クルマに詳しくない方でも「フェアレディZ」の名はご存じなのでは? その歴史は1969年からと古く、スポーツカーでは世界的にも類を見ない長寿モデルなのだそう。また、海外でも販売されていて、欧米のスポーツカーにも比肩する性能を誇りながら手軽な価格設定ということもあり、北米では日本製スポーツカーの代表格として知られています。
ミュージカルの古典「マイ・フェア・レディ」から引用されたとされる車名は、記号や数字の車名が多い現代において特別な響きをもっています。車名に惹かれ、美しいスタイリングに惹かれて手に入れたら、きっとハンドルを握るたびにますます好きになっていくはず。伝統の名を受け継ぐ最新モデルを通して、その魅力をご紹介します。
美しいプロポーションを保ちながらアップデート!
「フェアレディZ」はこれまで7世代にわたって製造されていますが、どれも一目でそれとわかるスタイリング。横から見たときにノーズ(エンジンが収まる前方部分)が長く、屋根から後ろにかけてなだらかな曲線を描き、後端が切り立ったプロポーションは、欧米のスポーツカーでトレンドとなったデザインに端を発しています。特に斜め後ろからの姿は絶品で、スポーツカーに性差を用いるのはナンセンスかもしれませんが、フェアレディという名にふさわしいとびきりのエレガンスを醸し出しています。
最新の「フェアレディZ」には、大ヒットした初代を想起させるデザインが取り入れられています。もっとも、それは単なる懐古主義にあらず。現代のスポーツカーにふさわしい大胆かつ精緻な設計によって、「モードなフェアレディZ」を表現しています。
乗車定員は2名まで。かつては車体を少し伸ばして後席を備えたモデルも存在しましたが、特有のエレガントなスタイリングは前後がきゅっと締まった車体でこそ映えます。そうした美を追求するつくり手の姿勢にも惹かれます。
日本人の感覚にフィットするつくりのよさ
現代のスポーツカーはAT限定免許で運転できる2ペダル仕様が一般化しており、「フェアレディZ」では時代に先駆けてATモデルが用意されていました。以前、当記事の記者が最新モデルのマニュアルトランスミッションのモデルを運転したとき、気持ちとエンジンの高ぶりがリンクしてとても楽しかったのを記憶しています。
が、率直に言って今回運転したATモデルも十分楽しい! と感じられました。ゆっくりと走っているとき、少し加速したいと思ってアクセルペダルを踏むとしっかりとパワーが出て、スピードの伸びに合わせて滑らかに変速していく気持ちよさは、スポーツカーならでは。
ちなみにATは9段変速。スポーツ自転車の変速機をイメージするとわかりやすいと思いますが、走行状況に合わせて細かく変速できるのが多段変速のメリット。自動的に行われるシフトアップ/シフトダウンも滑らかで、意図せずぎくしゃくした乗り心地になることもありません。また、エンジン音(と排気音)は迫力がありますが、周囲を威圧するほどではなく、そんなところもエレガント。あくまでも普段使いに適したスポーツカーなのです。
さらに2人乗りの車体は前後の長さが短いため、交通量の多い街中での運転や駐車場での取り回しに気を使うことが少なくて済み、カーナビやオーディオの操作、空調の調節などもわかりやすくレイアウトされています。小物入れも充実し、シートの後ろは荷室とつながっているため、荷物を置きやすいのも特徴。日本人の感覚にフィットするつくりは、さすが日産のロングセラーモデルですね。
自分の体が中心にいるから気持ちいい
「フェアレディZ」を運転していると、“自分が中心にいる”ことを強く感じます。自己チューという意味ではありません。2人乗りの「フェアレディZ」は、車体を上から見たときにドライバーが前後の中心近くに座るよう設計されています。シートに深く腰掛けて運転していると、特にカーブを曲がっているときに、お尻のあたりを軸にして4つのタイヤが踏ん張っている感覚が味わえます。体とクルマの動きが連動しているようなこのフィーリングこそ、スポーツカーを操る最高の楽しみなのです。
「フェアレディZ」に複数の友人や家族を誘うことはできませんが、そのぶん特別な自分時間を満喫できるのが、このクルマの魅力。汗をかかずにスポーツ自転車を漕いだときのような爽快感が楽しめて(もちろんアクティビティとしての自転車も楽しいですよ!)、普段使いから旅まで快適にこなすエレガントなスポーツカーを、人生のパートナーに選んでみませんか?
【NISSAN FAIRLADY Z Version ST】
ボディサイズ:全長×全幅×全高:4,380×1,845×1,315mm
車両本体価格:6速MT/9速ATともに¥6,657,200
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- 櫻井 香さん ライフスタイルエディター