相手との関係性によって使い分けが必要な「敬語」。日本語を難しくしている要因のひとつですが、正しい敬語を身に付けることは、ビジネスパーソンとして大変重要なスキル! 今回は「する」を例に謙譲語を解説します。ビジネスシーンでよく使う言葉の謙譲表現一覧も掲載しますので、しっかり覚えてくださいね。

【目次】

「する」の謙譲語は?
「する」の謙譲語は、使い方が要注意な「させていただく」です。

【謙譲語って何?まずは敬語をおさらいしましょう】

謙譲語は敬語のひとつです。敬語には「尊敬語」「謙譲語Ⅰ」「謙譲語Ⅱ(丁寧語)」「丁寧語」「美化語」の5つに分別されます。それぞれを簡単に整理しましょう。

■尊敬語/いらっしゃる・おっしゃる型

相手側や、話題に登場する人物を高めたいときの敬語です。「ものごと」や「状態」にも敬語表現があります。

例:いらっしゃる、おいでになる、おっしゃる、お越しになる、召し上がる、ご覧になる、お読みになる、お聞きになる、お名前、お忙しい

■謙譲語Ⅰ/伺う・申し上げる型

自分側を低めることで、行為が及ぶ相手側を高めて敬意を表す敬語です。

例:伺う、頂く、頂戴する、申し上げる、お伝えする、ご連絡する、お手紙

■謙譲語II(丁寧語)/参る・申す型

主語になる人物を低めることで聞き手や読み手に敬意を表す敬語です。もとはひとつだった「謙譲語」がふたつに分けられたもので「丁寧語」とも呼ばれます。

例:おる、参る、申す、いたす、小社

■丁寧語/です・ます型

話し手の丁寧な気持ちを表す敬語です。

例:です、ます、ございます

■美化語/お~・ご~型

話し手の品位や言葉としての美しさを上げるために、ものごとを美化として言う敬語です。

お話、お水、ご連絡、ご様子というように、頭に「お」や「ご」を用います。


【行為を表す「する」の謙譲語は?】

使用頻度の高い「~する」の謙譲語をピックアップして解説しましょう。自分、あるいは自分側の人の行為の謙譲語Ⅰは下記のようになります。

・させていただきます ・やらせていただきます ・いたします ・行います ・します ・やります

■注意して使いたい「させていただきます」

上の挙げた語は日常的な表現だと思いますが、注意して使いたいのが「させていただきます」です。近年ますます「~させていただきます」という言い方が乱用されていて、間違った使い方も多いようです。

「させていただく」とは、相手に許しを請うことによって、ある動作を遠慮しながら行う意を表します。重要なのは「相手の許しが必要なことかどうか」です。例えば入社の挨拶で「入社させていただきました〇〇です」はNG!その会社に“雇われて入社したので、入社に対して会社に”許しを請う”のは間違い。正しくは「入社しました〇〇です」や「入社いたしました〇〇です」となります。

また、その行為を行うことによってなんらかの恩恵を受ける場合も「させていただく」を使用できます。例えば、配送会社などがよく使う「ご指定の時間帯にお荷物をお届けさせていただきます」は、「相手が指定した時間帯に届けるのだから、許可を取る必要はないのでは?」と感じるかもしれませんが、配送会社は届けることで恩恵を受ける(料金が発生する)ため、この例文は正しいと言えます。


【「する」の謙譲語を使用した「例文」3選】

■1:「来週の金曜日はお休みさせていただきますので、よろしくお願いいたします」

相手の許可を得て休む場合の言い方として適切です。一方で、選挙の演説などでよく聞くのが「立候補させていただきました〇〇〇でございます」というフレーズです。立候補するのに聴衆の許可は不要なので、より丁寧に言うなら「立候補いたしました~」が正解!

■2:「本日の進行は私がやらせていただきます」

「やらせていただく」は「やる」の謙譲語ではありますが、「させていただく」同様、相手の許可が必要なシーンや、なんらかの恩恵を受ける場合に使える語。「遠慮しながら行う」という気持ちを表すとして、本来は正しい使い方ですが、違和感や慇懃無礼だと感じる人もいるので、「~私がいたします」のほうがスマートです。

■3:「来週月曜日に防災訓練を行いますので、ご参加いただけますようお願いいたします


【ビジネスシーンで「よく使う謙譲語」まとめ】

それぞれ例文と供に確認してください。

■言う

申す、申し上げる「お祝い申し上げます」

■行く

宇アkが鵜、参上する
「明日午後2時に伺います」

■来る

参る、伺う
「来週もこちらへお伺いいたします」

■もらう

頂く、頂戴する、賜(たまわ)る、頂戴する
「大変結構なお品を頂戴しました」

■説明する

説明いたす、説明させていただく、ご説明する
「詳細は私が説明いたします」

■帰る

失礼する、帰らせていただく
「本日はこれで失礼いたします」

■聞く

お聞きする、伺う、承る、拝聴する
「注意事項を承りました」

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ビジネスシーンで敬語はマストなスキルですが、なんでもかんでも敬語のほうがいいとか、最上級の敬語がより好ましいというのは間違い!  相手との関係性(親密度)によっても敬語は変化します。なかでも謙譲語は自分側を低めることで相手側を高める敬語なので混乱するかもしれません。会話のなかでの敬語間違いはご愛敬といった面もありますが、メールや資料など文章では特に注意してくださいね。

この記事の執筆者
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参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『敬語マニュアル』(南雲社)/『とっさに使える 敬語手帖』(新星出版社)/『すぐに使えて、きちんと伝わる 敬語サクッとノート』(永岡書店) :