1~2名乗車が基本で、荷物をたくさん積む機会が少ないなら、所有する自動車は小型車で十分。ただしミニマム派にとって物足りないのは、小さくてもラグジュアリーなモデルの選択肢が少ないこと。その点、欧州では大柄なラグジュアリーカーをそのままスケールダウンしたモデルが少なからずあり(装備や質感は相応になりますが)、さらには小さいことに価値があるモデルも選べます。今回紹介するのは、まさにそんな自動車。イタリア生まれの「アバルト 500e」という、とびきりかわいくて運転も楽しいEV(電気自動車)です。

「さそり座の男」の情熱を今に伝えるスポーツカー

このカタチ、見覚えあるはず! 元となった「NUOVA 500」は、映画『グラン・ブルー』(1988年)にも登場。後ろを走るのは現在も販売されている、エンジン搭載モデルのアバルト 500。 (C)Stellantis
このカタチ、見覚えあるはず! 元となった「NUOVA 500」は、映画『グラン・ブルー』(1988年)にも登場。後ろを走るのは現在も販売されている、エンジン搭載モデルのアバルト「500」。 (C)Stellantis

「アバルト」というブランド名に聞き覚えがなくても、イタリアを代表する自動車メーカー「フィアット」ならご存じでは? 古くからイタリア国内の産業全般に進出したフィアットは、第二次世界大戦後は実用小型車を中心に生産。“イタリアの奇跡”と呼ばれる経済成長を成し遂げました。

なかでも庶民に愛されたのが、1957年から1975年まで販売されていた「NUOVA 500」(ヌオーヴァ チンクェチェント)という小型車。アニメ『ルパン三世』に登場する、丸くてちっちゃなあの自動車です。

一方、アバルトは「NUOVA 500」などをカスタムしてレースに出場したり車両を販売していたメーカーで、創業者でエンジニアのカルロ・アバルト氏の誕生月の星座であるさそりをブランドのエンブレムに使用していました。きわめて合理的に設計されていた「NUOVA 500」は、アバルトの手でエンジンや足回りを高性能化することで、秘めた性能をいかんなく発揮。特にエンジンは、芸術的ともいえる匠の技で限界までカスタムすることで、パワフルかつ轟音を奏でることで知られていました。

イタリアらしい情熱的なもの作りで名を馳せたアバルトは、のちにフィアットが吸収。スポーツモデルのブランドとして今も継続しています。

最新形のEVをアバルトの世界観でカスタム

最新の「500e」は少し大きくなり、顔つきも鋭いまなざしに。
最新型の「500e」は車体が少し大きくなり、顔つきも鋭いまなざしに。
横から見た眺めも昔ながらのプロポーションを維持。小さいうえ、タイヤが車体の四隅ぎりぎりに配置されているので、都市部の狭い場所でも駐車は楽。
横から見た眺めも昔ながらのプロポーションを維持。小さいうえ、タイヤが車体の四隅ぎりぎりに配置されているので、都市部の狭い場所でも駐車は楽。

決して広くはないけれど4人が乗れて、カスタムすれば無類の速さを発揮した「NUOVA 500」は、自動車史上に残る名車となりました。そして、2007年に往年の丸みのあるデザインを継承して復活。日本にも正規輸入され、類まれなファッション性から女性層にも人気を博しています。現在も販売されていますが、一方で次世代のモビリティとしてEV版の「500e」が2020年に登場。丸みのあるデザインはさらに洗練され、ボディサイズも少し大きくなりました。

EVは日本ではまだ少数派ですが、排気ガスを出さない優れた環境性能は持続可能な社会の実現に不可欠であり、EVを所有することは未来への積極的な投資となります。

アバルトの象徴はEVにちなんで稲妻デザインの“電気さそり”に!
アバルトの刺激的なエンブレムは、EV化に合わせて稲妻デザインの“電気さそり”に!

ここで紹介するのはそのアバルト仕様で、外装がスポーティになっていてタイヤも大きめ。内装もレザーとアルカンターラでコーディネートされています。

特筆すべきはその質感とディテール。内装を構成するすべての素材が巧みに合わさり、レザー部分のステッチの色までこだわることで、とても愛着のわく空間に仕上がっているのです。小型車=リーズナブルなつくりという固定概念を覆すアバルト「500e」は、サステナブルな素材や製造工程を積極的に取り入れるファッションブランドにも通じる、モダン・ラグジュアリー時代にふさわしい存在です。

EVなのに気持ちいい音が聴こえる!

蛇腹のように幌がたたまれるカブリオレは「NUOVA 500」以来の伝統(屋根が開かないハッチバックも選択可)。
蛇腹のように幌がたたまれるカブリオレは「NUOVA 500」以来の伝統(屋根が開かないハッチバックも選択可)。
直上だけが開くので風の巻き込みが少なく、髪をまとめなくても運転しやすい。
直上だけが開くので風の巻き込みが少なく、髪をまとめなくても運転しやすい。

電気モーターを搭載するアバルト「500e」は、電車のように静かで滑らかに走ります。とはいえ、そこはアバルト車。走行前に設定を切り替えることで、特製の「サウンドジェネレーター」が起動。まるでエンジンが積まれているような、気持ちいい人工音を奏でるのです。それもアクセルペダルの動きに合わせて外に向けて響き、車内でもしっかりと聞くことができます。メーカーによると、往年のアバルト車の音を忠実に再現したのだとか。走行音が静かなことはEVが選ばれる大きな理由となっていますが、アバルト「500e」にかぎっては運転操作と連動する音の演出で生まれる華やかさ、そして人と機械の一体感が、EVドライブを盛り上げてくれます。

体にフィットするつくりのいいシートは横の張り出しがあるものの、乗り降りに不自由はなし。黒いシートにあしらわれたステッチとサソリマークのイエローが洒落ている。
体にフィットするつくりのいいシートは横の張り出しがあるものの、乗り降りに不自由はなし。黒いシートにあしらわれたステッチとさそりのマークのイエローが洒落ている。
後席はふたり掛け。4名フル乗車で幌を開け、音楽を聴きながらわいわい乗るのも楽しい。これぞ、イタリアらしい使い方!
後席はふたり掛け。4名フル乗車で幌を開け、音楽を聴きながらわいわい乗るのも楽しい。これぞ、イタリアらしい使い方!

乗っていて気持ちいいのはそれだけではありません。EV専用に新設計されたアバルト「500e」は車体のつくりが非常にしっかりしていて、走行中に無粋な振動を感じることは少なくなっています。街中をゆっくりと走っているだけでもきびきびと走れ、とても気持ちがいいのです。そして、高速道路などの加速でアクセルペダルを深く踏みこめば、小型車とは思えない加速に感動すること確実! いままで感じたことのない、刺激的なドライブ体験へと誘ってくれます。

小さくてかわいくて、街を走れば誰もが振り返るスポーツカー、アバルト「500e」は、まるでハイブランドのミニバッグのような誘惑光線を放ち、あなたの手に触れられるのを待っています。

最新の機能や装備の操作系をスマートにまとめたインテリア。美しいデザインと素材の妙で上質な空間をつくり出している。
最新の機能や装備の操作系をスマートにまとめたインテリア。美しいデザインと素材の妙で上質な空間をつくり出している。
カブリオレのトランクは小さめ。後席の背もたれをたたむとトランクスルーになるので、少人数の旅荷物なら問題なし!
カブリオレのトランクは小さめ。後席の背もたれをたたむとトランクスルーになるので、少人数の旅荷物なら問題なし!

【ABARTH 500e TURISMO CABRIOLET】

ボディサイズ:全長×全幅×全高:3,675×1,685×1,520mm
車両重量:1,380kg
乗車定員:4名
車両本体価格:¥6,450,000

問い合わせ先

アバルト

TEL:0120-130595

この記事の執筆者
総合誌編集部を経て独立。ライフスタイル全般の企画・編集・執筆を手がける。ファッションのひとつとして自動車に関心を持ち、移動の手段にとどまらない趣味、自己表現のひとつとして提案している。