です。ここ、けっこう重要なポイントですね(笑)。

「登大路ホテル奈良」のスイートルーム
「登大路ホテル奈良」のスイートルームからはお隣、興福寺の国宝・北円堂が見えます。

なぜ友人宅のようにくつろげるのか、と言えば、それはこのほどよい規模感の成せる技のよう。こちらは3階建ての建物に全13室。客室は広々としているのですが、エントランスやロビーはこぢんまり。もともとは企業の迎賓館として使われていたという由来にその秘密があるようです。15年前にホテルへとリニューアルされ、さらに昨年オーベルジュとしてさらにリファインされました。現在の客室はベージュを基調にシックなインテリア。窓からは隣接している興福寺のお庭が美しく望めました。ちなみに私がステイした303号室については私のインスタグラムにて動画でくわしくご紹介しているので、そちらをご覧いただくとして。

「登大路ホテル」のバー
1階の「ザ・バー」は宿泊客以外の利用もOK。国産ウイスキーのコレクションが充実。

さて、ここからが私を“おこもり”させた真の理由。食いしん坊の私をひきとめたのはずばり、美酒と美食なのでありました。「登大路ホテル奈良」代表取締役社長の川島昭彦さんから、ディナー前にはクラシカルな「ザ・バー」でのアペリティフ、ディナー用には階下のセラーで「お好きなワインを選んでください」という驚きのおもてなしが……!

「登大路ホテル」のワインセラー
階下のセラーにはDRCなど憧れのワインがズラリ!

「どれでもいいんですよ。さぁ選んで」と言われても、さあ困った。
「あ、DRC(ロマネ・コンティ)だ。飲んでみたいけど、ここでは流石に遠慮すべきでしょう。モンラッシェも、ピュリニーとかシャサーニュの“村名”は飲んだことあるけど、畑名としてのモンラッシュ(こちらのほうが数倍高い)は飲んだことないんだよな……」などなど、心中の長い逡巡が顔に出てしまったのでしょうか。見かねたソムリエさんがルイ・ラ・トゥールの「コルトン・シャルルマーニ1990」、ドメーヌ・アルローの「モレ・サン・ドニ2004」、「シャトームートン・ロートシルト2001」という素晴らしい3本をこの日のディナーに合わせて選んでくれました。あとで価格を調べて震えましたが、この時はひたすらうれしくて、美味しくて。

ホテル内「レストラン ル・ボワ」でのディナー

「登大路ホテル」のディナーより
この日のディナーより、「ハーブとハムの香りをつけた季節野菜」
「登大路ホテル」のディナーより
「奈良県産アマゴのムニエル焦がしバターソース」
「登大路ホテル」のディナーより
エゾマツの葉の香りで燻された「奈良県産・大和ポークのロースト」。

お待ちかねのディナーは、ホテル内の「レストラン ル・ボワ」にて。こちらは札幌でミシュラン3つ星を獲得している「レストランモリエール」の中道博シェフが監修しているのだとか。奈良と北海道から厳選された食材が中道シェフの卓越した技法によって昇華されたフランス料理、いやお見事でした。ワインも3本、きれいに空いちゃった。

「登大路ホテル」の地下サロン
地下のサロンでレコードと食後酒。

「もうおなかいっぱい」とはなっても、「もう飲めない」とはならない私。「食後にもう1杯いかがですか?」というありがたいお申し出を断るわけはありません。先ほどのワインセラーのさらに奥に、こんな秘密めいたサロンが隠されていたのでした。

ここでは食後のモルトウイスキーとともに、レコードで音楽を楽しみました。私は音響のことはまったくといってよいほどわからないのですが、英国製のウエストミンスター・スピーカーとやら、ナントかのアンプやら、とにかくハイスペックな機器がセットされているのだそうです。ただ私にわかったのは、その音のすばらしさ。爆音にしても耳に突き刺さることなく、まるでLIVEで聞いているみたい。いえ、LIVEより丸い音だったかも。いつまでも聞いて(飲んで)いたいと思う、贅沢な時間でした。

「登大路ホテル」のアメニティ
流石に少し飲みすぎたかな……焦って半身浴で汗をかきました。
「登大路ホテル」の朝食より
焼きたてのクロワッサンが美味しかった朝食。

翌朝。昨夜はあれだけ飲み食べしましたが、半身浴が効いたのか、それともそもそも美酒・美食は胃にもたれないのか、身体は軽くて爽快な目覚めでした。搾りたてのフレッシュなオレンジジュースと焼きたてクロワッサン、さらには白味噌の湯豆腐(これまた美味しかった!)で覚醒したら、もう出発の時間。友人の(しつこいけど富裕層のw)お宅でくつろいだような満たされた心地で、次のデスティネーションへ向けて旅立ちます。

【施設情報】

「登大路ホテル奈良」
TEL:0120-995-546
URL:www.noborioji.com/
料金:1泊1室朝食つき¥39,848~(シングルルーム)
アクセス:近鉄「奈良」駅から徒歩3分
住所:奈良県奈良市登大路町40-1

問い合わせ先

登大路ホテル奈良

この記事の執筆者
女性ファッション誌や富裕層向けライフスタイル誌、グルメマガジンの編集長を歴任後、アマゾンジャパンを経て独立。得意なジャンルに食、酒、旅、ファッション、犬と馬。
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秋山 都
WRITING :
秋山 都