寒さが過ぎった春の季節になると、和菓子店をピンク色に染める桜餅。見ているだけで、春の訪れを感じられますよね。日本には春夏秋冬という四季折々の文化があり、なかでも旬を意識した食べ物は、仕事などで忙しい毎日を癒してくれるパワーフードになります。

そのため、「季節ものだから」と、近辺で目についた桜餅を選ぶのはもったいない! 今年は忘れられないような、絶品な桜餅を食べてみませんか? 今回は、菓子文化研究家の原 亜樹子さんに、おいしすぎて癖になるシンプルな桜餅を教えていただきました。どれも食べた瞬間、思わず目が丸くなるはず。感動的な味を堪能してみましょう!

■1:しっとりとした味わいが魅力「御菓子司 文銭堂本舗」の『桜餅』(新橋駅)

淡いピンク色が手土産にも喜ばれそうな『桜餅』(税込184円)
淡いピンク色が手土産にも喜ばれそうな『桜餅』(税込184円)

日本有数のオフィス街である新橋に本店を構える「御菓子司 文銭堂本舗」は、昭和23年創業になる和菓子店。毎朝、新橋の工場で職人の手によってつくられた和菓子は、定評があります。原さんに「御菓子司 文銭堂」の桜餅について、お聞きしました。

「『文銭最中』(税込¥130〜)や『手付け最中 学問のすゝめ』(税込¥1,404)といった最中で知られる同店ですが、季節の生菓子も秀逸です。淡い紫色のあんが包まれたしっとりとした焼き皮生地の『桜餅』(税込¥184)は、品のよさのなかにも力強さがあります」(原さん)

『桜餅』以外にも、白あんと苺が一粒入っている関西風桜餅『いちご道明寺』(税込¥238)のような、バラエティ豊かな桜餅もあります。「御菓子司 文銭堂」の田口さんに、商品のこだわりについてお話をお聞きしました。

「しっとりとした皮と皮むきあんのバランスの良い桜餅は、ご自宅用から会社のおやつ、ご贈答用と幅広くご利用いただいております。お子様にも人気で、毎年好評をいただいております」(田口さん)

まさに、食べ比べをしたくなるような手の込んだ和菓子の数々。あなたはどの桜餅を食べてみますか?

問い合わせ先

  • 御菓子司 文銭堂本舗
  • 営業時間/[月~金]9:00~19:00 /[土曜]9:00~16:00
  • 定休日/日曜日・祝日
  • TEL:03-3591-4441
  • 住所/東京都港区新橋3-6-14

■2:桜葉の香りとこしあんにうっとりする「秋色庵大坂家」の『秋色さくら餅』(三田駅)

『秋色さくら餅』(税込¥230)は、見ているだけで癒されそうなかわいい形!
『秋色さくら餅』(税込¥230)は、見ているだけで癒されそうなかわいい形!

「秋色庵大坂家(しゅうしきあんおおさかや)」という店舗名、一度は聞いたことがありませんか? それもそのはず、元禄年間(1688~1703年)創業・300年の長い歴史を誇る、老舗中の老舗和菓子店なのです。

江戸時代、大坂(現在の大阪)から江戸へと移ってきた「秋色庵大坂家」。どこかキリッとした印象の和菓子が並びますが、桜のつぼみをイメージした『秋色さくら餅』(税込¥230)は、その独特の形も特徴。滑らかなこし餡と桜葉の香りが口の中で一体になる瞬間がたまりません」と原さん。

春の季節菓子として親しまれている桜餅。『秋色さくら餅』の商品名に秘められたこだわりはどういうものなのでしょうか? 「秋色庵大坂家」の倉本さんに、そんな桜餅にまつわるお話をお伺いしました。

300年の長い歴史を誇る老舗和菓子店『秋色庵大坂家』
300年の長い歴史を誇る老舗和菓子店『秋色庵大坂家』

「春のお菓子なのに、『秋色さくら餅』という菓銘。違和感を覚える方もいらっしゃいますが、秋色女(しゅうしきじょ)という女流俳人が手前どもの先祖におりまして、彼女にちなんで名付けたものなのです。宝井其角の弟子として元禄の頃に活躍し、数多くの浮世絵や講談にも取り上げられた彼女ですが、若干13歳にして才能を開花させたことから、その史実にあやかり、つぼみを模した形に仕上げた桜餅です。なのでぜひ、葉をむいてからお召し上がりくださると幸いです」

まさに銘菓に歴史ありと言えそうです。ほかにも季節にちなんだ和菓子が店先を彩っています。

「春を迎えるこの時期ならではのお菓子として、3月限定の『菜の花』(税込¥300)もオススメです。一年を通して人気のある定番の「君時雨」に柚子を練り込み、菜の花そっくりに仕上げました。期間限定の人気商品です」

和菓子は洋菓子と比べると、お茶会というようなかしこまった席で食べるイメージがありますが、今は少し変わっているようです。

黄色が眩しい『菜の花』(税込300円)は、季節を感じさせる和菓子
黄色が眩しい『菜の花』(税込300円)は、季節を感じさせる和菓子

「最近では小さなお子様連れのご来店も増え、ウインドーの中の上生菓子を親子で指さしながら、ひとつふたつとお買い上げくださいます。『ママにはどれにする?』などのやり取りもほのぼのとしていて、とても和む光景です。老舗は敷居が高いと思われがちなのですが、全然そのようなことはありません。ベビーカーの方もどうぞお気軽にご来店くださいませ」と倉本さん。

桜の蕾をイメージした『秋色さくら餅』。甘さ控えめの繊細な桜餅の味は、年度末で仕事に忙殺されてしまいがちな心を癒してくれそうです。

問い合わせ先

  • 秋色庵大坂家
  • 営業時間/[月~金]9:00~18:30、[土]9:00~18:00
  • 定休日/日曜・祝日(お節句は営業いたします)
  • TEL:03-3451-7465
  • 住所/東京都港区三田3-1-9

■3:口の中でとろけるこしあんがたまらない「鈴懸」の『桜葉餅』(新宿三丁目駅)

艶のある米の形がしっかりとわかる『桜葉餅』(税込¥206)
艶のある米の形がしっかりとわかる『桜葉餅』(税込¥206)

最後にご紹介するのは、福岡・博多に本店を構える和菓子店「鈴懸」。新宿伊勢丹百貨店内にも店を構えています。原さん、こちらの店舗を選んだのはなぜなのでしょうか?

「『鈴懸』は、上質な素材を使った、どこかモダンな印象の和菓子で人気を博しています。佐賀県産の餅米を使う『桜葉餅』(税込¥206)は、滑らかなこしあんのとろけるような口当たりが印象的。また、思わず見とれる見た目の美しさも人気のポイントです」(原さん)

確かに、お米の形がしっかりとわかる桜餅は、つやがあっておいしそうですね。

「実は、今年3月29日にオープンする商業施設・東京ミッドタウン日比谷にもお店が開店するとあって、東京での人気がますます高まりそうです」

都内に住んでいる人にとっても、おいしい桜餅を人気スポットでも買えるようになるのは、ありがたいですよね。今回は「鈴懸」の職人・岩本さんに、『桜葉餅』や商品についてのお話をお伺いしました。

「ふっくらと蒸し上げたもちもち感が楽しめる佐賀県産のヒヨクモチで、皮むきのこしあんを包み桜の葉で挟んだ『桜葉餅』は、若い方から幅広い年代層の方にお買い求めいただいております。販売期間は、4月中旬までの予定です」

『桜葉餅』以外にも、見ているだけ癒されそうな和菓子が勢ぞろいしていますね。

「代表銘菓として、かわいらしい鈴の形をした最中皮に餡を挟んだ芳ばしい『鈴乃最中』(税込¥108)や、1枚づつ焼き上げたもっちりとした皮の小ぶりなどら焼き『鈴乃〇餅(すずのえんもち)』(税込¥108)などがあります」(岩本さん)

ショッピングスポットとしても注目度が高い新宿伊勢丹や、東京ミッドタウン。東京で、地域性の高い和菓子をいろいろと食べ比べてみるのも、粋かもしれません。

問い合わせ先

  • 博多 鈴懸本店
  • 営業時間/[菓舗]9:00~20:00[茶舗]11:00~20:00(L.O.食事19:00、甘味19:30)
  • 定休日/1月1日・2日
  • TEL:.092-291-0050
  • 住所/福岡市博多区上川端町12番20号ふくぎん博多ビル1階(東京都内には、新宿伊勢丹店、東京ミッドタウン日比谷店の2店舗あり)

以上、菓子文化研究家である原さんに選んでいただいた、桜餅の名店3軒。日本古来の文化ともいえる和菓子のなかでも、数多くの人たちから愛されてきた『桜餅』。それぞれに、味についてのこだわりや、歴史を感じます。一口に「さくらもち」と言っても、道明寺と長命寺の2種類があり、食感も、見た目も違ってきます。それぞれの違いを感じながら、食べ比べてみるのも粋な味わい方かもしれません。

原 亜樹子さん
菓子文化研究家
(はら あきこ)米国高校へ留学・卒業後、東京外国語大学で食の文化人類学を学ぶ。生活情報サイト「All About」で和菓子ガイドを務めるほか、米国の食文化にも精通。近著に『アメリカ郷土菓子』(パルコ出版)、『おやつ&おつまみビスコッティ』(主婦と生活社)などがあるほか、翻訳も手がける。
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この記事の執筆者
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WRITING :
池守りぜね