今や女性のライフスタイルに不可欠な腕時計。日々を彩る装飾具以外の面でも注目が集まる昨今、好奇心は高まる一方。そこで、雑誌『Precious』9月号では、特集「今さら聞けない『ラグジュアリーウォッチの美学』」を展開。静的な芸術として独自の時計観をもつ、ウォッチジャーナリストで大学教授の並木浩一先生にその魅力をうかがいました!
なぜ人々は美しい時計に魅了されるのか? 専門家の視点から、わかりやすくひもときます!
今回は、「サステイナブルな時計の価値」についてお届けします。
Q:サステイナブルな時計にはどんな価値がある?
ゼンマイを巻いて動力とする機械式時計自体、手入れを繰り返せば、何年も使用できるサステイナブルな存在といえるでしょう。次世代への継承は「パテック フィリップ」の広告ビジュアルなどにも見られます。
それを踏まえてなお、時計界がサステイナビリティを意識した物づくりを推進している傾向は強い。再生素材の使用は、時計界でも顕著な動きの一例です。「カルティエ」のソーラー駆動式の『タンク マスト』に見られる、植物由来の再生素材を使用したストラップなどがそう。「ショパール」はすべてのウォッチ&ジュエリーで国際的な環境・社会基準を満たすエシカルなゴールドを採用することでサステイナブルな姿勢を見せています。
高級時計ブランドほど、国連が提唱するSDGsのいずれかに該当するような、持続可能性を追求する社会貢献活動に参画しているのです。「ヴァン クリーフ&アーペル」は、創業以来、ダンスとの深い関係を築き上げてきた歴史の集大成として「ダンス リフレクションズ by ヴァン クリーフ&アーペル」を2020年に創設。世界各地におけるさまざまなダンス団体や公演、オペラハウスなどを支援しています。
時計史に冠たる防水時計『フィフティ ファゾムス』で知られる「ブランパン」は、海洋保護活動「オーシャン コミットメント」を実施中です。海洋探査・調査を実施する「ゴンベッサ・プロジェクト」や手付かずの海域を調査する「原始の海」プロジェクトなど、膨大な数の取り組みのサポートを行っています。「ジャガー・ルクルト」は、優れた職人技を現代のデザインと結びつける「ミケランジェロ財団」とのパートナーシップにより、奨学金プログラム「ホモ・ファベール フェローシップ」を始動。才能溢れる若者と熟達した職人が2名1組となり、スキルの継承を行う取り組みです。
これらはほんの一例にすぎず、多くの時計ブランドがなんらかの社会貢献活動にコミットしています。ユーザーにとっては「ノブレス オブリージュ」的な発想のもと、時計に投じた代金がよりよい社会につながる点でも意義深いものですし、そんな時計を所有するという社会貢献が、自分自身をエンパワーしてくれることでしょう。実は、ラグジュアリーウォッチとサステイナビリティはとても深い関係にあるのです。(並木さん)
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- PHOTO :
- (C)Michelangelo Foundation
- WRITING :
- 髙村将司
- EDIT&WRITING :
- 安部 毅、岡村佳代、安村 徹(Precious)