2023年8月末に開催された「ジュネーブ・ウォッチ・デイズ 2023」。名だたるブランドが新作ウォッチを発表するこの機会に、Precious.jpもジュネーブを訪れました。
そして特別に、ブルガリ グループCEOのジャン-クリストフ・ババン氏にインタビュー。発表されたばかりの新作ウォッチについてやグローバル・ラグジュアリーブランドとしての今後の展開について語ってもらいました。
「ジュネーブ・ウォッチ・デイズ2023」で発表された新作ウォッチに注目!
まずは今回発表された新作ウォッチについて、ババンCEO自らが紹介してくれました。
「この『セルペンティミステリオーシ ハイジュエリー シークレット ウォッチ』は、元々クレオパトラから着想を得たアクセサリーをブルガリが75年前にシークレットウォッチとして再生させたというところから歴史が始まっています。
『ピコリッシモキャリバー』という世界最小のムーブメントを入れているという技術力の高さが魅力ですが、今回の『ピコリッシモキャリバー』は、巻くために取り外しができることが特徴です。キャリバーを外して、時計の向きを変えることができ、左手でも右手でも使いやすいように作られています。
そうすることで、修理に出している間に蛇の口を閉じてジュエリーとして使用することができますし、他の『ピコリッシモキャリバー』の時計と組み合わせて、また違う面を出せる、さまざまなバリエーションを楽しめるという点を誇りに思っています」
「女性はブルガリにとって、たいへん大切な存在です。例えば、ブルガリで働いている60%は女性ですし、お客様の90%以上が女性です。スイスの時計ブランドの大半がメンズを中心にしていますが、ブルガリは女性のためのウォッチメイキングから始まったブランドです。ですので、時計全体の75%以上が女性向けとなっています。
そういうところでは、とてもユニークなブランドだと思っていますし、ただ時計製作だけを行なっている会社ではないというところは、改めて強調したいと思います。
そして先ほど女性と言いましたが、今、ブルガリも女性だけではなくダイバーシティなど、括りに関わらず幅広い方々に目を向けています。
そこが明確に表れているところが、日本であれば森 星さん、アメリカではゼンデイヤさんといった、各地のアンバサダーを選ばせていただいている点です。そういった方たちの力をお借りしながら、グローバルに幅広い方へと寄り添えるブランドになっていきたいと思っています」
グローバル企業として、ブルガリが大切にしていること
グローバルな活動に加えて、CSR(企業の社会的責任)活動にも積極的に取り組んでいるブルガリ。実際の取り組みとはどのようなものなのでしょう。
「他のブランドも含めた業界全体の底上げのために、従業員の働き方、環境には常に気を配っています。また、オンリーウォッチというオークションを秋に開催予定で、1点ものの時計を出品。難病に対する寄付を行なっています。そういったものに参加していることもブランドとして大切にしている活動ですね。ほかには、パルファムの製造設備を使って、消毒キットを提供したりという活動や、歴史的なものを保存していきたいということで、スペイン階段の修復に大きな支援を行っていたりしています。
そして、環境面においてもリーディングカンパニーでありたいと思っており、パッケージに関してのプラスティックフリーなども進めています。そういった次世代に向けての活動にはこれからも注力していくつもりです。
付け加えると、ヴァレンツァのジェエリーの工房では、非常に革新的な取り組みをしています。ソーラーパネルや地熱を利用してエネルギーを得ているので、環境へのインパクトゼロを実現しており、近隣地域に対してもそのエネルギーを利用してもらうという取り組みを進めています。私たちはこの取り組みをたいへん誇りに思っていますね」
これからの10年、未来に向けたヴィジョンとは?
ブルガリのCEOに就任されて約10年となりますが、これからの10年の展望はいかがですか?
「次の10年、ブルガリ本来の根底にあるユニークなローマンDNAを生かして、そこからエキサイティングないろいろな夢を実現していきたいと思っています。
ブルガリはただのジュエラーではない。ウォッチメーカーでもあり、レザーやパルファムなども高い技術をもっている。そして、東京にもオープンしましたが、ホテルというのも大きな主軸のひとつです。これらの要素をすべて含めて、今後の10年、さらに大きくブランドを成長させていきたいと思っています。
そこで重要になるのが、ブルガリを通じて、『体験』を提供することだと考えています。
ホテルがあるというのはブランドとしてユニークで、いろいろな体験を提供することができます。ホテル滞在というのは24時間、48時間と長い時間を過ごすので、その時間の中でさまざまな体験を提供できますし。そうしたプロダクトを通した体験、プロダクトだけではない体験を提供していければ、それは今後、大事なリソースになっていくと思っています。
そうして「いちばん愛されるブランドになる」というのが今後のヴィジョンであり、ある意味、宣言ですね」
最後に、「ありがたいことに7,000人を超える従業員が頑張ってくれているので、これからの成功は約束されていると確信しています」と笑ったババンCEO。
ホスピタリティに溢れたその姿勢は、今回の「ジュネーブ・ウォッチ・デイズ2023」にも表れていました。主催したこのフェアを、ただの新作発表の場とは捉えておらず、他ブランドとの交流、新興ブランドが新たなチャンスを得る機会にしたいと語り、その視線は常に先を見つめているようでした。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- PHOTO :
- Yas