「聖地」の秘密を巡る——Preciousに届いた特別な招待状を手に、パリへ。エルメスの物語はこの最初のお店から始まりました
夢に溢れ、共に時を過ごすほどに輝きを増す「エルメス」のオブジェ。すべての創造の源泉であるパリ、フォーブル・サントノーレ24番地は、メゾンの洗練とエスプリが息づく特別な場所です。
今回、『Precious』への特別な招待状を手に、「エルメス」の本拠地へ出発。語り継がれるメゾンの世界観や、伝統が息づく馬具アトリエ、非公開の屋上庭園、そしてミュゼまでご案内します!
フォーブル・サントノーレ24番地の建物を見上げると、「騎乗の花火師」が鎮座する。シーズンごとに変わる手に持つ『カレ』もひそかな楽しみのひとつに。このモチーフは、19世紀初頭、革命記念日にシャンゼリゼを行進した、騎乗の花火師が着想源に。「エルメス」は創業150周年を祝い、セーヌ川に花火を打ち上げた。「花火」は「エルメス」第一回目の年間テーマであり、年間テーマはメゾンのイノベーションや自由な精神、遊び心を伝えている。
フォーブル・サントノーレ通りに面したメインエントランスが、「エルメス」の世界を紐解くスタート地点。1880年に工房に併設した店舗と、住居を兼ね備えるために移転して以来、存在し続ける。毎年、異なる年間テーマが存在する「エルメス」。改築が行われた1924年から100年を記念し、また発祥の地の24番地とも呼応するように、2024年の年間テーマは、「フォーブルの魂―L'ESPRIT DU FAUBOURG」。「エルメス」の原点となる地から、さらなる物語が広がって。
フォーブル・サントノーレ24番地は「エルメス」の本拠地。伝統を継承しながらも、革新を追い求め、夢に溢れた物語で魅了するメゾンの旅はここから始まりました。
1837年に初代ティエリ・エルメスがパリのバス・デュ・ランパール通りに馬具工房を創業。1880年にフォーブル・サントノーレ24番地に移転。1924〜25年に2代目シャルル=エミール・エルメスが社屋を大規模改装し、現在のブティックの礎となります。この時期に、アイコニックなネオクラシック様式のファサードが誕生。「エルメス劇場」と呼ばれるウインドーディスプレイの展示も始まり、店を訪れる人だけでなく、街を行き交う人にも感動を与えるものとなります。
メインエントランスから店内へと進むと、フロアをつなぐ螺旋階段が。アール・デコ調の優美な鉄格子のハンドレイルが、夢の世界へと誘うかのよう。ディスプレイされたオブジェや行き交う人々が、手すりから見え隠れし、楽しげな世界を演出。壁には、馬車のランタンやさまざまなアートが飾られて。特徴的なアールデコのモチーフは、テーブルウエア「Hデコ」のモチーフとしても愛される。
創業から続く伝統「馬具のアトリエ」
フォーブル・サントノーレ24番地には、メゾンの原点ともいえる馬具のアトリエが存在。創業から一貫して「職人の緻密な物づくり」を掲げ、馬具をつくり続けて。陽光が降り注ぐアトリエは、まさに聖域。
レザーのプレートが歴史を語る|フォーブル・サントノーレ24番地に馬具のアトリエが存在し続けていることを証明するかのよう。
1837年に創業者のティエリ・エルメスがパリに馬具工房を開設してから現在まで「エルメス」は一貫して馬具をつくり続けています。185年以上もの長い間、馬具製作に真摯に向き合い続ける「エルメス」。馬具のアトリエで脈々と受け継がれた技術は、バッグなどの皮革製品に生かされています。「エルメス」らしさの象徴ともいえるステッチの技術は、鞍を縫う特別な縫い方「サドルステッチ」が原点。一本の糸に二本の針をつけ、糸を同じ穴に両側から通して縛るように縫う製法にメゾンの伝統が詰まっています。
馬具製作では、最先端の採寸ツールを導入する「エルメス」。伝統的な手仕事と、革新的なアプローチを融合させることで、至極の馬具ができあがるのです。
道具にも個性が生かされる|最初から最後まで一貫してひとりの職人がひとつの鞍を担当する。デスクには、愛用の道具が並ぶ。
職人技の賜物「サドルステッチ」|専用の木製器具で革をしっかり挟み、糸にワックスをかけながら、両手で縫う技法こそメゾンの真髄。
製品番号が刻まれた特別な鞍|細かな採寸の元に作られたオリジナルの鞍が並ぶ。番号と共に顧客と鞍の詳細を記した台帳が大切に保管される。
秘密のオアシス「屋根の上の庭」
パリの空を近くに感じられる空中庭園は、豊富な種類の樹々に溢れて。専門の庭師が植物のケアをし、春になると花が咲き誇る。馬具工房の面影を残す「HERMÈS SELLIER」のサイネージも隣接。
りんごの木から始まる物語|かつてこの地に住んでいたエルメス家は屋上でりんごや洋梨などの果実を育てていたことも。『屋根の上の庭』という名の香水も存在する。
パリの風がそよぎ、明るい日差しに照らされた楽園──。「フォーブル・サントノーレ店」の屋上には、草花が芽吹き、小鳥が飛び交う、秘密の庭園が存在します。りんごの木や薔薇、ハーブは専任の庭師により、大切に育てられて。庭の一角には、パリの街を見守るように『カレ』を掲げる「騎乗の花火師」が設置されています。
花火師とエンジェルの共演|庭園のシンボルとして、パリの街を見渡す花火師と、庭園の静けさを優しく見守る愛らしい天使のオブジェが。
都会の喧騒を忘れさせる、緑溢れる空間は、クリエイターの憩いの場としても。実際に『屋根の上の庭』という香水も製作され、パリの空気で育つ草花の陽気な香りや、庭に宿る記憶を再現しています。
かつてエルメス家がアトリエ兼住居としていた時代に、屋上で果実を育てて、日々の喜びを見出していました。『屋根の上の庭』は、生活を豊かに彩る「アール・ド・ヴィーブル」の物語を伝える存在でもあります。
貴重な蒐集品が並ぶ「夢に溢れたミュゼ」
3代目エミール・エルメスのかつての書斎であり、エミールの蒐集品が集まった「ミュゼ」は、「エルメス」で働くデザイナーにとってインスピレーションの宝庫でもある。馬にまつわるものから、遊び心に富んだものまで、驚きに満ちた品で溢れている。
想像力がふくらむ秘密の美術館|エミール・エルメスがブティック上の屋根裏部分にコレクションを置くようになったのが始まりに。エミールの4人の娘が遊んだ木馬も大切に保管されて。
フォーブル・サントノーレ24番地はクリエイションの源泉
パリのフォーブル・サントノーレ24番地は、夢の始まりであり、新しい物語を紡ぐキャンバス。この地が唯一無二の理由は、店舗だけでなくアトリエを構え、絶えず職人が物づくりに取り組んでいる点にあります。馬具工房では、「エルメス」の馬具づくりの象徴である「サドルステッチ」をはじめ、さまざまな工程を重ねて、ひとつの鞍を時間をかけてつくり上げています。その「サドルステッチ」は馬具だけでなく、バッグなどの革小物にも応用されています。
馬への愛に溢れるエミールの書斎「エルメス」のロゴのもととなる絵画『四輪馬車と従者』や、江戸時代の馬具、ナポレオン3世の息子の馬の三輪車などが鎮座。
また、ブティックの上階には、「ミュゼ」と呼ばれる美術館が存在。馬や旅などに関する世界中から集められた逸品&珍しい品々が鎮座し、メゾンで働く職人やクリエイターの重要なインスピレーション源となっているのです。人と物が出合う店舗であると同時に、「伝統と革新」という精神のもと、日々クリエイションが営まれています。
「ミュゼ」にまつわるSTORY
3代目のエミール・エルメスにより、膨大な数の絵画や書籍、オブジェが集められ、その蒐集品の数々が保管されている「ミュゼ」。エミール・エルメスは、馬車から車へと交通手段が変化する時代の流れを感じ取り、馬具工房の技術を発展させて。革小物や、アクセサリー、シルクなどの製品づくりをはじめ、メゾンに大きな転機をもたらす。そして、コレクションは後継者により、さらに充実。メゾンで働く職人やクリエイターは、この場所を訪ね、馬と人が共に築いてきた歴史の物語に耳を傾け、創造力の糧とするのです。
年間テーマを軸に、想像力と遊び心、エスプリで魅了する
「エルメス」が革新的といわれる理由は、クラフツマンシップを大切にしながら、時代の変遷と共に、新しい発想で進化してきたことにあります。社交性があり、コレクターとしての審美眼をもった3代目エミール・エルメスの後を引き継いだのは、4代目ロベール・デュマ。メゾン初のシルクスカーフや『シェーヌ・ダンクル』を誕生させ、新しい分野を開拓していきました。
5代目のジャン=ルイ・デュマの時代に始まったのが「年間テーマ」です。創立150年を記念し、1987年から「エルメス」では「年間テーマ」が掲げられ、共通のインスピレーション源となってメゾンにおけるさまざまなクリエイティビティを育んでいきます。2024年は「フォーブルの魂」がテーマとなり、フォーブル・サントノーレ24番地が、「エルメス」のスピリットであることを深く知ることができる年になります。
驚きの発見に満ち、知的好奇心を刺激する魅惑的な場所
2013年にCEOに就任した、6代目のアクセル・デュマにより、世界中に個性豊かなブティックがオープンし、16番目のメチエ(製造部門)となる「ビューティ」も設立。フォーブル店でも創業当時から続く馬具と、最新の製品がフロアごとに美しく並び、伝統と革新を大切にするメゾンのフィロソフィをかいま見ることができます。
「エルメス」のオブジェは特別であり、永遠に私たちを魅了し続ける存在です。フォーブル・サントノーレ24番地に足を踏み入れると、その理由が解明されていくよう。時代を超えて受け継がれたものを大切にし、時間をかけてひとつの物をつくり上げる…。そして、過去にとらわれず、未来へと向かう前向きなエネルギーが込められているからこそ、ひとつひとつのオブジェがいきいきとした存在感を放つのです。
※この記事掲載のアイテムは展示品のため、店舗へのお問い合わせはご遠慮ください
問い合わせ先
- PHOTO :
- 生田昌士(hannah)
- EDIT&WRITING :
- 川口夏希、安村 徹(Precious)
- コーディネーター :
- MASAÉ TAKANAKA