【目次】

【「早い」と「速い」のそれぞれの「意味」と「違い」】

「意味」 

まずは『デジタル大辞泉』で「はやい」を検索してみましょう。

【早い/速い】
1)(速い)ものごとの進む度合いが大きい。動作・進行などがすみやかである。「足が―・い」「返事が―・い」「流れの―・い川」「のみこみの―・い人」対義語:遅い。
2)(早い)ある基準より時間があまり過ぎていない。また、ある基準より時期が前である。「朝―・い電車に乗る」「―・いうちに手を打つ」「卒業が一年―・い」「梅雨入りが―・い」対義語:遅い。
3)(早い)まだその時期ではない。その時がまだきていない。「結婚するにはまだ―・い」「あきらめるのは―・い」
4)(早い)簡単である。てっとり早い。「調べるより聞くほうが―・い」「自分でするのがいちばん―・い」
5)(「…するがはやいか」「…するよりはやく」の形で)時間をおかないで次の動作やものごとが行われるさまを表す。「家に帰るが―・いかテレビの前に座り込む」→早く
※1)の「流れのはやい川」などでは「疾い」「捷い」とも書く。

このように、「はやい」には5つの意味があり、「早い」と「速い」の使い方は、はっきりと区別されています。「速い」は1の「ものごとの進み方がはやい」という意味だけで使われ、「早い」のほうが「速い」よりも広義に使われていることがわかります。

■「違い」

「早い」と「速い」。このふたつの「違い」を明確に理解するには、その文字を使った熟語を例にあげると、よくわかりますよ。

「早」を使った熟語……早計(はやまった考え)、早晩、早熟、早春、早朝、早合点、早飯
「速」を使った熟語……速戦、速達、速断、速度、速報、速攻

「早」を使った熟語はどれも「ものごとを始める、あるいは終える時期や時刻が、基準よりも前である」ことを示す言葉です。対して「速」の熟語は「一定の作業を行ったり距離を移動するのに要する時間が少ない」ことを表しています。また、「早い」は「手っ取り早い」のように、「ものごとを急いで行う様子」の意味にも用いられます。
例えば、「私はいつもよりはやく駅に向かった」の場合は、「いつも駅に向かう時間(基準)より前」なので、「早い」を使います。対して「私はいつもよりはやく歩いて駅に向かった」なら、「駅までの所要時間は短くなる」ため「速い」を使います。


【使い分け」の法則は?】

「早い」と「速い」の使い分けに迷ったときの法則を整理してみましょう。

■「早い」はタイミングや時刻・時期が「はやい」。「時間が短い」の意味も

・「一定の時刻や時期よりも前に行われること」全般に「早い」が使われます。何かものごとを行ったり終えたりする「タイミング」や「時刻」「時期」が基準よりも「はやい=前」の場合は「早い」。例)いち早く。早起き。早めに来る。

「ものごとを急いで行う様子」や「時間が短い」の意味にも用いられる。例)早食い。素早い。早送り。

■「速い」はずばり「スピード」

作業のペースが速ければ、走行距離は伸び、作業量は増え、かかる時間は短くて済みますね。例)決断が速い。速足。


【これはどっち?】

ではここでクイズです。何問正解できるでしょうか? 例文とともにご紹介します。

■スピード

・彼は企画書をつくるスピードが速い

これは簡単ですね! 「速度」を示すのは「速い」です。

■時の流れ

これは難問です! 時が流れるスピードのようにも解釈できますが…

・月日が経つのは早いものだ

こちらは「早い」を使うことが多いようです。これは、主観的に「時間が短い」と感じるという意味で、「早い」が使われているようです。「10年後なんてまだまだ先のつもりでいたのに、“早くも”その時がきてしまった」ということですね。「早送り」や「素早い」と同じような用法です。

■足

・この食品は足が早い
・私は子どものころから足が速い

こちらは「早い」と「速い」のどちらも成立します! 「(食品の)足が早い」は、「腐りやすいという意味になります。

■メールを打つ

・彼女はメールを速く打つのが得意だ

これは「速度」「スピード」を示しているので「速い」ですね。

■対応

・素早い(迅速な)対応に感謝します。

「タイミング」を示す内容には「早い」が適切ですが、熟語としては「迅速」もよく使われますね。

■仕事

・この仕事は予定よりも早く終わりそうだ
・彼は仕事の処理が速い

「仕事がはやい」については、どちらも使われています。納期よりも前に納めるといった意味合いであれば「時」のことを話しているので「早い」、仕事をこなすスピードが人より勝っているなら「速い」が正解ですね!

■頭の回転

・彼は頭の回転が速い

これはスピードの問題ですから「速い」が正解です。


【それぞれの「言い換え」「類語」表現】

「早い」 

・類語:急いで、先に

・対義語:遅い

■「速い」

・類語:速やか、迅速、スピーディー

・対義語:遅い、鈍(のろ)い、ゆっくり


【それぞれを「英語」で言うと?】

基本的に、「時間が標準より前である」という意味の英単語は[early]です。一方、「速い」を表現する英単語には、「敏速な」を意味する[quick]、「継続した動きが速い」ことを示す[fast]、「急速な」という意味の[rapid]、「高速度の」なら[speedy]などがあります。

・私は走るスピードが速い(=私は足が速い)
→ I am a fast runner.

・月日が経つのは早いものだ
→ Time flies.
→ Time  goes by​ so fast.

・この食品は足が早い
This food spoils quickly.

・私は子供の頃から足が速い
can run fast since I was a kid.

・彼女はメールを速く打つのが得意だ
→  She is good at typing emails quickly.

・素早い(迅速な)対応に感謝します。
→ Thank you for your quick response.

・この仕事は予定よりも早く終わりそうだ
→ I think I will finish earlier than expected.

・彼は仕事の処理が速い
→  He works quickly.

・彼は頭の回転が速い
→ He can think fast. 
→ 
He is clever.

***

「早い」と「速い」の使い分けに迷ったら、「速いはスピード!」と思い出してくださいね。「早朝」や「迅速」など、熟語を考えて見るのも、判断の基準となります。また、「はやい」を表す漢字には「早い」や「速い」のほかに、「疾い」や「捷い」もあります。例えば「流れのはやい川」などは、「疾い」「捷い」とも書き、「速い」と同じ意味合いで使われていますが、こちらはさらに瞬間的なスピード感を強調した表現となっていますよ。漢字は実に奥深いですね!

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) /『プログレッシブ和英中辞典』(小学館) /『新選漢和辞典Web版』(小学館) /『角川類語新辞典』(角川書店) :